委託して造ったビールは、地場産品基準のどの号で通るのか
委託先の醸造所が区域内にあるか区域外にあるかで、使える号が入れ替わります。 区域外に委託するなら使えるのは「区域内で原材料の主要な部分が生産されたもの」の号だけ、区域内に委託するなら「区域内で製造等を行うことにより価値の過半が生じているもの」の号です。レシピや価格帯より先に、ここが決まります。
枠は地方税法、中身は総務省告示
地方税法第37条の2第2項が「当該都道府県等の区域内において生産された物品又は提供される役務その他これらに類するものであつて、総務大臣が定める基準に適合するもの」と枠を置き、その中身を平成31年総務省告示第179号が定めています(e-Gov 地方税法/告示179号 制定時の原文、いずれも2026年9月6日確認)。並んでいる号のうち、委託醸造で現実に当たるのは次の3つです。
- 第1号 — 当該地方団体の区域内において生産されたものであること
- 第2号 — 区域内において返礼品等の原材料の主要な部分が生産されたものであること
- 第3号 — 区域内において製造等を行うことにより当該返礼品等の価値の過半が生じているものであること
「地元の企画だから地場産品」という号はありません。 企画立案だけを区域内で行う形は、2024年10月適用分から証明が要る扱いになり、2026年10月以降の告示では号そのものから外れています。
区域外に委託するなら、原材料の産地を先に確かめる
国が示している運用のQ&A(令和7年6月24日 総税市第73号)の問17は、原材料の号について認められると考えられる例に「区域内で生産された酒米を100%使用して、区域外において醸造した地酒」を挙げています。ビールなら、麦芽・ホップ・副原料が酒米と同じ位置に立ちます。
同じ問17が、認められないと考えられる例に挙げているのが「スチール缶の原材料となる鉄を区域内で製造し、そのスチール缶を使用したビール」です。容器を区域内で作っても、中身の原材料にはなりません。判定の基準は「重量や付加価値のうち半分を一定程度以上上回る割合」で、あわせて「その旨をポータルサイト上等に明記すること」まで求められます(Q&A、2026年9月6日確認)。
既製のビールにラベルを巻き直す形は、名指しで否定されている
同じQ&Aの問18は、製造等の号について認められないと考えられる例に「区域外で生産されたビールに、当該団体オリジナルのシールを貼ったもの」を挙げています。判断材料として、関税法施行規則が「実質的な変更を加える加工又は製造に該当しない例」として列挙するものを踏まえるよう書かれており、その一覧には「製品又は包装にマークを付け又はラベルその他の表示を張り付け若しくは添付すること」が含まれます。
逆に、同じ問18の認められると考えられる例には「区域外で生産された原材料を用いて、区域内の醸造所において醸造した酒」が入っています。原材料が全部よそから来ていても、醸造そのものを区域内でやるなら製造等の号で通ります。
2026年10月1日に、何が置き換わるのか
募集費用を5割以下に抑える告示の基準が廃止され、地方税法の「寄附金活用可能額」の基準に置き換わります。 同時に条番号が動くので、庁内や社内に残っている資料を番号だけで照合できなくなります。
根拠が告示から法律へ移る
令和8年総務省告示第145号(令和8年3月31日)が、告示179号から募集費用5割以下の規定を削りました。附則で施行日は令和8年10月1日、「この告示の施行の日以後に開始する指定対象期間」から適用で、それ以前に開始した指定対象期間はなお従前の例によるとされています。
代わりに置かれたのが地方税法第37条の2第2項第2号イです。寄附金の合計額から募集に要する費用を引いた額(寄附金活用可能額)が、寄附金の合計額の「百分の六十に相当する金額以上」であること。同じ号のロで、その使途を公表することも義務になりました(2026年10月1日施行版の条文、2026年9月6日確認)。
条番号が1つずつ後ろへずれる
法律・告示・Q&Aの3つが同時に動きます。
| 2026年9月30日まで | 2026年10月1日以後 | |
|---|---|---|
| 返礼品の調達費用3割 | 地方税法37条の2第2項第2号 | 同項第3号 |
| 地場産品基準 | 同項第3号 | 同項第4号 |
| 過去の基準適合 | 同項第4号(初日前1年以内) | 同項第5号(初日前4年以内) |
