小ロットのクラフトビールは、なぜ1本あたりが高いのか|48本から作るときに単価を決める4つの費用
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小ロットのクラフトビールは、なぜ1本あたりが高いのか|48本から作るときに単価を決める4つの費用

2026.09.08 10min read Written by TAP TO BREW 編集部

小ロットのクラフトビールは、なぜ1本あたりが高くなるのか

費用の大きい部分が「1本いくら」ではなく「1回いくら」の形で発生するからです。 仕込み1回、ラベルの版1つ、容器の最小発注、1ロットあたりの分析と表示の確認。この4つは本数を減らしても金額が減らないので、48本で割るか1,000本で割るかの差が、そのまま1本あたりに乗ります。

だから「小ロットにすれば安く作れる」は、総額の話としては正しく、単価の話としては逆です。小ロットで買っているのは1本の安さではなく、在庫を抱えずに市場の反応を先に見る時間のほうです。ここを取り違えたまま販売価格を決めると、刷った値札が最初のロットで赤字になります。

仕込みは分割できない

醸造はタンク1本を単位に進みます。独立行政法人 酒類総合研究所の資料は、ピルスナーの工程を「粉砕 → 糖化 → ろ過 → 煮沸 → 冷却 → アルコール発酵 → 熟成 → ろ過 → パッケージング」と並べたうえで、麦汁の煮沸は「一般的に、60〜90分間」、発酵温度は「約6〜12℃」、熟成は「一般的に数十日間行います」と書いています(酒類総合研究所 情報誌「お酒のはなし」ビール/2026年9月6日取得)。

この日数は、仕込む量を半分にしても半分になりません。 タンクは数十日間ふさがり、その間そのタンクでは別の仕込みができない。醸造所にとって1回の仕込みは「何本作るか」ではなく「タンクを何日押さえるか」なので、本数を減らしても割り引かれる余地が小さいのです。小ロットの最低ラインが本数ではなく仕込み単位で語られるのは、これが理由です。

ラベルは「版」ごと買うことになる

デザイン費は1回きりの費用で、本数とは無関係です。印刷側も、刷る枚数を減らしても版とデータ作成の分は消えません。しかもラベルは、直したらもう一度そこから始まります。

ビールの容器に載せる表示は任意ではありません。酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の5は「酒類製造業者又は酒類販売業者は、政令で定めるところにより、酒類の品目その他の政令で定める事項を、容易に識別することができる方法で(中略)容器又は包装の見やすい所に表示しなければならない」と定めています(e-Gov 法令検索・法令ID `328AC0000000007`/2026年9月6日に原文取得)。

ビール酒造組合は、実際に載る項目を18項目に整理して公開しています。ビールである旨・原材料・賞味期限・保存方法および取扱い上の注意・内容量・アルコール分・事業者・製造所の所在地・原料原産地名ほか(ビール酒造組合 ビールの表示/2026年9月6日取得)。このうち1つを書き間違えると、48本のためにもう一度版から刷ることになります。 小ロットほど、刷り直し1回の重さが単価に直撃します。

空容器は「使う数」ではなく「買える単位」で入る

缶も瓶も、製缶・製壜メーカーの最小発注単位で買います。48本詰めるために48本だけ買える、とは限りません。余った空容器は、次の仕込みまで置き場所を占める在庫になります。

缶と瓶では、遮光・送料の区分・義務表示を置ける面・識別マークの4点が変わります。判断の順番は缶と瓶、どちらにするかにまとめてあります。容器はレシピが固まる前に決められるので、小ロットなら先に確定させておくほうが刷り直しの芽を減らせます。

分析と表示の確認は、本数で割れない

前掲のビール酒造組合の一覧にあるとおり、アルコール分は「『アルコール分』の文字のあとに、容量比で○%または○度」と表示します。表示するには、そのロットを測る必要があります。測定は1ロットにつき1回で、48本でも1,000本でも同じ1回です。

表示できる数値には幅の決まりもあります。詳しくはラベルの「アルコール分5.5度」はどこまで正確なのかへ。副原料を使うなら、原材料表示に載せられるものが政令・省令で名指しされているので、ビールに入れられるもの一覧で先に確かめてください。この確認作業も、本数では割れません。

