出したい日が決まっている。いつ動き出せば間に合うのか
TAP TO BREW の場合、ビールそのものは出したい日の2〜3ヶ月前に動き出せば間に合います。 間に合わなくなるのは、たいていビールの外側です。名前と免許には、こちらの都合では縮められない別の時計が動いています。
TAP TO BREW の場合、2〜3ヶ月の内訳はこうなる
初回ヒアリングからリリースまで約2〜3ヶ月。内訳はブランド設計・デザインに約1ヶ月、醸造に約1ヶ月、EC構築・プロモーション準備に約2週間です(TAP TO BREW、2026年9月8日にページで確認)。
醸造・デザイン・印刷といった製造工程ごとの日数はビールOEMの納期はどれくらいかにまとめてあります。この記事が扱うのは、その外側にある「決める順番」と「待つしかない時間」です。
この2〜3ヶ月に入っていない時計が、2つある
- 商標の審査 — ビールは第32類で、担当は食品審査室です。特許庁が公表している着手見通しでは、令和8年8月〜11月に出願する案件の審査着手までの期間の目安は6か月〜8か月(特許庁 商標審査着手状況、更新日2026年8月3日)
- 酒類の販売業免許(自分が売主になる場合) — 標準処理期間は原則として2カ月以内(税務署長限りで処理するものに限ります。国税庁 E1-3 酒類の販売業免許の申請)
どちらも「申請してから待つ」時間で、費用を積んでも短くなりません。 商標には早期審査という別の口があります(後述)。
逆算の起点は、出したい日を1日に固定すること
「秋ごろ」では逆算が始まりません。動かせない日か、動かせる日かで、決め方が変わります。
- 動かせない日 — 周年、開幕日、イベントの初日、成人式や自治体の式典。ここは日付が先に決まっているので、後ろから引いて「間に合わせるために何を落とすか」を先に決めます
- 動かせる日 — 季節に合わせた発売、ふるさと納税の登録時期、店舗の改装に合わせた投入。数週間ずらせるなら、醸造所の仕込み枠に合わせて日付のほうを動かすほうが早く出ます
順番が決まっているものと、並行して動かせるもの
一方通行は3つだけです。名前の調査はラベルより先、法定表示は版下より先、アルコール分の分析値はラベルの校了より先。 残りは並行に回せます。
名前と商標の調査は、ラベルのデザインより先
ビールは第32類です。 商標法施行規則の別表は「第三十二類 一 ビール」(黒ビール、スタウト、ラガービール)と定めています。第33類の別表にビールはありません(清酒、焼酎、合成清酒、洋酒、果実酒、酎ハイ、中国酒、薬味酒)。酒類だからと第33類だけを調べて「空いている」と判断すると、先行商標を見落とします(e-Gov 商標法施行規則 別表、2026年9月8日にe-Gov法令検索APIで原文を確認)。
出願の順番も効きます。同一または類似の商品について同一または類似の商標が異なった日に2以上出願されたときは、最先の出願人のみが商標登録を受けることができます(商標法第8条第1項)。商標権そのものは設定の登録により発生します(同法第18条第1項)。調べる、決める、出す。この3つがラベルの版下より前に来ます。
ラベルの法定表示は、版面のレイアウトより先
表示しなければならない項目が、デザインより先に場所を取ります。項目ごとの中身はオリジナルビールのラベル表示義務、デザインとの折り合いはビールラベルデザインの7つのルールにあります。
工程に効くのは1点です。アルコール分は仕込みの結果として決まるため、分析値が出るまでラベルは校了できません。 デザインは醸造と並行して進められますが、校了だけは醸造の後ろに来ます。 ロットごとの分析値をいつもらえるかを、発注のときに確認しておくと入稿日が動きません。
並行に回せるもの
- 醸造とラベルデザイン(デザインを醸造の後ろに置くと、そのぶん丸ごと後ろへずれます)
- EC構築・商品ページ・配送設計
- 発売前の告知の準備
- 自分で免許を取る場合の申請手続きと、ブランド設計
免許が要る場合、工程表に2か月がそのまま乗る
酒類の販売業免許の標準処理期間は、原則として2カ月以内です(税務署長限りで処理するものに限ります)。提出時期は「酒類の販売業を行う前」。申請に手数料は不要ですが、免許1件につき登録免許税がかかります(国税庁 E1-3、2026年9月8日確認)。書類集めと要件の確認は、この2か月の前に来ます。
イベントで売るなら、締め切りは「2週間前」と「10日前」
博覧会場等で臨時に販売場を設けて小売を行う場合は、期限付酒類小売業免許の話になります。原則として、販売場を開設する日の2週間前までに申請。 一定の要件を満たす場合には、販売場を開設する日の10日前までに届け出ることで、期限付酒類小売業免許を受けたものとして取り扱われます(国税庁 期限付酒類小売業免許について)。
届出で済ませる側の要件には、日程の組み方に直接効くものが並んでいます。
- 届出をする者が、酒類製造者又は酒類販売業者であること
- 同一者による同一場所での届出は月1回であること(催物等の入場者の全部又は大多数が有料入場者である場合を除く)
