2026年10月に税額が同じになったら、発泡酒とビールの違いは無くなるのか
税額は同じになりますが、呼び名は残ります。 税率を決めている条文と、品目(「ビール」「発泡酒」という呼び名)を決めている条文が別だからです。
同じになるのは税額のほう
2026年10月1日、ビール系飲料の酒税が1kLあたり155,000円(350ml換算54.25円)に一本化されます。財務省の原文は「ビール系飲料の税率について、2026年(令和8年)10月に、1kL当たり155,000円(350ml換算54.25円)に一本化します」です(財務省「酒税に関する資料」)。2020年10月から3段階で進めてきた改正の、最後の1段にあたります。
日付の根拠は国税庁側にあります。いま使われている税率表の表題が「酒税率一覧表(令和5年10月1日~令和8年9月30日)」で、適用期間が9月30日で切れています(国税庁 酒税率一覧表 PDF)。
残るのは品目のほう
品目を決めているのは酒税法第3条です。第12号が「ビール」、第18号が「発泡酒」を定義しています(酒税法 e-Gov)。この定義は10月に変わりません。 税率表が一本化されても、条文の線はそのまま残ります。
そして、容器に品目を表示する義務も残ります。缶や瓶には酒類の品目を表示しなければならないと、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の5が定めています(国税庁 酒類の表示に関する説明事項 PDF)。10月以降も、缶を持てば「ビール」か「発泡酒」かは書いてあります。
そもそも、ビールと発泡酒は何で分かれているのか
麦芽の比率と、麦芽以外に何をどれだけ入れたかの2つです。 味の良し悪しでも、値段でも、造り手の規模でもありません。
ビールと名乗れる条件は2つ
酒税法第3条第12号は、ビールをアルコール分20度未満で、次のいずれかにあたるものと定めています。麦芽・ホップ・水だけで発酵させたもの(イ号)と、そこに一定の副原料を加えたもの(ロ号・ハ号)です。副原料を使う場合、条文が課している条件は2つあります。
- 麦芽の重量が、ホップと水を除いた原料の重量の合計の50%以上であること
- 政令で定める副原料の重量の合計が、麦芽の重量の5%を超えないこと
麦芽比率は2018年4月に67%から50%へ引き下げられました(国税庁「ビールの定義の改正に関するQ&A」PDF)。
副原料は「書いてあるものだけ」
同じQ&Aが、副原料として使える物品を列挙しています。果実、コリアンダーまたはその種、こしょう・シナモン・クローブ・さんしょうなどの香辛料、カモミール・セージ・バジル・レモングラスなどのハーブ、かんしょ・かぼちゃなどの野菜、そばまたはごま、蜂蜜などの含糖質物・食塩・みそ、花・茶・コーヒー・ココア、かき・こんぶ・わかめ・かつお節。
列挙にないものは使えません。 同じQ&Aは、かつお節以外の節類(いわし節・まぐろ節など)は含まれない、天日干塩などの原塩は「食塩」にあたらない、と個別に否定しています。
発泡酒は「ビールに当てはまらなかった麦の酒」
第3条第18号の発泡酒は、麦芽または麦を原料の一部とした発泡性の酒類で、ビールなどに該当しないものを指します。つまり発泡酒は、ビールの定義から外れたものが入る受け皿です。 格が下という意味ではありません。スタイルごとの違いはクラフトビールの種類一覧にまとめてあります。
「発泡酒だから安い」は、これからも成り立つのか
酒税の差としては成り立たなくなります。 10月1日を境に、ビールも発泡酒も新ジャンルも、350ml換算の酒税額が54.25円で並びます。
9月30日までの酒税額
350ml換算の酒税額です(国税庁 酒税率一覧表 PDF、350ml換算は国税庁の表示方法の手引き PDF)。
- ビール、および麦芽比率50%以上の発泡酒 — 63.35円
- 発泡酒(麦芽比率25%以上50%未満・アルコール分10度未満) — 54.25円
- 発泡酒(麦芽比率25%未満・アルコール分10度未満) — 46.99円
- いわゆる「新ジャンル」 — 46.99円
新ジャンルは2023年10月に品目が発泡酒へ統合済みで、すでに麦芽比率25%未満の発泡酒と同じ税率です。
10月1日以降
上の4つが、すべて54.25円になります。
- ビール — 63.35円 → 54.25円(1本あたり9.10円の引き下げ)
- 発泡酒(麦芽比率25%未満)と新ジャンル — 46.99円 → 54.25円(1本あたり7.26円の引き上げ)
同じ日に、チューハイなど「その他の発泡性酒類」も1kLあたり80,000円から100,000円へ上がります(350ml換算で28.00円→35.00円。出典は前掲の財務省資料)。
ただし、店頭の値札は酒税だけで決まらない
