道の駅でビールを売るのに、どの免許が要るのか
売主になる事業者が、その売店の所在地の所轄税務署長から「一般酒類小売業免許」を受けます。 販売場において、原則としてすべての品目の酒類を小売できる免許です(国税庁一般酒類小売業免許申請の手引4頁、令和8年9月改訂)。
道の駅の運営主体は、自治体・第三セクター・指定管理者・地元の農協などさまざまです。誰が売っているかで、免許を持つべき主体が変わります。 ここを先に決めないと、申請先の税務署も決まりません。
免許は「販売場ごと」にかかる
酒税法9条1項の規定により、免許は販売場ごとに受けます。手引は「本店で販売業免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに販売業免許を受ける必要がある」と明記しています(同4頁)。
第三セクターが2つの道の駅を運営しているなら、免許も2つです。1つ目で取れたから2つ目は自動、にはなりません。
免許を受けずに売った場合
手引は「販売業免許を受けないで酒類の販売業を行った場合には、酒税法上、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されることとなっています」と書いています(同4頁)。
さらに、不正な行為で免許を受けた場合は取消処分の対象で、取消しを受けると原則3年間は新たな販売業免許を受けられません(同6頁)。1つの売店の判断ミスが、法人が持つ他の販売場にも波及する構造になっています。
なぜ製造免許は要らないのか
免許を持つ醸造所に製造を委託し、醸造所の製造場で造ってもらうからです。 自分の設備で仕込まない以上、製造免許を受ける主体は醸造所であって、企画した側ではありません。
ここが、既存の解説でいちばん取り違えられている箇所です。
「OEM会社が酒販免許を持つから製造免許が要らない」は成り立たない
製造免許(酒税法7条)と販売業免許(同9条)は、別の条文で、別の主体に、別の理由でかかります。 製造免許が不要な理由は「造る場所が醸造所だから」であって、誰かが酒販免許を持っているからではありません。因果が逆に書かれた説明を読んだら、そこは疑ってください。
TAP TO BREW の場合、免許の分担はこうなる
連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります(/pages/tap-to-brew)。つまり、花園クラフトが売主になるオンライン販売については、依頼する側に免許は要りません。
ただし、道の駅の売店に並べて、その場でお客様から代金を受け取るのは別の販売場です。 そこでの売主は道の駅の運営者なので、運営者自身が一般酒類小売業免許を持っている必要があります。通信販売の免許は、店頭の免許を代替しません。この切り分けは道の駅のオリジナル商品開発で扱った企画の話とセットで押さえてください。
すでに酒を売っている道の駅なら、追加の手続きは要らないのか
運営者自身が一般酒類小売業免許を持ち、自分で仕入れて自分で売るなら、商品を1つ増やすための免許の取り直しは原則として要りません。 一般酒類小売業免許は、原則としてすべての品目の酒類を小売できる免許だからです。
とはいえ、無条件ではありません。3つ確認してください。
1. 免許通知書に付いている条件を見る
免許には、販売できる酒類の範囲や販売方法の条件が付されることがあります(法令解釈通達 第9条関係9(1)ロ)。手元の通知書の条件欄を確認するのが最初です。
2. 委託販売・代理・媒介も免許の対象になる
道の駅の直売所は、農産物を生産者からの委託で預かって売る形態が一般的です。同じ感覚で酒類を扱うと外れます。
酒税法9条1項は「酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業」を免許の対象にしています。通達は、代理業を「製造者又は酒類販売業者の酒類の販売に関する取引を継続的に代理すること」、媒介業を「他人間の酒類の売買取引を継続的に媒介すること」と定義し、いずれも営利を目的とするかどうかを問わないとしています(同通達 第1項関係2・4)。
3. テナントが売るなら、販売場はテナントの区画
建物の一部を賃借して酒類の販売業をする場合、賃借している場所そのものが販売場として扱われます(同通達 第1項関係6(2))。道の駅の一角を酒販店に貸して売ってもらう形なら、免許を持つのはそのテナントです。運営者の免許では代替できません。
酒類販売管理者を、販売場ごとに選任する
