区域内で相応の付加価値が生じているかで決まる
できます。 ただし判定するのは「どこで仕込んだか」だけではなく、総務省の地場産品基準のどれか1つの号に当てはまるかです。区域外の醸造所に委託した場合に現実に使える号は、「区域内で原材料の主要な部分が生産されたもの」の1つに絞られます。
基準の建て付けは2段になっています。地方税法第37条の2第2項が「区域内において生産された物品…であつて、総務大臣が定める基準に適合するもの」と枠を作り、その中身を平成31年総務省告示第179号が定めています(e-Gov 地方税法/告示179号 制定時の原文)。
3割基準と地場産品基準は、別の条文にある
この2つを1つの話として扱うと、企画の詰め方を間違えます。
- 3割基準 — 返礼品等の調達に要する費用の額が、寄附金額の「百分の三十に相当する金額以下」であること。地方税法に書いてあります(第37条の2第2項。2026年9月30日までは第2号、2026年10月1日以後は第3号)
- 地場産品基準 — 同項(同じく第3号 → 第4号)を受けて、総務省告示179号が定めています(2026年9月30日までは第5条、2026年10月1日以後は第6条)
送料・決済手数料・ポータル手数料は、3割の枠に入らない
これらは調達費用ではなく募集に要する費用の側に入ります。総務省の資料では、令和5年度の受入額1兆1,170億円に対し、返礼品3,030億円(27.1%)、送料・決済等1,080億円、ポータルサイトへの手数料等1,320億円(11.8%)と、別立てで集計されています(総務省 令和7年5月13日 資料1)。
この募集費用の上限は、2026年10月1日から動きます。 2026年9月30日までは告示で「募集に要した費用の合計額が寄附金額の百分の五十に相当する金額以下」でしたが、2026年10月1日以後に開始する指定対象期間からは、寄附金額から募集費用を引いた「寄附金活用可能額」が寄附金額の百分の六十以上であることが地方税法側の基準になります(同項第2号イ。2026年10月1日施行版の条文)。募集費用の側から見れば4割以下です。
2026年10月1日から、地場産品基準そのものも動く
令和7年6月24日付の総務省告示第220号が、告示179号を改正しました。適用は令和8年(2026年)10月1日以後に開始する指定対象期間からです(改正告示)。製造・加工で通す号の文言が「工程のうち主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じている」から「製造等を行うことにより当該返礼品等の価値の過半が生じている」に変わり、製造者の証明と自治体による公表が条件に加わりました。
区域外の醸造所に委託した場合に効く条件
区域外で仕込むなら、通せるのは原材料の号だけです。 製造の号は、区域内で工程を行っていることが前提なので使えません。
国が示している運用のQ&A(令和7年6月24日 総税市第73号)は、原材料の号について、認められると考えられる例に「区域内で生産された酒米を100%使用して、区域外において醸造した地酒」を挙げています(Q&A問17)。ビールで言えば、麦芽・ホップ・副原料が酒米と同じ位置に立ちます。
「オリジナルラベルを貼る」は工程として数えられない
同じQ&Aの問18は、製造の号について認められないと考えられる例に「区域外で生産されたビールに、当該団体オリジナルのシールを貼ったもの」を名指しで挙げています。判断の材料として、関税法施行規則が「実質的な変更を加える加工又は製造に該当しない例」として列挙するものを踏まえるように、とも書かれています。その一覧には次が含まれます。
- 単なる切断/選別/仕分け/単なる混合
- 瓶、箱その他これらに類する包装容器に詰めること
- 製品又は包装にマークを付け又はラベルその他の表示を張り付け若しくは添付すること
既製のビールに自治体のラベルを巻き直す形は、この一覧に真正面から当たります。
区域内の醸造所に委託するなら、製造の号が使える
同じ問18は、認められると考えられる例に「区域外で生産された原材料を用いて、区域内の醸造所において醸造した酒」を挙げています。原材料が全部よそから来ていても、醸造そのものを区域内でやるなら通ります。委託先が区域内にあるかどうかで、使う号が入れ替わると考えてください。
原材料の産地証明を企画段階で用意する
原材料の号で通すなら、区域内産の原材料が「重量や付加価値のうち半分を一定程度以上上回る」ことを示せる書類を、募集を始める前に用意します。 出荷してから揃える書類ではありません。
Q&A問17は、主要な部分と言えるかどうかを「当該原材料を用いて作られる加工品等の重量や付加価値のうち半分を一定程度以上上回る割合が当該原材料によるものであること等により判断し、ふるさと納税の募集に際し、その旨をポータルサイト上等に明記すること」としています。判定と同時に、根拠を公開の場に書くところまでが1セットです。
