自治体が返礼品を1から作るとき、誰が何をどの順に決めるのか
決めるのは7つです。①誰が主体になるか ②地場産品基準のどの号で通すか ③誰が売主になるか ④中身 ⑤ラベル ⑥掲載 ⑦発送。この順で決めます。
順番が決まっているのは、後ろの工程が前の工程の答えに縛られるからです。地場産品基準のどの号で通すかが決まらないと原材料の産地を確定できず、産地が決まらないとレシピが確定せず、レシピが確定しないと缶に刷る品目が決まらず、品目が決まらないと掲載ページに書く内容が確定しません。先に決められるものから決めるのではなく、後戻りの大きいものから決めます。
締切は7月31日。そこから逆算する
制度側の日程は動きません。ここが全体の起点になります。
- 指定対象期間は毎年10月1日から翌年9月30日までの1年間です。会計年度(4月〜3月)ではありません
- 指定の申出書は、指定対象期間の初日の属する年の7月1日から7月31日までに総務大臣へ提出します。市町村と特別区は都道府県知事を経由します
いずれも地方税法施行規則第1条の16に書かれています(e-Gov 地方税法施行規則、2026年9月8日に原文取得)。
申出書には書類が添います。2026年10月1日以後の版では、総務省令で定める書類の1つ目が「都道府県等が指定対象期間に提供する返礼品等の内容に関する書類」です(同規則第1条の17の2第1項第1号)。総務大臣が指定に支障がないと認める場合は、書類の一部または全部を省略させることができます(同条第2項)。
つまり、7月の時点で、その期間に出す返礼品の内容が固まっている前提で組まれた制度です。 10月からの期間に新しい返礼品を載せたいなら、7月には企画が書類になっている必要があります。
| 時期 | 誰が | 何を |
|---|---|---|
| 7月1日〜7月31日 | 自治体(市区町村は都道府県知事を経由) | 指定の申出書と、その期間に提供する返礼品の内容に関する書類を総務大臣へ提出 |
| 10月1日 | — | 指定対象期間の初日 |
| 翌年9月30日 | — | 指定対象期間の末日 |
制作側の所要期間は事業者ごとに違います。TAP TO BREW の場合、初回相談からリリースまでが概ね2〜3ヶ月です(/pages/services のFLOW)。7月の書類に載せる前提なら、逆算して春のうちに主体と号の判定を終えている形になります。
逆順で進むと、どこで戻るのか
現場で起きる戻りは、だいたいこの3つです。
- ラベルを描いてから、レシピを足した — 地元の素材を増やした結果、缶に刷る品目が変わり、デザインを作り直す
- 缶ができてから、売り方を決めた — 誰も酒類販売業免許を持っておらず、在庫が動かせない
- 掲載してから、制度を確かめた — 地場産品基準に届かず、返礼品から下ろす
自治体・事業者・醸造所・ポータルは、それぞれ何に責任を持つのか
作業は4者に分けられますが、制度上の責任は分けられません。委託先や返礼品取扱事業者がやったことも、指定の基準への適合として自治体に返ります。
| 誰 | 決めること・やること | 負う責任 |
|---|---|---|
| 自治体 | 返礼品にするかどうか、寄附額、掲載するポータル、事業者との契約条項、指定の申出 | 指定の基準への適合。委託先・取扱事業者の行為も含めて自治体側で見られる |
| 返礼品取扱事業者 | 原材料の調達、産地の裏付けの保存、納品 | 契約で負う。産地名の適正な表示、自治体の調査への協力、書類の整備・保存 |
| 醸造所 | レシピの実現可否、仕込み枠、製造 | 酒類製造免許。製造の号で通すなら、区域内で価値の過半が生じた旨の証明を出す側 |
| ポータル運営事業者 | 掲載面、決済、集客 | 自団体の返礼品が強調された宣伝広告になっていないか、自治体が確認する対象 |
| 販売元 | 酒類を売り、代金を受け取る | 酒類販売業免許(酒税法第9条第1項)。返礼品とは別に、ECや店頭で売るなら要る |
事業者が産地名を偽ると、自治体の指定が取り消され得る
ここが分担の限界です。 総務省のQ&Aは、食品の産地名の適正な表示を確保する措置について、契約に盛り込む内容を4つ挙げたうえで、こう続けています。