| 地場産品基準の中身 | 告示179号 第5条 | 告示179号 第6条 |
| 原材料の号のQ&A | 問17 | 問22 |
| 製造等の号のQ&A | 問18 | 問23 |
Q&Aの問番号の移動は、総務省が出している新旧対照表で確認できます(2026年9月6日確認)。中身の例示は「略」とされており、酒米のビール版もラベル貼り替えの例も、そのまま残ります。
6割は一度に来ない。52.5%から始まる
法律の本文は最初から「百分の六十」ですが、改正法(令和8年法律第2号)の附則が、指定対象期間の初日に応じて読み替える表を置いています。道府県民税が附則第3条第5項、市町村民税が附則第11条第4項で、同じ表です(提出時法律案 第221回国会 閣法第4号、2026年9月6日確認)。
- 2026年10月1日〜2027年9月30日 — 百分の五十二・五(52.5%)
- 2027年10月1日〜2028年9月30日 — 百分の五十五(55%)
- 2028年10月1日〜2029年9月30日 — 百分の五十七・五(57.5%)
- 2029年10月1日以降 — 読み替えなし、本則の百分の六十(60%)
総務省も「令和8年指定から段階的に適用する(R8:52.5%、R9:55%、R10:57.5%、R11:60%)」と同じ段階を示しています(ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施) 15ページ、2026年9月6日確認)。「10月から募集費用は4割まで」と単純化すると、初年度の線を2.5ポイント厳しく見積もることになります。
なお、ここで言う指定対象期間は毎年10月1日から翌年9月30日までで、年度(4月〜3月)ではありません。申出書は初日の属する年の7月1日から31日までに出します(地方税法施行規則第1条の16第1項・第2項、2026年9月6日確認)。
費用は、どの指定対象期間に計上するのか
寄附金を受領した期間です。 支払日ベースの計上は、2026年10月1日以後に開始する指定対象期間では採用できません。
9月に受けた寄附の返礼品を10月に送っても、費用は前の期間へ
新しいQ&Aの問16が、この点を新設の形で書いています。「N年指定対象期間(N年10月1日から(N+1)年9月30日まで)に受領した寄附金に対する返礼品等の送付等に係る費用について、当該費用の支払等が(N+1)年指定対象期間以降に行われる場合であっても、N年指定対象期間の募集に要する費用として計上する必要がある」。続けて「従前、募集費用総額5割以下基準において認めていた計上方法〔支払日ベース〕は、令和8年10月1日以降に開始する指定対象期間において採用することは認められない」と明記されています(Q&A新旧対照表 問16)。
醸造の納期が、そのまま比率に効く
ビールは受注してから仕込む場合、醸造所の仕込み枠と缶・ラベルの調達が納期を決めます。9月に集まった寄附の分を10月以降に醸造して発送しても、その費用は9月までの期間に載るということです。期間の切れ目(9月30日と10月1日)と仕込み計画を、同じ表の上で見てください。
送料と決済手数料、ポータル手数料は、返礼品の調達費用3割の枠ではなく募集費用の側に入ります。冷蔵便にするかどうかが、活用可能額の比率に直接効きます。
酒類だから、返礼品に追加でかかるものは何か
3つあります。誰が売主になるのか、20歳未満をどこで塞ぐのか、常温で運べるのか。 地場産品基準を満たしても、この3つは別に確認が要ります。
誰が売主になるのかを、企画の最初に確定する
酒税法第9条第1項は「酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない」と定めています。免許を受けずに販売業をした場合、同法第56条第1項第1号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(e-Gov 酒税法、2026年9月6日確認)。
免許は売る主体に、販売場ごとにかかります。委託先の醸造所や事業者が免許を持っていることは、別の主体が酒類を扱ってよい根拠にはなりません。ふるさと納税という枠組みを名指しで扱った国税庁の公表資料は確認できませんでした。 この記事では断定しません。契約の形(自治体が買って自治体名義で送るのか、事業者が寄附者へ直送するのか)を決めたうえで、所轄税務署の酒類指導官に照会してください。
20歳未満の飲酒防止の表示は、通信販売で置く場所まで決まっている