「区域内産を使った」だけでは足りない例が示されている
同じ問17が、認められないと考えられる例として挙げているのは次のようなものです。
- 製造に用いる牛乳のうち区域内で生産された牛乳を約1割使用した、区域外製造のアイスクリーム
- 区域内で生産された醤油・ポン酢を使用した、区域外で加工されたもつ鍋・水炊き
- スチール缶の原材料となる鉄を区域内で製造し、そのスチール缶を使用したビール
3つ目はビールそのものです。容器を区域内で作っても、中身の原材料にはなりません。
酒税法の麦芽比率とは、別の物差しになる
原材料の設計をするとき、酒税法の線と地場産品基準の線は重なりません。酒税法では、果実・香辛料・ハーブ・野菜などの副原料は麦芽重量の5%以内に収めないと品目が「ビール」でなくなります(→地元の果物を入れたビール、ラベルに「ビール」と書けるのか)。つまり、区域内産の果実だけで原材料の主要な部分を占めることは、量の面から成立しません。 区域内産で効かせるなら、麦芽かホップの産地を先に押さえる話になります。
製造の号で通すなら、2026年10月からは証明書が要る
区域内の醸造所に委託して製造の号で通す場合、2026年10月1日以後に開始する指定対象期間からは、返礼品等の製造等を行う者による証明書が必要になります。総務大臣が定める標準的な算出方法は価格ベースで、次の算式です(総税市第30号 別紙2)。
(A-B)/A A:当該地方団体による返礼品等の調達費用/B:当該返礼品等の製造・販売等のために当該地方団体の区域外で生じた費用
この値が0.5を超えていることを醸造所が証明し、証明書には一般販売価格も記載します。自治体は、その内容を募集を開始する日までに一覧表として公表します。返礼品の調達価格だけを高く積んで割合を作る形は、一般販売価格が並んで公表されるので通りません。
ラベルに「◯◯市産」と書くなら根拠が要る
産地名を書くなら、自治体が契約で適正表示を担保する側に回ります。 だから、根拠を出せない産地名は企画の段階で落とします。
告示179号は、食品を返礼品にする自治体に対し、食品を取り扱う者による産地名の適正な表示を確保するための措置を求めています(2026年10月1日以後の版で第3条第3号)。契約に「産地名を適正に表示する旨の規定」と「自治体が必要と認めるときは実地調査を含む調査を行うことができる旨の規定」を設け、定期的に調査し、疑われる場合は速やかに実地調査を行う、という組み立てです。ビールは食品表示法第2条第1項の「全ての飲食物」に当たるので、ここに入ります(e-Gov 食品表示法)。
契約に入る条項は、Q&Aが4つ挙げている
Q&A問9の2は、必要な措置として契約に盛り込む内容を具体的に挙げています。
- 事業者が食品返礼品の産地名を適正に表示する旨の規定
- 自治体が必要と認めるときは、調査(実地調査を含む)を行うことができる旨の規定と、事業者が応じる義務の規定
- 地場産品基準等において遵守すべき事項が記載された書類の整備・保存をする義務に係る規定
- 不適切な表示を行った場合の取引中止等の対応、契約不履行時の違約金・損害賠償に係る規定
受託する側から見れば、産地の裏付けを保存し、実地調査に応じる前提で契約するということです。原料の仕入伝票や産地証明を、誰が何年持つのかを決めておく話になります。
ラベルの表示義務そのものは、また別のルール
品目・アルコール分・原材料名といった容器への表示は、酒税法と食品表示のルールが決めています。地場産品基準を満たすことと、ラベルが法令に適合していることは別々に確認が要ります(→オリジナルビールのラベル表示義務)。
迷う品目は募集前に照会できる
できます。ただし窓口は事業者ではなく自治体側で、指定の申出と、期中に返礼品を足すときの事前提出がその場になります。
地方税法第37条の2第3項は、指定を受けようとする自治体に、申出書と基準への適合に関する書類を総務大臣に提出させる仕組みです。年度の途中で返礼品を追加する場合も、Q&Aは「予め、提供しようとする返礼品等の内容について……書類を調製し、総務省へ提出すること」としています(令和7年6月24日版の問31)。募集ページを公開してから相談する順序ではありません。
2026年10月の指定から、事前確認が省かれる自治体が出る
総務省は、前年の事前確認で基準不適合等が無かった団体(令和6年度で約1,200団体)について、返礼品の事前確認を行わず、書類の提出を省略する方針を示しています。代わりに一部団体の抽出調査と、基準適合性に疑いのある返礼品の通報窓口を置くとしています(令和7年6月24日 市町村税課資料)。
国が事前に見てくれる前提が薄くなる分、企画する側が根拠を持つ意味が大きくなります。 指定基準に適合していなかったと認められた場合、事務的なミスや受領額が僅少といった特段の事情がない限り指定は取り消される、というのがQ&Aの説明です。2026年10月1日以後は、遡って見る期間が指定対象期間の初日前1年以内から4年以内に延びます(地方税法第37条の2第2項第5号)。