ロットを増やすと、1本あたりの何が下がるのか

下がるのは、上の4つを割る分母だけです。 原材料・空容器・充填・送料は本数に比例するので、増やしても1本あたりはほとんど動きません。「ロットを倍にすれば単価が半分」にはならない、というのが構造上の答えです。

効くのは「1回いくら」の欄だけ

見積を見るときは、1本あたりの金額ではなく、項目ごとに「本数で変わるか/変わらないか」の2列に分けてください。 変わらない側の合計を本数で割った額が、ロットを動かしたときに減る分です。逆に、変わる側が大きい構成なら、本数を増やしても1本あたりは下がりません。

いちばん効くのは2回目

TAP TO BREW の場合、初期制作費 50〜70万円(うち OEM醸造費 20〜25万円)はブランドコンセプト設計・ラベルとパッケージのデザイン・EC販売導線の構築・初動プロモーション設計を含んだ、初回だけの費用です。再醸造は「2回目以降はOEM醸造費(20〜25万円/ロット)のみ。デザインやECは初回で構築済みのため追加費用なし」と公開しています(TAP TO BREW サービスページ/2026年9月6日に確認)。

つまり、1本あたりを下げる最短の道は「1回で大量に作ること」ではなく「同じ設計で2回目を作ること」です。 デザインとECは作り直さないので、2本目のロットは仕込みの費用だけを乗せて出せます。48本で反応を見てから増やす順番に合理性があるのは、この形だからです。

増やすと、代わりに増えるもの

本数を増やすと、保管場所・配送の回数・売れ残ったときの損失が同時に増えます。在庫は時間の経過で価値が下がる資産なので、単価の数字だけを見て本数を積むと、下がった単価より捌けなかった本数のほうが大きくなります。次の章がその話です。

免許は誰に要るのか — 主語を「造る人」と「売る人」で分ける

委託して造ってもらうだけなら、依頼側に酒類製造免許は要りません。造るのは製造免許を持つ醸造所だからです。ただし、できたビールを売る主体には、販売場ごとに酒類販売業免許が要ります。

条文はこの2本

  • 酒税法第7条第1項 — 「酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない」
  • 酒税法第9条第1項 — 「酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(中略)ごとにその販売場の所在地(中略)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない」

無免許での販売には罰則があります。酒税法第56条第1項は「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」とし、その第1号に「第九条第一項の規定による販売業免許を受けないで酒類の販売業をした者」を挙げています(いずれもe-Gov 法令検索 酒税法・法令ID `328AC0000000006`/2026年9月6日に原文取得)。

「免許不要」と書くときは、誰が売主かを同じ文に書く

TAP TO BREW の場合、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります。「不要です。製造・販売は連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が行い、TSURATSURAは企画・デザイン・窓口を担います。クライアント様が酒類の免許を取得する必要はありません」とサービスページに明記しています(前掲・2026年10月19日に確認)。依頼側が免許なしで済むのは、売主が依頼側ではないからです。

自社が売主として自社ECで売るなら、話は変わります。2都道府県以上の消費者を対象にするなら通信販売酒類小売業免許が要ります。区分の分かれ目はOEMのビールを自社ECで売るときの免許、販路ごとの必要免許はオリジナルビールはどこで売れるのかにまとめてあります。

作った48本を、何日で捌くのか

小ロットで先に決めるべきなのは単価ではなく出口です。 何日で・どこで・誰に渡し切るのかが決まっていないと、いちばん小さいロットでも余ります。

常温で置けるかどうかは、商品ごとの保存方法の指定で決まる

「熱処理していないから要冷蔵」ではありません。 ビール酒造組合の表示基準は、生ビール・ドラフトビールを「熱による処理(パストリゼーション)をしていないビールです」と定義しているだけで、保存条件を定義していません(前掲・ビール酒造組合/2026年9月6日取得)。

品質を安定させているのはろ過のほうです。前掲の酒類総合研究所の資料は「熟成したビールはろ過してビール酵母を除き、品質を安定化させます。かつてはろ過に加え、殺菌のための熱処理もしていましたが、醸造機器の性能と雑菌除去の技術が著しく向上したため、現代の日本では生ビールとしてろ過だけで品質を安定させるのが一般的です」と書いています。酵母を残す設計にするなら、そこで流通の条件が変わります。 醸造所に確認するのは「熱処理の有無」ではなく「ろ過したか、酵母を残したか」です。