- 催物等の入場者の全部若しくは大多数が有料入場者である、又は開催期間が7日以内であること
- 催物等の内容が、酒類の小売を主目的とするものでないこと
- 催物等の開催期間又は開催期日があらかじめ定められており、かつ、それが客観的に明瞭であること
売り場を開けた後にも締め切りがあります。臨時販売場では販売業務を開始するときまでに酒類販売管理者を選任し、選任後2週間以内に届出書を提出します。開設期間の終了後には、酒類の販売数量等報告書と「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」の実施状況等報告書を提出します。
誰が売主かで、この工程表は丸ごと変わる
酒類の販売業をしようとする者は、販売場ごとにその所在地の所轄税務署長の免許を受けなければなりません(酒税法第9条第1項)。免許を受けないで酒類の販売業をした者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(同法第56条第1項第1号)。
TAP TO BREW では、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元になります。この形をとる限りにおいて、依頼する企業に免許は要りません(TAP TO BREW サービスページ、2026年9月8日確認)。自社の名義で、自分が売主として売るなら、この形は使えません。 その企業自身が免許を取ることになり、上の2か月が工程表に乗ります。誰にどの免許がかかるかはビール製造免許なしでオリジナルビールを販売する方法で条文ごとに分けました。自分で醸造所を持つ道を検討しているなら、年間の製造数量の下限は自分の醸造所を持つには年間いくら作るのかにあります。
予定が崩れるのは、だいたいこの4か所
先行商標、仕込み枠、決算、そして数字が出るのを待つ時間。 どれも「あとで巻き返す」ことができない種類の遅れです。
先行商標に当たった
名前から作り直しになります。ここで商標の時計が効いてきます。通常は審査着手まで6か月〜8か月(第32類・食品審査室、2026年8月3日時点)。早期審査を申し出た場合は、申出から最初の審査結果の通知まで平均2か月程度で、申出に手数料はかかりません。ただし、出願商標を既に使用している、または使用の準備を相当程度進めていることが基本条件です(特許庁 商標早期審査・早期審理の概要、令和7年10月)。
発売そのものは、登録を待たずに進められます。 待てないのは調査のほうです。他人の権利に当たっていないかを、版下より前に見ておきます。
醸造の仕込み枠が埋まっていた
タンクは先着です。出したい日が動かせないなら、仕込み枠の確保を最初の1手にします。 コンセプトが固まる前でも、時期だけ先に相談しておく形になります。ここが埋まっていた場合、2〜3ヶ月という前提そのものが立ちません。
決算の状況で経営基礎要件に引っかかった
自分で免許を取る場合の話です。国税庁の法令解釈通達は、次のいずれかに当たると「経営の基礎が薄弱であると認められる場合」として取り扱うと定めています(同通達 第10条 免許の要件 第10号関係 1)。
- 現に国税又は地方税を滞納している場合
- 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
- 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っている場合、又は最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合
ここに当たると、免許の相談より先に決算の相談になります。 逆算のいちばん外側で確認しておく項目です。
数字が出るのを待っている
アルコール分の分析値、原材料の最終確定、内容量。表示に載る数字が固まらないと、ラベルは校了できません。 「デザインは終わっているのに刷れない」という止まり方をします。
やらないほうがいい場合と、判断に要る3つ
間に合わないと分かったら、次の機会に回すほうが安く済みます。 日付を守るために工程を削ると、削れるのはたいてい調査と校了で、そこは後から取り返せません。
やらないほうがいい場合
- 出したい日まで2ヶ月を切っていて、名前もコンセプトも決まっていない — 落とすのは日付ではなく企画の側、という順で考えます。次の機会に回して、空いた時間を調査と名前の確定に充てるほうが、手戻りが減ります
- 動かせない日に対して、名前の商標登録が済んでいることが条件になっている — 通常の審査着手が6か月〜8か月なので、日付が近いほど成立しません。早期審査の要件に当たるかを先に確認します
- 自社の名義で、自分が売主になることが決まっている — 免許の時計が先に来ます。標準処理期間の2カ月と、その前の書類集めを工程表の頭に置くところから始まります
- 1回のイベントで配って終わりにしたい — 有償で売るのか無償で配るのかで、要る手続きが変わります。売るなら期限付の締め切り(2週間前・10日前)が先に来ます