相談の順序は、醸造所 → 自治体 → 都道府県
原材料の産地と数量、区域内で行う工程の中身は、醸造所に聞かないと確定しません。それを持って自治体の担当課に当てます。国から都道府県への通知は、都道府県内の市区町村への助言・支援を求める形(地方自治法第245条の4の技術的助言)で出ているので、市区町村が判断に迷う品目は、都道府県経由で確かめる筋が通っています。 返礼品の開発全体の進め方は自治体向けのふるさと納税オリジナル返礼品の開発方法にまとめています。
委託先の選び方が、基準を満たせるかを決める
醸造所の所在地と規模の2つが、使える号と売り方の両方を決めます。 レシピより先に決まる項目です。
所在地で、通せる号が変わる
- 区域内の醸造所 — 製造の号(2026年10月1日以後は第6条第3号)。区域外産の原料でも通るが、価値の過半が区域内で生じたことの証明書を醸造所に出してもらう必要がある
- 区域外の醸造所 — 原材料の号(同第2号)だけ。区域内産の麦芽・ホップの調達量を先に確かめる
規模で、通信販売できるかが変わる
ふるさと納税と並行して自社ECでも売る計画があるなら、通信販売酒類小売業免許で扱える範囲に入るかが効きます。国税庁の手引は、扱える国産酒類を次のように定めています(通信販売酒類小売業免許申請の手引)。
- 前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が、全て3,000キロリットル未満である酒類製造者(特定製造者)が製造、販売する酒類
- 地方の特産品等(製造委託者が所在する地方の特産品等に限る)を原料として、特定製造者以外の製造者に製造委託する酒類で、一会計年度の製造委託数量の合計が3,000キロリットル未満のもの
2つ目は委託醸造そのものの条項で、「製造委託者が所在する地方の特産品等」という限定が付いています。地場産品基準と発想が近く、原料の産地を押さえる意味がここでも出てきます。
費用の目安・期間・最低ロットは、この3点で動く
金額は案件ごとに幅があるので、この記事では相場を書きません。幅を作っている要素だけを置きます。
- 費用 — 醸造費(酒税を含む)/ラベルのデザインと印刷/缶・瓶・カートンなどの資材/保管と配送/EC構築。返礼品として自治体に納める場合、送料が3割の枠ではなく募集費用の枠に入るので、自治体側の予算の見え方が変わります
- 期間 — レシピ試作、ラベル制作と表示確認、醸造、充填、検査の順。自分たちの都合で動かせないのは醸造所の仕込み枠です。ふるさと納税では、これに指定の申出や返礼品の書類提出の時期が重なります(→ビールOEMの納期はどれくらい?)
- 最低ロット — 一度の仕込みで作る量は醸造所ごとに決まっていて、それを下回る発注はできません。区域内産の麦芽やホップを使う場合は、原料側の年間の収穫量が上限になることもあります
製造・販売を醸造所の花園クラフトが担うなら、依頼する側に免許は要らない
TAP TO BREW は、株式会社TSURATSURA が運営するクラフトビールのOEM・ブランド構築サービスです。連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造・販売を担うため、できあがったビールを 花園クラフトが売主として販売するところまでは、依頼する側が免許を取らずに進められます(TSURATSURA サービス)。
どの号で通すかは、醸造所の所在地と原材料の産地が決まらないと判定できません。逆に言えば、そこを決める打ち合わせと同じ場で見通しが立ちます。費用・期間・最低ロットの3点も、初回のヒアリング後に見積としてまとめてお渡しします。
自治体名と、使いたい地元の原料の候補だけ決まっていれば、どの号で通す設計になるかは初回で整理できます。
出典
- e-Gov 地方税法 第37条の2(2026年7月31日施行版および2026年10月1日施行版。2026年9月5日確認)
- 総務省平成31年総務省告示第179号(制定時)/令和8年10月1日適用版/令和7年6月24日 総務省告示第220号(同)
- 総務省「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A」(令和7年6月24日 総税市第73号)(同)
- 総務省「告示179号に基づき総務大臣の定めるものについて」(令和8年4月1日 総税市第30号)(同)
- 総務省「ふるさと納税の指定基準等について」(令和7年5月13日 資料1)/「ふるさと納税の指定基準の改正等について」(令和7年6月24日)(同)
- 国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」PDF(同)
- e-Gov 食品表示法 第2条(同)