飲食店にオリジナルビールを置くと、店の何が変わるのか|変わるものと、変わらないもの
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飲食店にオリジナルビールを置くと、店の何が変わるのか|変わるものと、変わらないもの

2026.04.11 12min read Written by TAP TO BREW 編集部

オリジナルビールを置くと、店の何が変わるのか

変わるのは3つです。価格を自分の側で決めることになる、在庫をロット単位で先に買い切ることになる、切らしたときに自分では埋められなくなる。 この記事は、この3つが店の日々の運営にどう出るかだけを扱います。

この記事に「客単価が◯円上がる」は出てきません

導入した店の客単価やリピートの数字を挙げた記事は多くありますが、公開の許諾が取れていて、集計の方法まで確認できた導入実績を、TAP TO BREW はまだ持っていません。 裏の取れない数字を実測として置くくらいなら、置いた瞬間から確実に変わるものだけを書きます。

同じ理由で、この記事には店名を伏せた事例が1件も出てきません。 名前を伏せた事例は、読んだ人の側で検証できません。

変わるもの

  • 価格の決め方 — 既製品は仕入値が外から決まります。オリジナルは、ロットの総額と本数から1本あたりが決まり、提供価格も自分で置くことになります
  • 在庫の持ち方 — 1本ずつ、1ケースずつは発注できません。最低ロット分をまとめて買い切ります
  • 欠品の埋め方 — 既製品は発注すれば入ります。オリジナルは、次のロットが仕込み上がるまで出せません
  • 説明する人 — 誰がどこで造ったのか、次はいつ入るのかを、卓で訊かれるようになります

変わらないもの

  • 来店数・席数・回転 — 置いたこと自体では動きません
  • 料理の原価・人件費・家賃 — 影響を受けません
  • ビールを頼む人の割合 — メニューの見せ方や価格帯で動くとしても、それは並べ方の結果であって、オリジナルにしたことの結果ではありません

判断に要るのは、変わる側の3つを自分の店で受け止められるかどうかです。 1杯あたりの粗利や最低ロットの消化日数を金額で計算したい場合は、TAP TO BREW のサービスページから、ロット別の単価と収益シミュレーションを載せた資料を取れます(2026年9月6日に公開ページで確認)。

オペレーションは何段増えるのか

増えるのは4段です。ロット単位の発注、保管場所と温度帯の確保、期限の管理、切らしたときの説明。 既製品の「無くなったら頼む」の1段が、この4段に置き換わります。

1. 仕入れではなく、ロットで持つ

TAP TO BREW の最低ロットは48本(350ml)です(TAP TO BREW サービスページ・2026年9月6日に公開ページで確認)。350ml缶48本は、容量にして16.8リットル分です。

ここが既製品と決定的に違います。代金は納品前に確定していて、売れても売れ残っても同じです。 既製品なら売れ行きが鈍った時点で次の発注を止められますが、ロットで持つ在庫は、止める判断をした時点で既に手元にあります。

2. 保管場所と温度帯は、製品ごとに決まる

常温で置けるかどうかは、熱処理をしたかどうかでは決まりません。 「生ビール」「ドラフトビール」という表示は、熱による処理(パストリゼーション)をしていないという意味だけを持ちます(ビール酒造組合 ビールの豆知識|ビールの表示・2026年9月6日確認)。保存の温度帯については何も言っていません。

品質を安定させている工程は、ろ過のほうです。酒類総合研究所は「熟成したビールはろ過してビール酵母を除き、品質を安定化させます」「現代の日本では生ビールとしてろ過だけで品質を安定させるのが一般的です」と書いています(酒類総合研究所 情報誌「お酒のはなし」ビール・2026年9月6日にPDFを取得)。

酵母を残した無ろ過の製品には、造り手が冷蔵での保存を指定していることがあります。 冷蔵指定が付くなら、納品日から売り切るまで、48本分の棚を空け続けることになります。この棚が空くかどうかは、レシピを決める前に測る話です。 空かないなら、常温で置ける設計にできるかを企画の段階で確認することになります。

3. 賞味期限は、造り手が決めて書いている

酒類は、食品表示基準第3条第3項により「保存の方法」と「消費期限又は賞味期限」の表示そのものを省略できます(国税庁食品表示法における酒類の表示のQ&A 問25・2026年9月6日にPDFを取得)。つまり、期限が書いてあるビールは、法律で書かされているのではなく、造り手が自分で設定して書いています。

だから一般的な日数の相場を当てにできません。 発注前に訊く質問は「賞味期限は何ヶ月で設定しますか」の1つで、その答えが出るまでは、次に書く「何日で売り切るか」を比べる相手がありません。

