ビールの色は何で決まるのか|麦芽の乾かし方と、濃い色=重い味ではない理由
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ビールの色は何で決まるのか|麦芽の乾かし方と、濃い色=重い味ではない理由

2026.09.08 13min read Written by TAP TO BREW 編集部

ビールの色は、何で決まるのか

麦芽の色の濃さで、ほぼ決まります。 独立行政法人 酒類総合研究所の情報誌「お酒のはなし」ビール特集は、「麦芽の色の濃さで、ビールの色がほぼ決まります。淡色の麦芽で造ったビールは淡い色となり、濃色の麦芽を混ぜるとビールの色は濃くなっていきます」と書いています(お酒のはなし 特集:ビール PDF 6ページ目「ビールの科学 色と麦芽」、2026年9月7日にPDFを取得して確認)。

色をつくっているのはメラノイジン

同じ資料は、ビールの色を濃くしている物質をメラノイジンとし、「糖とアミノ酸に熱が加わるとできる褐色物質の総称」と説明しています。麦芽を高温で焙焦するのは、このメラノイジンの形成を促すためです(同6ページ目)。

色は後から染めているのではなく、原料に熱を加えた結果として出てきます。 だから色と香りは同じ工程から生まれ、切り離せません。

麦芽以外にも、色を動かす要因はある

同じ資料は、メラノイジンについて「麦汁を煮沸する時にできるほか、石灰分の多い硬水でビールを造るとできやすくなります」とも書いています(同6ページ目)。麦芽の配合図でも、仕込み水の硬度と麦汁の煮沸条件が色に効く要因として並べられています。

水の硬度の話はこのジャーナルで別に扱っているので、ここでは麦芽の側を見ます。

麦芽は、どうやって色がついた状態になるのか

大麦を水に浸し、発芽させ、乾かす。この最後の「乾かす」工程の温度が、色と香りを決めます。

酒類総合研究所は麦芽造りを5つの工程で説明しています(同PDF 2ページ目「造り方 原料」、2026年9月7日確認)。

工程 何をするか 資料に出ている数値
精選 夾雑物を取り除き、粒の大きさを揃える —
浸麦 大麦に水を吸わせる 1〜2日で水分含量40〜45%
発芽 芽と根を伸ばし、酵素を働かせる 浸麦完了から4〜6日、15℃前後
焙燥・焙焦 乾燥させて発芽を止め、色と香りをつける まず50℃程度、その後80℃程度の熱風
除根 冷却後に根を取り除く —

最初は50℃、そのあと80℃

焙燥のポイントを、資料はこう書いています。「緑麦芽に含まれる酵素の働きが失われないよう、50℃程の低温でできるだけ速やかに乾かす」。そのうえで「麦芽独特の色や香りの成分をつくるため、80℃程度の熱風を送ります(焙焦)」。

低温で乾かす前半が酵素を守る工程、高温を当てる後半が色と香りをつくる工程です。 一般的な淡色麦芽は、ここで止まります。

根を残すと、狙っていない着色が入る

除根について、資料は「根が残っていると、ビールにおいて不快なえぐ味や着色の原因となります」としています。色は麦芽の配合で狙って付けるもので、工程の残りものから入ると欠点として扱われる、ということです。

ベースモルトとスペシャルティモルトは、何が違うのか

糖化に必要な酵素を持っているのは、淡色のベースモルトの側だけです。 濃色の麦芽は、高温で焙焦する過程で酵素の力をほとんど失っています。

なお「ベースモルト」「スペシャルティモルト」は業界で使われる通称で、酒類総合研究所の資料は淡色麦芽・カラメル麦芽・ロースト麦芽(チョコレート麦芽・黒麦芽)という呼び方をしています。以下は資料の言い方に合わせます。

淡色麦芽は、酵素を保存したまま乾かしている

焙燥について資料はこう書いています。「酵素については、その働きは止まりますが、酵素そのものは十分に保存されるため、麦汁造りで再度機能することができます」(同2ページ目)。仕込みのときに、粉砕した麦芽に水を加えて40〜70℃後半まで段階的に上げると、この酵素がでんぷんを糖に変えます(同4ページ目)。

カラメル麦芽は135〜180℃、ロースト麦芽は200℃超

濃色の麦芽は、作り方が2通りに分かれます(同6ページ目)。

  • カラメル麦芽 — 緑麦芽を乾燥させないままロースター等で135〜180℃程度で焙焦したもの。水分が多いまま高温にする過程で酵素が働き、でんぷんが分解されて糖が増え、カラメル化が進む
  • ロースト麦芽 — 焙燥した淡色麦芽をロースター等で200℃を超える高温で加熱(焙焦)したもの。焙焦の条件によって「チョコレート麦芽」「黒麦芽」などに分かれる