酒税が動く幅は350ml 1本で10円未満です。麦芽や副原料の仕入れ、缶や箱、輸送、店ごとの売り方も値札に乗ります。「税が揃うから同じ値段になる」とは言えません。 実際にいくらになるかは、各社が価格を出すまで分かりません。
クラフトビールなのに「発泡酒」と書いてあるのはなぜか
多くは、副原料の量か種類が酒税法の枠から外れているからです。 中身の質を示す表示ではありません。
果物やハーブを多めに入れると5%を超える
ビールでいられる副原料の上限は麦芽の重量の5%です。果実を主役にしたレシピでは、この5%は早い段階で埋まります。上限を超えれば品目は発泡酒になります。麦芽比率が50%以上なら、9月30日までの税率はビールと同じ181,000円のままです。税額は上がらないのに、ラベルの品目だけが「発泡酒」になるという組み合わせが起きます。
一覧にない原料は、量に関係なく枠の外
前掲のQ&Aの列挙にない原料を使えば、ひとつまみでもビールの定義から外れます。地域の特産品を使った銘柄に発泡酒表示が多いのは、この線に当たるためです。
麦芽比率を下げた設計もある
麦以外の原料の比率を上げて麦芽比率が50%を割ると、こちらは税率の区分も動きます。品目の線(50%と5%)と税率の線(50%・25%)は、10月1日までは別々に効きます。造る側から見た影響は2026年10月の酒税改正で扱っています。
10月以降、棚はどう変わりそうか
ここから先は予測です。決まっているのは税額と表示のルールだけで、棚に何が並ぶかは各社の判断です。
確実なのは「麦芽使用率」の表記が要らなくなること
国税庁の手引きは、発泡酒の税率適用区分の表示について、令和8年(2026年)9月までは「発泡酒(麦芽使用率○○%)」、10月以降は「発泡酒」と示しています。税率が麦芽使用率と無関係になるためです。 ただし同じ手引きは、10月以降も手続きなく麦芽使用率を表示し続けてよいとも書いています(国税庁 表示方法の手引き PDF)。消える銘柄と残る銘柄が混ざる、というのが読める範囲です。
価格差は縮む方向。ただし幅は読めない
酒税の差が消えるので、コスト側の差は縮みます。それが値札にどう出るか、いつ出るかは分かりません。予測として書いています。
クラフト側の「発泡酒」表示は、税とは別の理由で残る
副原料の量や種類で品目が決まる以上、10月以降も発泡酒表示のクラフトビールは出続けます。税制が理由ではないので、税が揃っても変わりません。
ラベルのどこを見れば分かるのか
缶なら胴部か頭部、主たる商標を表示する側にある「品目」の欄です。
品目は場所まで決まっている
国税庁の説明事項によると、酒類の品目は主たる商標を表示する側の、瓶詰品なら胴部・肩部・口頭部、缶詰品なら胴部・頭部、樽詰品なら胴部・鏡部に表示しなければなりません。文字の大きさも内容量に応じて定められています(国税庁 酒類の表示に関する説明事項 PDF)。探しにくい場所には書けない決まりです。
「ビール」「発泡酒」は言い換えられない
品目の表示は酒税法第3条の名称が原則で、慣熟した呼称による例外表示が認められているのは清酒(日本酒)、単式蒸留焼酎(本格焼酎・泡盛)、みりん(本みりん)などです。ビールと発泡酒はこの例外の一覧にありません。 また、他の品目と誤認されるような商品名の表示もできないとされています(同前)。缶に書かれた品目は、そのまま酒税法上の区分です。
9月30日までは麦芽使用率も読める
いまの発泡酒には「発泡酒(麦芽使用率50%以上)」のような表記が付いています。買った1本がどのあたりの設計かを知りたければ、10月より前のほうが情報が多い、ということになります。飲み比べの起点として使うなら、クラフトビールとは?とスタイル別のペアリングも合わせてどうぞ。
10月1日以降の新しい表示は、実物が出てきたところで追いかけて書きます。更新はTAP TO BREW journalのニュースレターでお知らせしています(記事一覧の下に登録欄があります)。
出典
- 財務省「酒税に関する資料」(2026年9月5日確認)
- 国税庁「酒税率一覧表(令和5年10月1日〜令和8年9月30日)」PDF(同)
- 国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」PDF(令和5年8月・同日確認)
- 国税庁「平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A」PDF(平成30年3月/令和元年9月改訂・同日確認)
- 国税庁「酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)」PDF(同)
- 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条(e-Gov 法令検索・同日確認)