「地方団体において上記の措置を講ずることなく、食品返礼品取扱事業者が食品返礼品の産地名の表示を偽った場合は、法第37条の2第5項及び第314条の7第5項の規定により、指定の取消し対象となり得るものであることに留意すること」(総務省 Q&A新旧対照表(別紙2関係) 新問13、2026年9月8日にPDFの原文で確認)。
契約に何を書くかは地場産品基準の読み方にまとめました。事業者を選ぶ作業は外に出せますが、選び方が適切だったかの責任は自治体に残ります。
ポータルや中間事業者の宣伝広告も、自治体側の基準で見られる
告示179号は、返礼品等を強調して寄附者を誘引する宣伝広告を行わないことを、募集の適正な実施に係る基準に置いています。括弧書きで「当該地方団体と第一号寄附金の募集に関し契約を行った者及び当該地方団体の返礼品等を取り扱う者が行うものを含む」とされています(令和8年10月1日適用版の告示179号 第3条第1号ハ。2026年9月30日までの版では第2条第1号ハ)。
Q&Aは、ポータルサイト運営事業者・中間事業者・返礼品取扱事業者が独自に行う宣伝広告もここに該当するとしたうえで、自治体に2つを求めています。自団体の返礼品が事業者等の宣伝広告で強調されていないか確認すること。契約等にそのような宣伝広告を行わない旨の規定を盛り込むなど、必要な措置を講ずること(同新旧対照表 新問8)。
「ポータルがやったこと」で切り離せる構造にはなっていません。
食品を返礼品にした時点で、募集適正基準の号が1つ増える
告示179号第3条の柱書は、返礼品等が食品でない場合は第1号と第2号、食品を返礼品等として提供する場合は各号すべてに該当することを求めています。ビールは食品表示法第2条第1項の「全ての飲食物」に当たるので、産地名の適正な表示を確保する第3号がかかります(e-Gov 食品表示法、2026年9月8日に原文取得)。
なお同条第2号は、指定対象期間の初日の属する年度の前年度に、募集に要する費用として一の者へ支払った額(複数回なら合計)が100万円以上であるとき、支払先と支払額・支払目的の一覧表を作成し、指定対象期間の初日の前日までに公表することを求めています。ポータルの手数料や中間事業者への委託料は、ここに載る側の費用です。
誰が売主になるのかを、中身より先に決める
免許は売る主体に、販売場ごとにかかるからです。 酒税法第9条第1項は「酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業……をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場……ごとにその販売場の所在地……の所轄税務署長の免許……を受けなければならない」と定めています。免許を受けずに販売業をした場合は、第56条第1項第1号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(e-Gov 酒税法、2026年9月8日に原文取得)。
判定の主語は常に「誰が代金を受け取るか」です。 委託先の醸造所やOEM会社が免許を持っていることは、自分が酒類を売ってよい根拠になりません。
返礼品として送るとき、自治体側に免許が要るかは公表資料で確認できていない
条文が決めているのは「誰が」と「どこで」の2つで、寄附という法律関係の上に乗った引き渡しをどう位置づけるかは、国税庁の公表資料からは読み取れませんでした。書かれていないことを「不要」と読み替えないでください。 照会先と、聞かれる事実の並べ方は自治体側に酒類販売業免許は要るのかにまとめています。
花園クラフトが販売元になる形と、その形が使えない場合
TAP TO BREW の場合、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元になります。 そのため、できあがったビールを 花園クラフトが売主として売る分については、依頼する側が免許を取る必要はありません(/pages/tap-to-brew)。
自治体や地元の事業者が自分の名義で代金を受け取る形にするなら、この形は使えません。 その主体が、販売場ごとに酒類販売業免許を受けることになります。返礼品と並行して道の駅や直売所で売る計画があるなら、そこは別の免許の話として立ちます。
中身・ラベル・掲載・発送は、この順でしか決まらない
