ラベルの度数表示は、中身の度数とぴったり一致しているのか
一致しているとは限りません。 ビールについては、表示した度数の±1度の範囲内で書いてよいと国税庁の法令解釈通達が認めているからです。
原則は「1度の幅」で書く
酒類のラベルにアルコール分を表示する義務は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の5にあります。その書き方を定めているのが国税庁の法令解釈通達で、原則はこうです。
アルコール分は、法に定める税率適用区分を同じくする1度の範囲内で「○○度以上○○度未満」と表示する。
(国税庁 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第86条の5 3(2)・2026年9月5日確認)
つまり原則の表示は、点ではなく幅です。「5度以上6度未満」のように、1度の区間で示すのが本来の形になっています。
ビールなど5品目には、さらに広い特例がある
同じ通達のロ号が、ビール・発泡酒・清酒・果実酒・その他の醸造酒の5つに限って、もっと広い書き方を認めています。挙げられている例がそのまま答えになります。
ビール、発泡酒、清酒、果実酒又はその他の醸造酒について、アルコール分±1度の範囲内で、例えば、アルコール分12度以上14度未満のものについて、「アルコール分13度」、アルコール分4.5度以上6.5度未満のものについて、「アルコール分5.5度」と表示すること。
(同通達 3(2)ロ)
「アルコール分5.5度」と書かれた缶は、4.5度以上6.5度未満のどこかにある、と読むのが条文どおりの読み方です。上下に1度ずつ、合わせて2度の幅があります。
数字は1度単位か0.5度刻み
同じ箇所の注書きが、この書き方をするときの数字の刻みを決めています。
アルコール分の度数表示は、1度単位又は0.5度刻みにより表示するものであるから留意する。
缶に並ぶ度数が「5度」「5.5度」「6度」と、細かい小数にならずに揃っているのはこのためです。0.1度単位の表示は、この特例の書き方には出てきません。
「度」と「%」は違うものなのか
同じものです。 酒税法が定める「アルコール分」の定義が1つしかなく、その単位を「度」と書いても「%」と書いてもよいと通達が認めています。
定義は温度15度・容量100分の1
酒税法第3条第1号は、アルコール分をこう定義しています。
温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。
(酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第1号 e-Gov・2026年9月5日に原文取得)
温度15度のときに、全体の量100に対してエチルアルコールが何入っているか。容量の百分率です。だから1度=1容量%で、「5度」と「5%」は同じ中身を指します。
単位はどちらで書いてもよい
通達は、表示に使う単位を並べて示しています。アルコール分とエキス分については「度」又は「%」(同通達 1(5)ハ)。商品によって「アルコール分5%」だったり「アルコール分5度」だったりするのは、この選択の結果であって、測り方が違うわけではありません。
スタイルごとの度数の傾向を眺めるときも、この2つの表記が混在します。クラフトビールの種類一覧を読むときは、同じ目盛りだと思って読んで構いません。
缶の表記が商品ごとにバラバラなのはなぜか
認められた書き方が複数あり、造り手がその中から選んでいるからです。 国税庁が公開している表示の説明資料は、13度以上14度未満のものを例に、6通りを並べています。
6通りの書き方
国税庁「酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)」は、税率適用区分に応じて次のいずれかで表示すると整理しています(13度以上14度未満の場合の例)。
| 書き方 | |
|---|---|
| ① | 13度以上14度未満 |
| ② | 13.0度以上13.9度以下 |
| ③ | 13度 |
| ④ | 13%以上14%未満 |
| ⑤ | 13.0%以上13.9%以下 |
| ⑥ | 13% |
(国税庁 酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)PDF・2026年9月5日確認)
①②④⑤は幅を明示する書き方、③⑥は1点で示す書き方です。 ここにビールの±1度の特例が加わるので、選択肢はさらに増えます。
幅で書いてある缶のほうが、情報は多い
