作れるかどうかは、スポンサー契約の競合条項で決まる
作れます。可否を決めているのは法律ではなく、クラブと既存スポンサーの間で結ばれた競合条項(独占条項)の文言です。 酒類の法令の側に「大手ビール会社がスポンサーだから作ってはいけない」という規定はありません。
法令の側には、スポンサーを理由にした禁止が無い
酒類の製造と販売にかかるのは酒税法の免許で、判定の対象は誰が造り、誰が売るかです(e-Gov 酒税法)。スポンサーが誰かは免許の要件に一切出てきません。止まる場合、止めているのは民間の契約です。
読む順番は「定義」→「独占の範囲」→「例外」
競合条項は、多くの場合3つの部品でできています。独占の対象カテゴリを決める定義条項、その独占が及ぶ範囲(媒体・会場・期間・地域)、そして例外の列挙です。 揉めるのはほぼ定義条項で、「ビール」なのか「ビール類」なのか「アルコール飲料」なのかで結論が変わります。範囲の側も、ユニフォームと会場看板だけを対象にしているのか、クラブが販売する物販まで含むのかで、企画の置き場所が変わります。
他クラブが出しているという事実は、根拠にならない
スポンサー契約の条項は当事者間の合意であり、通常は公表されません。 だから「あのクラブが出しているのだから自分たちも出せる」という推論は成り立ちません。相手が持っている契約書の中身を、外から知る方法が無いためです。この記事でクラブ名や事例を挙げていないのは、条項の中身まで公開情報で確認できるクラブが無いからです。確認する相手は他クラブではなく、自分の手元の契約書です。
企画そのものの組み立て方はスポーツチームのオリジナルビール製作にまとめています。
「ビール」が独占でも、品目が違えば外れる場合がある
契約が「ビール」という語だけで独占を定めているなら、酒税法上の品目が発泡酒やリキュールになる商品は、文言の上では対象外になり得ます。 ただし判定するのは条項の定義であって、酒税法ではありません。
酒税法は、麦芽比率と副原料で線を引いている
酒税法第3条第12号は、ビールを麦芽・ホップ・水を原料として発酵させたもの、または麦その他の政令で定める物品を加えた場合は「その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の百分の五十以上」かつ「政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五を超えない」もので、アルコール分20度未満のものと定義しています(同法)。
この線から外れると、同条第18号の発泡酒や第21号のリキュールになります。地元の果物を多く使う設計にすると、狙わなくても品目が動きます。詳しくは地元の果物を入れたビール、ラベルに「ビール」と書けるのかで分解しています。
契約が「ビール類」「アルコール飲料」と書いていれば、逃げ道は無い
定義条項が品目ではなくカテゴリで書かれている場合、品目を変えても外れません。先に条項の語を確認してからレシピを決める順番にしないと、造ってから戻れなくなります。 品目が変わると税率とラベルの表示も変わるため、原価計算もやり直しになります(2026年10月の酒税改正)。
「文言の上では外れる」と「揉めない」は別
品目で外したとしても、既存スポンサーが自社の枠を侵されたと受け取れば交渉になります。法的な当たり判定と、関係を続けられるかは別の問題です。 品目で逃げる案は、単独で使わず、後述の巻き込み案とセットで持っていくのが現実的です。
販売場所で切り分ける手がある
スタジアム内での販売と、クラブのECや通販での販売は、契約上も免許上も別の枠として扱われます。どこで売るかを先に決めると、条項の当たり方も手続きも変わります。
免許は「売る主体」に「販売場ごと」にかかる
国税庁のQ&Aは、「本店で販売業免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに免許を受ける必要がある」としています(お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q1)。会場の飲食業者が免許を持っていることは、クラブが自分の名前で缶を売ってよい理由になりません。 販路ごとの免許はオリジナルビールはどこで売れるのかに整理しています。
クラブが売らずに送客する形にも、論点がある
クラブは売らず、販売元のECへ誘導する設計にしても、酒類の売買取引を継続的に媒介する行為には酒類販売媒介業免許の論点が残ります。国税庁は媒介業を「他人間の酒類の売買取引を継続的に媒介(取引の相手方の紹介、意思の伝達又は取引内容の折衝等その取引成立のためにする補助行為をいいます。)すること」と説明し、「営利を目的とするかどうかは問いません」と明記しています(同Q13)。
告知やリンク掲載がこの媒介に当たるかは、公表資料からは読み取れませんでした。 設計が固まった段階で所轄税務署に確認してください。ここを一般論で埋めません。
会場での販売権が誰のものかを、先に確かめる
スタジアムやアリーナの飲食販売権は、クラブが持っているとは限りません。施設の所有者や運営受託者が持っている場合、クラブとスポンサーの合意だけでは会場に持ち込めません。契約書を読む前に、販売権の所在を1行で確認しておくと手戻りが減ります。
本数を限定して記念品扱いにしても、免許の判定は変わらない
「記念品」という呼び方は契約交渉では効くことがありますが、酒税法の判定は継続的に販売するかどうかで行われ、本数を絞っても売れば販売です。
国税庁のQ&Aは「継続的に販売する」で免許を定義している
酒類小売業免許は「消費者、料飲店営業者……又は菓子等製造業者に対して酒類を継続的に販売することが認められる免許」と説明されています(同Q3)。
免許が要らない例として挙がっているのは、「ご自身の飲用目的で購入した又は他者から受贈されたなどの酒類のうち、家庭で不要になった酒類」を出品する場合で、ガレージショップや学校のバザーも基本的に同じ扱いとされています(同Q5)。企画して造らせた商品を売る話は、この例外に当たりません。 500本限定でも1,000本限定でも、事業として売るなら免許の対象です。