4. 切らしたときに説明する人が要る

卓で訊かれるのは味だけではありません。誰が造ったのか、なぜこのスタイルなのか、いま入っていないなら次はいつか。ラベルに書いていないことが質問になります。

ここは事実の共有で足ります。飲んでいないスタッフに味を語らせないのが、いちばん揉めない置き方です。造り手・スタイル・原材料・次のロットの予定を、紙1枚で共有しておけば足ります。

切らしたら、次のロットが仕込み上がるまで出せない

追加発注から納品までに醸造の時間が入るので、切れた日に補充する手段がありません。 ここが、置いたあとにいちばん効いてきます。

醸造の枠は、自分の都合では縮まらない

TAP TO BREW の公開ページに出ている期間は、初回相談からリリースまで約2〜3ヶ月で、内訳はブランド設計・デザインに約1ヶ月、醸造に約1ヶ月、EC構築・プロモーション準備に約2週間です(TAP TO BREW サービスページ・2026年9月6日確認)。

2回目以降は、デザインとECが初回で構築済みのため OEM醸造費(20〜25万円/ロット)のみになります(同上)。費用は下がりますが、醸造の時間は毎回かかります。 出したい日が決まっているなら、その日から逆算して発注の時期を決めることになります。

定番にするか、限定にするかは、この一点で決まる

定番のドリンクとしてメニューに固定するなら、切らさない前提になります。手元のロットが残っているうちに次を発注し続けることになり、消化のペースを読み違えると期限側に当たります。

限定として置くなら、切れて終わりにできます。周年・イベント・季節に1ロットだけ、と決めれば、消化にかける日数を自分の側で決められます。 メニューを頻繁に入れ替える店は、こちらのほうが噛み合います。

自分で造る側に回ると、別の壁が立つ

委託ではなく自分の醸造所で造るなら、酒類製造免許に最低製造数量基準がかかります。ビールは年60キロリットル、発泡酒は年6キロリットルです。数え方と条文は自分の醸造所を持つには年間いくら作るのかに分けました。委託製造なら、造る側の免許は醸造所が持っているので、この壁はかかりません。

免許の主語は「売る人」— 注いで出すのと、缶を渡すのは別

店内で注いで出すだけなら、酒類の販売業免許は要りません。缶のまま持ち帰らせる、またはECで売るなら、売る主体に販売場ごとの免許が要ります。

店内提供が免許の外にある根拠

酒税法第9条第1項は、酒類の販売業をしようとする者は販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならないと定めたうえで、ただし書きで「酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業」を対象から外しています(e-Gov 酒税法・2026年9月6日に法令APIで原文を取得)。

免許を受けずに酒類の販売業をした場合は、同法第56条第1項第1号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(同上)。

缶を渡した時点で線を越える

国税庁のQ&Aが、注記でこう書いています。「消費者に対して単に未開封の缶やびん詰めの酒類を販売する行為であって、その場以外で飲用に供することを予知して販売する場合は、酒税法上の販売業免許が必要となります」(国税庁 お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q9・2026年9月6日確認)。

同じ場所・同じ商品でも、注げば免許の外、缶で渡せば免許の中という分かれ方をします。さらに、飲食店と同じ場所に販売場を置くこと自体が免許の拒否要件の例示に挙がっています。酒税法第10条第9号の場所的要件は「正当な理由なく取締り上不適当と認められる場所に販売場を設置する場合(酒類の製造場又は販売場、酒場、料理店等と同一の場所等)」です(同Q2・2026年9月6日確認)。「店の一角で缶も売る」は自動的に通る話ではないので、所轄の税務署に事前に相談してください。

免許を取ると、その後の作業が続く

自分の名前で売る側に回ると、免許を受けた時点では終わりません。酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の9が、酒類小売業者に次を義務づけています(e-Gov 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律・2026年9月6日に法令APIで原文を取得)。

  • 販売場ごとに酒類販売管理者を選任する(第1項)
  • 選任・解任は2週間以内に届け出る(第4項)
  • 財務省令で定める期間ごとに研修を受けさせる(第6項)。その期間は「最後に酒類販売管理研修を受けた日から起算して三年を超えない期間」(同法施行規則第11条の18・同日に原文取得)
  • 販売場ごとに、公衆の見やすい場所へ標識を掲げる(第9項)

缶を売るかどうかの判断には、この継続する作業も入ります。

TAP TO BREW の場合

連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります(TAP TO BREW サービスページ・2026年9月6日に公開ページで確認)。依頼側が免許なしでEC販売まで進められるのは、花園クラフトが売主になる形で売る場合です。