中身が決まらないと品目が決まらず、品目が決まらないとラベルが作れず、ラベルが確定しないと掲載ページが書けないからです。
中身 — 醸造所の所在地と原材料の産地が、通せる号を決める
区域内の醸造所に委託するのか、区域外に出すのか。区域内産の原料をどれだけ使えるのか。この2つで、地場産品基準のどの号で通すかが変わります。詳しくは地場産品基準の読み方を参照してください。
セットにする場合は、もう1つ判定が増えます。 告示179号第6条第6号は、返礼品等とそれに附帯するものを合わせて提供する場合、返礼品等の価値が提供するもの全体の7割以上であることを求めています(2026年9月30日までの版では第5条第6号)。グラスや化粧箱を足す設計は、ここで見え方が変わります。
ラベル — レシピが確定してからしか作れない
品目、アルコール分、原材料名、アレルゲン。缶に刷る内容はレシピの確定を待ちます。デザインの見た目を先に決めても、表示欄の中身は後からしか埋まりません。 何を必ず載せるかはオリジナルビールのラベル表示義務にまとめています。
掲載 — 返礼品ページに書くことは、法令で要るものと寄附者が使うものに分かれる
申込画面はたいてい自治体の持ち物ではないので、書ける場所と書けない場所があります。何をどこに置くかは返礼品ページに何をどう書くのかを参照してください。
発送 — 温度帯と受け取りの条件は、掲載前に決まっている必要がある
常温で送るのか冷蔵で送るのかは、商品ごとの保存方法の指定で決まります。「生ビール」と書いてあるかどうかでは決まりません。 温度帯が決まらないと配送の条件をページに書けないので、この判断は掲載より前に置きます(→冷蔵便で送るときの条件)。
年度で切れるものが3つある
指定対象期間、予算年度、担当者の異動です。3つとも周期が違い、揃いません。
指定対象期間は10月1日で切り替わる。会計年度ではない
前掲のとおり10月1日から翌年9月30日までで、申出は7月です。庁内の会計年度(4月〜3月)と半年ずれます。 予算の議論と、指定の書類を作る時期が別のタイミングで来るので、担当者が1人で両方を追う運用にすると、どちらかが後手に回ります。
なお、2026年10月1日から始まる指定対象期間では、募集費用の基準そのものが告示から法律へ移り、条番号も動きます。詳しくは経費5割ルールは2026年9月で終わるにまとめました。
寄附の締切は暦年で来る。醸造の納期がそこに重なる
寄附者側の締切は12月31日です。指定対象期間の区切りとも会計年度とも合いません。醸造所の仕込み枠は自分たちの都合で動かせないので、年末に向けて在庫を用意するなら、逆算の起点は仕込み枠の空きになります(→ビールOEMの納期はどれくらい?)。
担当者が代わると、判断の根拠が消える
どの号で通したか、産地の裏付けを誰がどこに保存しているか、売主を誰にしたか。これらが個人の頭の中にしかないと、引き継いだ人は同じ判断をやり直せません。決めた根拠と、参照した条文・告示・Q&Aの場所を、庁内の資料に条番号まで書いて残してください。
事業者側にも同じことが起きます。契約に書類の整備・保存の義務を入れておくのは、担当者が代わったあとに証拠を出せるようにするためでもあります。
やらないほうがいい場合
次のどれかに当たるなら、無理に進めない判断があります。
- 7月の申出に間に合わない — 中身が固まっていない状態で書類を出す形になります。次の指定対象期間に回すほうが安全です
- 区域内産の原料の調達量が読めない — 地場産品基準の判定が立たないまま制作が進みます
- 誰が売主になるか決まっていない — 缶ができてから決めると、在庫が動かせません
- 単年度の予算しか見えていない — 2年目に補充が必要になったとき、発注の根拠がありません
- 味の評価だけで進めている — 制度側の判定は味とは無関係に効きます
費用の目安・期間・最低ロット(TAP TO BREW の場合)
判断に要る3つを置きます。項目ごとの内訳は案件によって構成が変わるため、この記事では出しません。 公開している値だけを書きます。
3つの数字
/pages/tap-to-brew に公開している条件です。
- 最低ロット — 350ml缶で48本から
- 初期制作費 — 50〜70万円(うち OEM醸造費 20〜25万円)