賞味期限は、自分で決めることになる

酒類は、賞味期限と保存方法の表示を省略できます(国税庁 食品表示法における酒類の表示のQ&A 問25/2026年9月6日取得)。省略できるということは、書くなら自分の判断で日数を決めるということです。 ビール酒造組合の一覧では、規約に加盟するメーカーは瓶なら切り欠きや印字、缶なら缶体に年・月で表示する、とされています。読み手側の見方は買ってきたビールは何日で飲めばいいのかに整理しました。

冷蔵で送るなら、送料が先に効く

冷蔵で届ける設計にすると、1本あたりに乗る配送費が変わります。クール便には温度帯とサイズの上限があり、運賃も通常の宅配便とは別建てです。48本を1箱で送るのか、1本ずつ48回送るのかで、同じ48本でも配送費は別物になります。 出口が「イベントで手渡し」なのか「ECで1本ずつ」なのかは、単価より先に決めてください。

小ロットが向かない3つの場合

売り込みのために書いていないので、外れるケースも書きます。 次の3つに当てはまるなら、48本から始める形は合いません。

1. 価格を下げて数量で回収したい

固定費が割れないので、小ロットでは1本あたりが下がりません。低価格帯で数を売る設計とは、そもそも噛み合いません。 この場合は、最初から必要な本数を積める体制と資金を用意するほうが筋が通ります。

2. 定番として棚を切らさずに置きたい

酒販店や量販に卸して定番の位置を取りに行くなら、補充が止まらないことが条件になります。48本は、棚を維持する量ではありません。 加えて卸売は小売とは別の免許の話になります(オリジナルビールを酒販店に卸すには)。

3. レシピを何度も試して詰めたい

試作も1回の仕込みです。仕込みは分割できないので、試す回数がそのまま費用の回数になります。 中身そのものを細かく追い込みたいなら、小ロットは安い実験手段にはなりません。逆に、コンセプトとラベルで届け方を決めていく企画とは相性が良い形です。

相談の前に押さえる3つと、よくある質問

TAP TO BREW の場合、判断に必要な3つはここです(数字はいずれもサービスページ/2026年9月6日に確認)。

  • 最低ロット — 350ml缶で 48本 から
  • 費用の目安 — 初期制作費 50〜70万円(うち OEM醸造費 20〜25万円)。ここにブランドコンセプト設計・ラベルとパッケージのデザイン・EC販売導線の構築・初動プロモーション設計が含まれます。以降は継続支援費との2層構造で、再醸造はOEM醸造費(20〜25万円/ロット)のみ
  • 期間 — 初回ヒアリングからリリースまで 約2〜3ヶ月(ブランド設計・デザインに約1ヶ月、醸造に約1ヶ月、EC構築とプロモ準備に約2週間)

48本だけ作って、意味があるのか

「売って終わり」を狙うなら足りません。「反応を見て、2回目を決める」ためなら足ります。 初期制作費は初回だけの費用で、2回目以降はOEM醸造費だけになるので、48本は本番前の試作ではなく、2回目の設計材料を取るためのロットとして使えます。

ロットを増やせば、1本あたりはどれくらい下がるのか

下がるのは本数で割れない費用の分だけです。 原材料・空容器・充填・送料は本数に比例して増えるため、比例して増える側が大きい構成では、本数を増やしても1本あたりはあまり動きません。実際の見積では、項目ごとに「本数で変わるか」を分けて確認してください。

自分で酒販免許を取る必要はあるのか

TAP TO BREW の形では要りません。製造・販売元を醸造所の花園クラフトが担うためです。 自社が売主として自社ECで売るなら、その会社に販売場ごとの免許が要ります(酒税法9条1項)。

48本から始めるかどうかを決める前に、出口と2回目の予定を一緒に見せてください。 そこが決まっていれば、1本あたりの数字は後から追いかけられます。TAP TO BREW のサービスページから、30分の無料相談を受け付けています。

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TAP TO BREW Editorial
クラフトビールの最新トレンド、ブランド戦略、醸造の裏側をお届けするTAP TO BREWの編集チーム。株式会社TSURATSURA運営。

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