濃色麦芽だけでは、ビールにならない

資料は続けてこう書いています。「これらの特殊な麦芽は、高温で焙焦して造られるのでビール造りに大切な酵素の力はほとんど残っていません。その代わりに、焦げた砂糖、香ばしいトースト、甘いチョコレートなどを連想させる独特の香味と濃い色をもっています」。

だから濃色麦芽は、淡色麦芽を置き換えるのではなく、足す使い方になります。 資料も「黒ビールの深みのある色や香味は、ベースとなる淡色麦芽にカラメル麦芽やチョコレート麦芽、黒麦芽などを混ぜることで生まれます」としています。

色の単位、SRM と EBC はどう違うのか

測る系統が違うだけで、EBC の値は SRM のおよそ2倍です。

SRM は米国、EBC はそれ以外

BJCP(Beer Judge Certification Program)の2021年スタイルガイドラインは、色を「米国醸造化学者協会(ASBC)の Standard Reference Method(SRM)」で表すとしたうえで、「米国外で European Brewing Convention(EBC) の色測定法を使う人は、EBC の値は同等の SRM 値のおよそ2倍であることに注意してほしい」と書いています(2021 BJCP Style Guidelines PDF 冒頭の Vital Statistics 解説、2026年9月7日にPDFを取得して確認)。

実際に2倍で併記されている

Brewers Association の2026年版スタイルガイドラインは、各スタイルの色を「Color SRM (EBC)」の形で両方書いています。印刷されている数字は、SRM のレンジをちょうど2倍したものです(例:5-12 に対して 10-24 EBC、2.5-5 に対して 5-10 EBC、11-18 に対して 22-36 EBC。2026 BA Beer Style Guidelines PDF 本文を2026年9月7日に取得して確認)。

数値を使わずに色を語る資料もあります。 酒類総合研究所の「ビールの主な種類と特徴」は、SRM も EBC も出さず、淡色・中濃色・濃色の3区分でスタイルを並べています(同PDF 5ページ目)。数値が書かれていないラベルのほうが日本では多いので、後半ではスタイル名から見当をつける方法を扱います。

数値と見た目は一致しないことがある

Brewers Association は色レンジの説明にこう注記しています。「これらの数値は、明るさ・暗さや色合いについての我々の視覚的な知覚と常に一致するとは限らない。迷ったときは色の記述のほうを優先する」(同PDF ii ページ、同日確認)。同じページの対応表は次のとおりです。

色の記述(BA 2026) SRM
Very light 1〜1.5
Straw 2〜3
Pale 4
Gold 5〜6
Light amber 7
Amber 8
Medium amber 9
Copper/garnet 10〜12
Light brown 13〜15
Brown / Reddish brown / chestnut brown 16〜17
Dark brown 18〜24
Very dark 25〜39
Black 40以上

色が濃いビールは、味も重いのか

成り立ちません。 色の数値と、アルコール分や初期比重(発酵前の麦汁の比重。糖の多さの目安)は、スタイルごとに別々に動きます。BJCP 2021 ガイドラインの数値を並べると、はっきり分かれます(各スタイルのページを2026年9月7日に取得して確認)。

スタイル(BJCP 2021) 色(SRM) アルコール分 初期比重(OG)
ジャーマン・ピルス 2〜4 4.4〜5.2% 1.044〜1.050
チェコ・プレミアム・ペールラガー 3.5〜6 4.2〜5.8% 1.044〜1.060
ベルジャン・トリペル 4.5〜7 7.5〜9.5% 1.075〜1.085
アメリカン・バーレーワイン 9〜18 8〜12% 1.080〜1.120
シュヴァルツビア 19〜30 4.4〜5.4% 1.046〜1.052
アイリッシュ・スタウト 25〜40 3.8〜5% 1.036〜1.044
アメリカン・スタウト 30〜40 5〜7% 1.050〜1.075

黒くて、アルコール分が低いもの

アイリッシュ・スタウトは SRM 25〜40 と表の中で最も濃い部類ですが、アルコール分は3.8〜5%、初期比重は1.036〜1.044 で最も低い部類です。 口当たりについて BJCP は「ミディアムライトからミディアムフルのボディ」「高いホップの苦味と相当量の黒い穀物を使っているわりに、このビールは驚くほど滑らかである」と書いています(BJCP 15B Irish Stout)。

シュヴァルツビアはさらに直接的で、「ミディアムライトからミディアムのボディ」「濃色のロースト麦芽を使っているにもかかわらず、荒さや収斂味は無い」とされています(BJCP 8B Schwarzbier)。

淡くて、アルコール分が高いもの

ベルジャン・トリペルは SRM 4.5〜7 で表の中でも淡い側ですが、アルコール分は7.5〜9.5%。 BJCP は口当たりを「ミディアムライトからミディアムのボディで、相当な比重から想像されるより軽い」「重くあるべきではない」と書いています(BJCP 26C Belgian Tripel)。

アメリカン・バーレーワインは SRM 9〜18、BA の対応表では「medium amber」から「dark brown」にかかる範囲ですが、アルコール分は8〜12%です(BJCP 22C American Barleywine)。