- 期間 — 初回相談からリリースまで概ね2〜3ヶ月(工程は/pages/services のFLOW)
- 免許 — 連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元になる
返礼品として自治体に納める場合、費用のどこが3割の枠に入り、どこが募集費用の枠に入るかは別の計算になります。 逆算の仕方は経費5割ルールは2026年9月で終わるに置きました。
相談の前に決まっていると早い3つ
- 主体 — 自治体が直接持つのか、地元の事業者が持って自治体が返礼品として採るのか
- 区域内産で使える候補 — 麦・米・果実・香草など。数量の見込みが概算でもあると、通せる号の見当が付きます
- 売主 — 花園クラフトが販売元になる形でよいか、自分たちの名義で売る計画があるか
この3つが決まっていれば、初回の打ち合わせで、どの号で通す設計になるかと費用・期間の見通しまで出せます。地域おこし協力隊の枠を使う場合の経費の出どころは協力隊・自治体がOEMを検討するときにまとめています。
出典
- e-Gov 地方税法(昭和25年法律第226号) 第37条の2第2項・第3項・第5項(現行版および令和8年10月1日施行版。2026年9月8日にe-Gov APIで原文取得)
- e-Gov 地方税法施行規則(昭和29年総理府令第23号) 第1条の16、第1条の17、第1条の17の2(現行版および令和8年10月1日施行版。同)
- e-Gov 酒税法(昭和28年法律第6号) 第9条第1項・第56条第1項第1号(同)
- e-Gov 食品表示法(平成25年法律第70号) 第2条第1項(同)
- 総務省平成31年総務省告示第179号(令和8年10月1日適用版) 第3条・第4条・第5条・第6条(2026年9月8日にPDFの原文で確認)/制定時の版
- 総務省「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A」(令和7年6月24日 総税市第73号) 問2・問9の2・問19(同)
- 総務省Q&A新旧対照表(別紙2関係) 新問8・新問13・新問47(同)
- 国税庁法令解釈通達 第9条 酒類の販売業免許(同)
よくある質問
ふるさと納税のオリジナル返礼品は、いつまでに何を決めればいいですか
指定対象期間は毎年10月1日から翌年9月30日までで、指定の申出書はその初日の属する年の7月1日から7月31日までに総務大臣へ提出します(市町村と特別区は都道府県知事を経由)。申出書に添える書類には、その期間に提供する返礼品等の内容に関する書類が含まれます。10月からの期間に載せるなら、7月の時点で返礼品の中身が固まっている必要があります。
返礼品の企画を醸造所やポータルに任せた場合、制度上の責任は誰が負いますか
自治体です。返礼品取扱事業者やポータル運営事業者、中間事業者が独自に行った宣伝広告も、告示179号の募集の適正な実施に係る基準では自治体側の行為として見られます。また、産地名の適正な表示を確保する措置を講じないまま事業者が表示を偽った場合、地方税法第37条の2第5項により指定の取消し対象となり得ると総務省のQ&Aが明記しています。
自治体が酒類の返礼品を出すとき、誰が売主になりますか
酒類販売業免許は売る主体に販売場ごとにかかります(酒税法第9条第1項)。TAP TO BREW の場合、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元になるため、花園クラフトが売主として売る分については依頼する側が免許を取る必要はありません。自治体や地元事業者が自分の名義で代金を受け取る形にするなら、この形は使えず、その主体が免許を受けます。なお、返礼品として送る場合に自治体側へ免許が要るかは、国税庁の公表資料では確認できませんでした。所轄税務署の酒類指導官への照会が要ります。
担当者が異動しても続けられるようにするには、何を残しておけばいいですか
地場産品基準のどの号で通したか、原材料の産地の裏付けを誰がどこに保存しているか、誰が売主になっているか。この3つを、参照した条文・告示・Q&Aの番号まで書いて庁内資料に残します。事業者との契約に、遵守すべき事項が記載された書類の整備・保存の義務を入れておくと、担当者が代わったあとでも証拠を出せます。