費用の目安・期間・最低ロット
判断に要る3つです。いずれも TAP TO BREW に公開している自社の条件で、2026年9月8日に確認しました。他社の相場ではありません。
- 費用の目安 — 初期制作費 50〜70万円(うち OEM醸造費 20〜25万円)。継続支援費は月額5〜10万円、プラットフォーム利用料は月額1万円固定。2回目以降の醸造は OEM醸造費(20〜25万円/ロット)のみで、デザインとECは初回で構築済みのため追加費用はかかりません
- 期間 — 初回ヒアリングからリリースまで 約2〜3ヶ月(ブランド設計・デザイン約1ヶ月/醸造約1ヶ月/EC構築・プロモーション準備約2週間)。自分で販売業免許を取るなら、標準処理期間の2カ月を並行させるか前倒しするかを先に決めます
- 最低ロット — 48本(350ml)から。 小ロットで出して反応を見てから追加醸造する進め方を前提にしています
出したい日と、その日が動かせるかどうか。この2つが決まっていれば、逆算はその場でできます。
よくある質問
オリジナルビールを出すまでに、どれくらいの期間が必要ですか
TAP TO BREW の場合、初回ヒアリングからリリースまで約2〜3ヶ月です。内訳はブランド設計・デザインに約1ヶ月、醸造に約1ヶ月、EC構築・プロモーション準備に約2週間です。ただしこの2〜3ヶ月に、商標の審査期間と、自分が売主になる場合の販売業免許の期間は含まれていません。
商標を出願してから登録されるまで、どれくらいかかりますか
ビールが属する第32類を担当する食品審査室では、令和8年8月から11月に出願する案件の審査着手までの期間の目安が6か月から8か月です(特許庁の商標審査着手状況、更新日2026年8月3日)。早期審査を申し出た場合は、申出から最初の審査結果の通知まで平均2か月程度で、申出に手数料はかかりません。出願商標を既に使用しているか、使用の準備を相当程度進めていることが基本条件です。
酒類の販売業免許は、申請してからどれくらいで下りますか
標準処理期間は原則として2カ月以内です(税務署長限りで処理するものに限ります)。提出時期は酒類の販売業を行う前で、申請手数料は不要ですが、免許1件につき登録免許税がかかります。書類集めと要件の確認はこの2か月より前に必要です。
イベント会場でオリジナルビールを売る場合、いつまでに動けばよいですか
期限付酒類小売業免許は、原則として販売場を開設する日の2週間前までに申請します。一定の要件を満たす場合には、開設する日の10日前までに届け出ることで免許を受けたものとして取り扱われます。届出の要件には、届出者が酒類製造者又は酒類販売業者であること、同一者による同一場所での届出は月1回であること、催物等の開催期間が7日以内であるか入場者の全部若しくは大多数が有料入場者であることなどが含まれます。
TAP TO BREW に依頼する場合、免許の取得期間を工程に入れる必要がありますか
連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となるため、この形をとる限りにおいて依頼する企業は免許を取得しません。自社の名義で自ら売主として販売する場合はこの形を使えず、その企業自身が販売業免許を取得することになり、標準処理期間の2カ月と書類準備の期間が工程表に加わります。
出典
- e-Gov 酒税法(昭和28年法律第6号)第9条第1項・第56条第1項第1号(2026年9月8日にe-Gov法令検索APIで原文を確認)— 販売場ごとの免許、期限付免許、無免許販売の罰則
- e-Gov 商標法(昭和34年法律第127号)第8条第1項・第18条第1項(同)— 先願、商標権は設定の登録により発生
- e-Gov 商標法施行規則 別表(第6条関係)(同)— 第三十二類 一 ビール/第三十三類にビールの記載が無いこと
- 国税庁「E1-3 酒類の販売業免許の申請」(同)— 提出時期、標準処理期間 原則として2カ月以内、手数料と登録免許税
- 国税庁「期限付酒類小売業免許について」(同)— 2週間前までの申請、10日前までの届出とその要件、酒類販売管理者の選任、終了後の報告書
- 国税庁「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第10条 免許の要件」(同)— 第10号関係1 経営の基礎が薄弱であると認められる場合
- 特許庁「商標審査着手状況(審査未着手案件)」(同)— 審査室別の担当区分と審査着手までの期間の目安(更新日2026年8月3日、約2か月ごとに更新)
- 特許庁「商標早期審査・早期審理の概要」(同、令和7年10月)— 申出から最初の審査結果の通知まで平均2か月程度、手数料不要、基本条件
- TAP TO BREW サービスページ(同)— 最低ロット48本、初期制作費50〜70万円、OEM醸造費20〜25万円、継続支援費、期間約2〜3ヶ月とその内訳、製造・販売元(花園クラフト)