無償で配る場合は、対価の有無を詰める
販売ではなく無償で配るなら、酒税法上の販売業には当たりません。 ただしチケット代やファンクラブ会費に含めて渡す形は、実質的に対価を得ていると見られる余地があります。この点について公表資料で明示された記述は見つけられなかったため、断定しません。設計を決めたら税務署に確認する項目として残します。
契約側では「販売」と「配布」の書き分けを見る
競合条項が「販売してはならない」とだけ書いている場合、無償配布は文言上外れることがあります。逆に「提供・頒布」まで含む書き方なら、配っても当たります。本数を絞る案が効くのは、条項がこう書き分けられているときだけです。
スポンサーを巻き込む形にする
競合条項は当事者の合意で外せるので、既存スポンサーを企画側に入れるのが最短です。ただし合意できても、広告表現と商品化には別の制限が残ります。
リーグ側の承認が要る部分がある
Jリーグの場合、規約第125条は、リーグとクラブのプロパティを使用した商品化権はリーグに帰属し、クラブプロパティのみを使用した商品化権はそのクラブに帰属すると定めた上で、商品化細則で指定する場合は事前にリーグの承諾が必要としています(Jリーグ規約)。ユニフォームへの広告表示も、第三者の名称・商品名を事前に「広告掲出申請書」で届け出て承認を得る仕組みです(ユニフォーム要項第10条)。クラブとスポンサーの二者で決めきれない領域があります。 他競技はリーグごとに規程が違うので、同じ位置にある文書を探します。
グッズ展開には自主基準の制限がかかる
酒類業8団体の「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」は、「主として20歳未満の者が使用する衣類、玩具、ゲーム等に酒類の商品ロゴ、商標を使用しない」と定めています(酒類の広告審査委員会)。ビールのブランドをクラブグッズ全体へ広げる企画は、ここで止まります。
選手を起用できる範囲にも線がある
同じ自主基準は、「20歳未満の者を広告のモデルに使用しない」「テレビ広告において、25歳未満の者を広告のモデルに使用しない」とし、25歳以上でも25歳未満に見える表現を禁じています(同上)。さらに、使用しない表現として「スポーツ時や入浴時の飲酒を推奨誘発する表現」を挙げ、この「時」をスポーツは直前・最中・直後と定義しています(同上)。原文はプレーする側か観る側かを書き分けていません。 試合と飲用を直結させるコピーは、社内で通す前に基準の原文に当ててください。
確認する順番
契約書 → リーグ規程 → 品目 → 売主と免許 → 広告表現の順で潰します。この順番を守ると、造り始めてから戻る事故が起きません。
5つを、この順で
- 競合条項の定義・範囲・例外(自クラブの契約書。「ビール」か「ビール類」か「アルコール飲料」か)
- リーグ規程の商品化権と広告の承認(Jリーグなら規約第125条・ユニフォーム要項第10条)
- 酒税法上の品目(レシピを決める前。麦芽比率と副原料で動く)
- 誰が売主になり、どこを販売場にするか(会場・EC・物産展でそれぞれ別)
- 広告表現とグッズ展開(自主基準。モデルの年齢・グッズへのロゴ使用・表現)
1と2が済むまでレシピを固めない、が要点です。1で結論が出ればレシピの検討そのものが要りません。
交渉に持っていく資料は3枚
既存スポンサーやリーグに話を通すとき、必要なのは企画意図・想定本数と販路・ロゴの使用範囲の3点が書かれた紙です。数量と販路が書かれていない企画は、相手が可否を判断できないため、持ち帰りになります。
費用の目安・期間・最低ロット(TAP TO BREW の場合)
`/pages/tap-to-brew` に公開している条件です(2026年9月5日確認)。
- 最低ロット — 48本(350ml)から。小ロットでテスト販売し、反応を見てから追加醸造する流れを推奨しています
- 費用 — 初期制作費50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)。ブランド設計・ラベル・EC導線・初動プロモーションを含む2層構造の1層目で、2層目は継続支援費です
- 期間 — 初回ヒアリングからリリースまで約2〜3ヶ月。ブランド設計とデザインに約1ヶ月、醸造に約1ヶ月、EC構築とプロモ準備に約2週間
販売元は醸造所の花園クラフトです。 連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が販売元となるため、クラブ側は免許を取らずにEC販売まで進められます(同ページ)。逆に、クラブが自分の名前で売る設計にするなら、その主体で免許を取ることになります。 どちらにするかで、契約の相手も申告の主体も変わります。
競合条項の該当箇所と、販売を想定している場所の2つが分かれば、初回で可否の見立てまで出せます。契約書そのものをお預かりする必要はありません。
出典
- e-Gov 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第12号・第18号・第21号、第9条(2026年9月5日確認)
- 国税庁お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q1・Q3・Q5・Q13(同)
- 酒類の広告審査委員会酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準(広告・宣伝関係)(同)
- 公益社団法人日本プロサッカーリーグJリーグ規約 第123条〜第125条(同)
- 同Jリーグ ユニフォーム要項 第10条(同)
- TAP TO BREW サービス概要(料金・最低ロット・制作期間・販売元)(同)