店が自分の名前で店頭の缶を売るなら、この免許は使えません。 その場合は店の側で免許を受けることになり、前項の選任・届出・研修・標識が店に付いてきます。

いま向かない店の条件

ビールの出数が少ない、席数が少なくて回転が読めない、冷蔵の棚が空かない、メニューを頻繁に入れ替える。このどれかに当たるなら、いまロットを買う形での導入は見送るほうが安全です。

出数が少ない店・回転が読めない店

判断は割り算1つで済みます。ロットの本数 ÷ 1日に出る本数 が、造り手の設定する期限より長ければ、その時点で計画は成り立ちません。 ワインや日本酒が主で、ビールが1杯目にしか出ていない店は、まずいまの出数を数えてください。

席数が少なく、週によって出数が倍半分に振れる店も同じです。読めない日数を期限と比べても、比べたことになりません。 逆に、予約制で来客数が事前に確定している業態なら、ここは有利に働きます。

棚が空かない店・メニューを頻繁に入れ替える店

冷蔵指定が付く製品は、納品から売り切るまで棚を占有します。既存の食材や飲料を減らして空けるなら、それも導入に伴う負担のうちです。

メニューを頻繁に入れ替える店は、1銘柄をロット単位で固定することと噛み合いません。入れ替えの周期より消化の日数が長ければ、下げたい時期に在庫が残ります。

見送っても、残る形はある

毎月回す前提を外せば、選択肢は残ります。周年・イベント・季節に1回だけ、限定として1ロットを売り切る形なら、消化の日数を自分の側で決められます。卓ではなくギフトやノベルティとして捌くのも同じ考え方です。定番にするかどうかは、その1回の数字を見てから決めれば足ります。

進めるなら|流れと、判断に要る3つ

相談 → コンセプト・レシピ設計 → ラベル → 仕込み → 納品の順に進みます。数字はいずれも TAP TO BREW が公開しているものです(TAP TO BREW サービスページ・2026年9月6日に公開ページで確認)。

  • 費用の目安 — 初期制作費 50〜70万円(うち OEM醸造費 20〜25万円)。継続支援費は月額 5〜10万円で、これに販売手数料(売上の15%)とプラットフォーム利用料(月額1万円)。2回目以降の醸造は OEM醸造費のみ(20〜25万円/ロット)
  • 期間 — 初回相談からリリースまで 約2〜3ヶ月
  • 最低ロット — 48本(350ml)から

相談の前に手元で数えておけるのは3つです。1日にビールが何杯出ているか、冷蔵で何本分の棚を空けられるか、缶を店頭で売る予定があるか。 この3つが分かっていれば、消化の日数と免許の要否は初回の相談で片が付きます。

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この記事で引いた資料

よくある質問

飲食店がオリジナルビールを置くと、店の運営は何が変わりますか

変わるのは3つです。価格を自分の側で決めることになる、在庫を1本ずつではなく最低ロット単位で先に買い切ることになる、切らしたときに次のロットが仕込み上がるまで出せなくなる。来店数や席数、料理の原価は、置いたこと自体では動きません。

オリジナルビールは常温で保管できますか

製品ごとに違います。常温で置けるかどうかは熱処理の有無では決まりません。「生ビール」「ドラフトビール」の表示は熱による処理をしていないという意味だけを持ち(ビール酒造組合)、品質を安定させているのはろ過の工程です(酒類総合研究所)。酵母を残した無ろ過の製品には、造り手が冷蔵での保存を指定していることがあります。

オリジナルビールの賞味期限は何ヶ月ですか

一律の日数はありません。酒類は食品表示基準第3条第3項により「保存の方法」と「消費期限又は賞味期限」の表示そのものを省略できるため(国税庁 食品表示法における酒類の表示のQ&A 問25)、期限は造り手が設定して書いています。発注前に何ヶ月で設定するかを確認してください。

店内で出すだけなら酒類の販売業免許は要りませんか

要りません。酒税法第9条第1項のただし書きが「酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業」を免許の対象から外しています。ただし未開封の缶やびんを渡し、その場以外で飲むことを前提に売る場合は販売業免許が必要です(国税庁 お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q9)。免許を受けると、酒類販売管理者の選任・2週間以内の届出・3年を超えない期間ごとの研修・標識の掲示が続きます。

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TAP TO BREW Editorial
クラフトビールの最新トレンド、ブランド戦略、醸造の裏側をお届けするTAP TO BREWの編集チーム。株式会社TSURATSURA運営。

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