「5度以上6度未満」と書かれていれば、中身は1度の区間に収まっています。「5.5度」とだけ書かれていれば、特例を使っている場合は2度の区間まで許されます。同じラベルでも、読み取れる精度が違います。
度数を手がかりに1本目を選びたいときは、入門|最初に飲むべき5つのスタイルのようなスタイルの目安と、缶の書き方の両方を見ておくと外しにくくなります。
幅はどこまでも広げられるのか
広げられません。 品目や税率適用区分をまたいで丸めることは認められていません。
通達が名指しで禁じている例
同じ注書きが、認められない例を具体的に挙げています。
表示方法は、法に定める品目又は税率適用区分を同じくする範囲内の取扱いであり、例えば、法第3条第13号ロ、ハ又はニに規定する果実酒の場合、アルコール分14度以上16度未満のものについて、「アルコール分15度」と表示することは認められない。
「±1度だから15度と書ける」という計算にはならない、という趣旨です。先に品目と税率適用区分の線があり、その内側でしか丸められません。
ビールの場合に効いてくる線
ビールは酒税法第3条第3号で発泡性酒類に位置づけられています(e-Gov)。品目としての「ビール」の中で表示を丸める分には特例が使えますが、品目そのものが変わればこの取扱いからは外れます。
そしてもう1本、下側に絶対の線があります。 酒税法第2条第1項が酒類を「アルコール分一度以上の飲料」と定義しているので、1度に届かないものはそもそも酒類ではありません。アルコール分1度未満の飲料は、そもそもこの表示ルールの対象外です。税率の側の線がどう引かれているかは2026年10月の酒税改正にまとめてあります。
輸入ビールのラベルは、どう読めばいいのか
輸出国で表示された度数がそのまま使われていることがあります。 通達が、日本側の表示を「アルコール分はラベルに記載」の一文に代えることを認めているからです。
条件付きで認められている書き方
通達 3(2)ハは、輸入酒類について、容器のラベルに輸出国で表示されたアルコール分があるものは「アルコール分はラベル(表ラベル又は裏ラベル)に記載」の旨を表示すればよいとしています。ただし注書きで、アルコール分の適用範囲が原則の書き方か±1度の特例に当てはまること、輸出国の表示がアルコール分の表示だと容易に認識できることの2つを満たす場合に限ると釘を刺しています。
読むときは表ラベルへ戻る
この書き方をしている輸入品では、日本語の一括表示を見ても度数の数字は出てきません。数字は表ラベルか裏ラベルの原表記の側にあります。 探す場所が違うだけで、書いていないわけではありません。
なお、各国の表示ルールがどの程度の幅を認めているかは国ごとに違い、この記事では日本の通達しか確認していません。海外の許容幅を日本の±1度と同じだと考えて読まないでください。
結局、ラベルの度数はどう受け取ればいいのか
「その付近」を示す目安として受け取るのが、条文に即した読み方です。 点で言い切った数字ではありません。
3つに整理する
| ラベルの書き方 | 中身が入っている範囲 |
|---|---|
| 「5度以上6度未満」 | 1度の区間(通達の原則) |
| 「5.5度」(ビール等の特例) | 4.5度以上6.5度未満 |
| 「アルコール分はラベルに記載」 | 原表記の側に数字がある(輸入品) |
正確さが要る場面では、幅で書かれたものを見る
体調や運転の都合で厳密な数字が必要な場面は、この記事の範囲を超えます。ラベルから読み取れる精度そのものに上の幅があるということだけ、押さえておいてください。より狭い範囲を知りたいときは、幅で書かれた表示か、造り手が公開している分析値を見ることになります。
クラフトビールの世界では、同じ銘柄でも仕込みごとに数字が動くことがあります。その前提を知ったうえでラベルを見ると、クラフトビールとは何かで扱った「造り手ごとの幅」の話ともつながってきます。
この記事で確かめた一次情報
- 国税庁「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」第86条の5《酒類の品目等の表示義務》3(2)(2026年9月5日確認。原則の1度幅・ビール等の±1度・1度単位/0.5度刻み・輸入酒類の取扱い)
- 国税庁「酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)」PDF(同日確認。6通りの表示方法)
- 酒税法(昭和28年法律第6号)第2条・第3条(e-Gov 法令検索・2026年9月5日に原文取得)
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