免許とは別に、酒類の販売業務を開始する時までに、販売場ごとに酒類販売管理者を選任する義務があります(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律86条の9。国税庁お酒に関するQ&A 販売業免許関係)。ここが抜けたまま開店してしまう例が多い箇所です。
誰を選任できるか
酒類の販売業務に従事する者で、酒類販売管理研修を過去3年以内に受けた者の中から選びます。加えて、20歳未満でないこと、6か月以上継続して雇用される予定であること、他の販売場で酒類販売管理者に選任されていないことが要件です(前掲手引16頁)。
最後の条件は、複数の道の駅を運営する法人で効いてきます。1人を2か所で兼任させられません。選任しなかった場合は50万円以下の罰金です(同16頁)。
選任したら2週間以内に届け出る
選任・解任のいずれも、2週間以内に販売場の所轄税務署長へ届け出ます。また、販売場ごとに、公衆の見やすい場所へ酒類販売管理者の氏名や研修の受講事績等を記載した標識を掲げる義務があります(同17〜18頁)。
研修は免許を受ける前でも受講できると手引が案内しています。申請と並行して受けておくのが実務的です。
売場の表示も基準がある
酒類の陳列場所には「酒類の売場である」旨と「20歳以上の年齢であることを確認できない場合には酒類を販売しない」旨を表示します。文字の大きさは100ポイントの活字以上と定められています(同18頁)。手書きのPOPで済ませられる話ではありません。
その場で飲んでもらうだけなら、免許は要るのか
自己の営業場で飲用に供するだけなら販売業免許は要りませんが、持ち帰り用に売るなら要ります。 国税庁のQ&Aが直接答えています。
酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場で飲用に供する業を行う場合には、販売業免許は必要ありませんが、例えばテイクアウト用など、その営業場以外の場所で飲用に供されるための酒類を販売する場合には、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります(前掲Q&A)
道の駅のレストランでグラス提供するだけなら免許は不要。同じ建物の売店で缶を売った瞬間に免許が要る、という線です。両方やるなら免許は要ります。
イベントや物産展で臨時に売るとき
博覧会場等で臨時に販売場を設けて小売する場合は、期限付酒類小売業免許を申請します。原則として販売場を開設する日の2週間前まで。一定の要件を満たす場合は10日前までの届出で足ります(国税庁期限付酒類小売業免許について)。
ただし、届出で済ませられる要件の2番目が「届出をする者が、酒類製造者又は酒類販売業者であること」です。免許を1つも持っていない団体は、この短縮ルートに乗れません。 開催期間が7日以内であること、催物の内容が酒類の小売を主目的としないことなども条件に並んでいます。地域のイベントで売る計画は観光地の限定ビール企画の段階で、この日程を逆算に入れてください。
費用の目安・期間・最低ロット
免許側とビール側で、かかるものが分かれます。
免許にかかるもの
- 登録免許税 — 一般酒類小売業免許1件につき3万円。申請手数料は不要(前掲手引3頁・9頁)
- 標準処理期間 — 2か月。書類の補正に要した期間はこれに含まれません(同3頁)
- 相談先 — 販売場の所在地を管轄する税務署。個別の相談は酒類指導官設置署へ(相談窓口の案内)
ビールを作る側にかかるもの
TAP TO BREW の場合、/pages/tap-to-brew に公開している条件です。
- 最低ロット — 350ml缶で48本から
- 初期制作費 — 50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)
- 期間 — 初回相談からリリースまで概ね2〜3か月
免許の標準処理期間2か月と、ビールの制作2〜3か月は並行して走らせられます。 醸造が仕上がってから免許を申請すると、そこから2か月が上乗せになります。なお2026年10月1日にビール系飲料の酒税が一本化されるので、原価の見方は2026年10月の酒税改正も合わせて確認してください。
免許の要否は、売主を決めた時点で決まります。 道の駅が売主なのか、テナントが売主なのか、ECは花園クラフトが売主なのか。企画の最初にこの1行を決めておけば、あとの手続きは順番に並びます。売り方の設計から相談したい場合はTAP TO BREW の無料相談へどうぞ。