根拠は平成元年11月22日 国税庁告示第9号「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」で、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の6第1項に基づくものです。第7項が、通信販売について次の3か所を指定しています(国税庁、2026年9月6日確認)。
- 広告又はカタログ等(インターネット等によるものを含む)
- 購入申込者が記載する申込書等(インターネットで申込みを受ける場合は申込みに関する画面)— 申込者の年齢記載欄を設けた上で、その近接する場所に
- 購入者に交付する納品書等(インターネットによる通知を含む)
第8項は文字の大きさも定めており、10ポイントの活字以上(インターネット等による場合は酒類の価格表示に使っている文字以上)とされています。ポータルサイトの商品ページや申込画面を自治体側で自由に組めない場合、どこに何を置けるのかを、募集を始める前にポータル事業者と確かめる必要があります。
常温で流通できるかは、商品ごとの保存方法の指定で決まる
熱処理の有無では決まりません。酒類総合研究所の資料は「熟成したビールはろ過してビール酵母を除き、品質を安定化させます。かつてはろ過に加え、殺菌のための熱処理もしていましたが、醸造機器の性能と雑菌除去の技術が著しく向上したため、現代の日本では生ビールとしてろ過だけで品質を安定させるのが一般的です」と書いています(酒類総合研究所 情報誌「お酒のはなし」ビール、2026年9月6日確認)。熱処理をしていない「生ビール」でも、ろ過済みなら常温で流通できるものがあります。
酵母が残っているものは要冷蔵になります。 冷蔵便は送料が上がり、その送料は募集費用の側に入るので、前節の比率に返ってきます。レシピを決める打ち合わせと、物流の見積は同じ日にやってください。
来年も同じものを出せるか
単発で造れるかではなく、翌年も同じ品質で同じ数を出せるかで決まります。 指定は指定対象期間ごとに取り直す仕組みで、判定も毎年通します。
最低ロットは、醸造所の仕込み単位で決まる
一度の仕込みで造る量は醸造所ごとに決まっていて、それを下回る発注はできません。区域内産の麦芽やホップを使って原材料の号で通す設計なら、原料側の年間の収穫量が上限になることもあります。返礼品の掲載を止めずに回せる本数を、原料の作付けから逆算してください。TAP TO BREW の場合、最低ロットは350ml缶で48本からです(TAP TO BREW)。
賞味期限は法令が決めていない。酒類は表示そのものを省略できる
食品表示基準第3条第3項の表は、義務表示のうち省略できるものを区分ごとに並べていて、「消費期限又は賞味期限」の欄に酒類が挙がっています。「保存の方法」の欄にも酒類が入っています(e-Gov 食品表示基準、2026年9月6日確認)。
つまり、一律の日数を国が決めているわけではなく、製品ごとに造り手が決めます。 返礼品では、寄附を受けてから発送するまでの期間と、寄附者の手元に届いてからの期間を足して設計します。年に1度しか仕込まない銘柄で、掲載を通年にすると、後半に出る分の残り日数が短くなります。
寄附の締切は暦年で来る。指定対象期間とずれる
寄附金税額控除の判定は暦年です。地方税法第37条の2第1項は「前年中に次に掲げる寄附金を支出し」と書いており、寄附者側の締切は12月31日になります。一方、指定対象期間は10月1日から翌年9月30日まで、費用の計上は寄附金受領日ベースです。
2つの暦が同時に走っています。 在庫と発送体制は年末に合わせて厚くする必要があり、その費用は10月始まりの期間に載ります。ここを分けて考えると、初年度の見込みが外れます。
向かない場合
次のどれかに当たるなら、企画の形を変えるか、時期をずらす判断が要ります。
- 既製のビールにラベルを替えて出したい — Q&A問18が名指しで否定しています
- 区域内産の原材料も、区域内の醸造所も無い — 通せる号がありません
- 単年度の企画として組んでいる — 指定も、製造等の号で必要になる証明と公表も、期間ごとに繰り返します
- 要冷蔵かつ小口配送しか取れない — 送料が募集費用を押し上げ、活用可能額の比率で詰まります
- 誰が売主になるのかを決められない — 酒税法9条1項の判定が止まったまま募集は始められません
費用の目安・期間・最低ロット(TAP TO BREW の場合)
金額と期間は案件ごとに幅があります。ここに置くのは自社の公開値だけです。
3つの数字
- 費用 — 初期制作費 50〜70万円(うちOEM醸造費 20〜25万円)。初期制作費と継続支援費の2層です
- 期間 — 初回相談からリリースまで概ね2〜3ヶ月(TSURATSURA サービスのFLOW)。ふるさと納税では、これに指定の申出(7月)と返礼品の書類提出の時期が重なります
- 最低ロット — 48本(350ml)から
製造・販売を醸造所の花園クラフトが担う形では、依頼する側に酒類販売業免許は要りません。 連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となるためです。自治体が自ら売主になる形を取るなら、その判定は前述のとおり所轄税務署への照会が要ります。
相談の前に決まっていると早い3つ
- 自治体名(どの区域で判定するのか)
- 使いたい区域内産の原材料の候補と、年間で確保できる量
- 委託先の候補が区域内にあるかどうか
この3つがあれば、どの号で通す設計になるかは初回の打ち合わせで整理できます。レシピはその後です。
返礼品の開発全体の進め方は自治体向けのふるさと納税オリジナル返礼品の開発方法、ラベルに載せる表示はオリジナルビールのラベル表示義務にまとめています。
出典
- e-Gov 地方税法/令和8年10月1日施行版 第37条の2(2026年9月6日にAPIで原文取得)
- e-Gov 地方税法施行規則 第1条の16(同)
- e-Gov 酒税法 第9条第1項・第56条第1項第1号(同)
- e-Gov 食品表示基準 第3条第3項(同)
- 総務省平成31年総務省告示第179号(制定時)/令和8年10月1日適用版/令和8年総務省告示第145号(同)
- 総務省「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A」(令和7年6月24日 総税市第73号) 問17・問18(同)
- 総務省Q&A新旧対照表(別紙2関係) 問16・問22・問23(同)
- 総務省「告示179号に基づき総務大臣の定めるものについて」(令和8年4月1日 総税市第30号)(同)
- 総務省ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施) 15ページ(同)
- 衆議院地方税法等の一部を改正する法律案(第221回国会 閣法第4号)提出時法律案 附則第3条第5項・第11条第4項(同)
- 国税庁「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準を定める件」(平成元年11月22日 国税庁告示第9号) 第7項・第8項(同)
- 独立行政法人 酒類総合研究所情報誌「お酒のはなし」ビール(同)
よくある質問
区域外の醸造所に委託して造ったビールを、ふるさと納税の返礼品にできますか
できます。ただし通せるのは「区域内で原材料の主要な部分が生産されたもの」の号だけです。総務省のQ&A問17は、認められる例に「区域内で生産された酒米を100%使用して、区域外において醸造した地酒」を挙げています。区域内の醸造所に委託する場合は、製造等の号が使えます。
既製のビールに自治体オリジナルのラベルを貼る形は認められますか
認められません。総務省のQ&A問18が、認められないと考えられる例に「区域外で生産されたビールに、当該団体オリジナルのシールを貼ったもの」を名指しで挙げています。関税法施行規則が実質的な変更に当たらない例として挙げる「ラベルその他の表示を張り付け若しくは添付すること」に当たります。
2026年10月1日から募集費用の上限はどうなりますか
募集費用5割以下の告示の基準が廃止され、地方税法37条の2第2項第2号イの寄附金活用可能額の基準に置き換わります。本則は60%以上ですが、改正法の附則が段階適用を置いており、2026年10月1日に始まる期間は52.5%、以後1年ごとに55%・57.5%と上がり、2029年10月1日以降の期間から60%です。
返礼品の費用は、いつの指定対象期間に計上しますか
寄附金を受領した指定対象期間です。9月までに受けた寄附の返礼品を10月以降に送付し、支払も翌期間になる場合でも、費用は寄附を受けた側の期間に計上します。従前の支払日ベースは、2026年10月1日以降に開始する指定対象期間では採用できません(総務省Q&A問16)。