同じスタイルの中でも、色は振れる

ドッペルボックの色レンジは SRM 6〜25。同じスタイル名のまま、金色から濃い茶色まで幅があります。 BJCP は「濃色版は銅色から濃い茶色」「淡色版は深い金色からライトアンバー」と両方を記述し、アルコール分はどちらも7〜10%としています(BJCP 9A Doppelbock)。

色は、強さの指標ではありません。 濃色麦芽が持ち込むのはロースト由来の香り(コーヒーやチョコレートを連想させるもの)で、口当たりの重さは初期比重や仕上がりの比重、炭酸の強さなど別の要素で決まります。

ラベルとスタイル名から、色はどこまで読めるのか

スタイル名が書いてあれば、色のだいたいの範囲は読めます。ただし読めるのは色までで、口当たりまでは読めません。

スタイル名は色のレンジを持っている

上の表のとおり、ピルスナーなら SRM 2〜4、スタウトなら 25〜40 と、スタイル名は色の範囲を持っています。缶に「ピルスナー」「IPA」「スタウト」と書いてあれば、注ぐ前におおよその見当がつきます。代表的なスタイルの整理はクラフトビールの種類一覧にまとめてあります。

「黒」と書いてあっても、重いとは限らない

アイリッシュ・スタウトとシュヴァルツビアの数値が示すとおりです。色の記述から飲みごたえを推測すると外れます。 手がかりになるのはアルコール分の表示で、これは缶やラベルに出ています。

「濃い色にしたい」とオリジナルビールを頼むと、何が動くか

動くのは主に麦芽の配合です。 淡色麦芽をベースに、カラメル麦芽・チョコレート麦芽・黒麦芽などをどれだけ混ぜるかで色が決まります(お酒のはなし 特集:ビール PDF 6ページ目の「麦芽の配合とビールのタイプ」図)。麦芽以外では、仕込み水の硬度と麦汁の煮沸条件も同じ図に要因として並んでいます。

法令の側では、色に関わる線が2本すでに引かれています。

  • 着色料として使えるのはカラメルだけ。 酒税法施行令第6条第1項第1号が「財務省令で定める苦味料若しくは着色料」と書き、その中身を酒税法施行規則第4条第1項が「カラメルとする」と1つだけ定めています(e-Gov 酒税法施行令/酒税法施行規則、2026年9月7日に旧APIで条文を取得して確認)
  • 果実や香味料で色や風味を足すなら、麦芽の100分の5という枠がかかる。 よく「副原料は麦芽の5%以内」と一括りに言われますが、施行令第6条第2項は枠の対象を「前項第二号に掲げる物品」(果実・コリアンダーその他の香味料)に限定しています。第1号の麦・米・でん粉・糖類・カラメルは、この5%枠の外です(効いてくるのは麦芽比率50%以上という別の線)

この2本は、レシピの分量を詰める前に効いてきます。 OEMで人気の定番スタイルはクラフトビールの種類と選び方に、相談の入口はTAP TO BREW のサービスページにあります。

次の1本を選ぶなら

色の違いを確かめるなら、色だけを変えて他を揃えるのが分かりやすい方法です。同じ醸造所の淡色のものと濃色のものを、同じ温度・同じグラスで比べます。スタイルごとの入り口は初心者が最初に飲むべき5つのスタイル、料理と合わせるときの考え方はスタイル別のペアリングにあります。用語の整理はクラフトビールとは?です。

この記事で確かめた一次情報

よくある質問

ビールの色は何で決まりますか?

麦芽の色の濃さでほぼ決まります。酒類総合研究所の情報誌「お酒のはなし」ビール特集は「麦芽の色の濃さで、ビールの色がほぼ決まります」と書いています。色のもとになっているのは、糖とアミノ酸に熱が加わってできる褐色物質のメラノイジンです。メラノイジンは麦汁の煮沸中にもでき、石灰分の多い硬水でも生成しやすくなるため、仕込み水の硬度や煮沸条件も色に影響します。

色が濃いビールは味も重いのですか?

色の濃さと飲みごたえは別々に決まります。BJCP 2021ガイドラインでは、アイリッシュ・スタウトは色がSRM 25〜40と濃い一方でアルコール分は3.8〜5%、初期比重は1.036〜1.044と低い部類です。逆にベルジャン・トリペルは色がSRM 4.5〜7と淡いのにアルコール分は7.5〜9.5%あります。ドッペルボックのように、同じスタイル名のまま色がSRM 6〜25まで振れるものもあります。

色の単位のSRMとEBCはどう違いますか?

SRMは米国醸造化学者協会(ASBC)のStandard Reference Method、EBCはEuropean Brewing Conventionの色測定法です。BJCP 2021スタイルガイドラインは、EBCの値は同等のSRM値のおよそ2倍であるとしています。Brewers Associationの2026年版ガイドラインは各スタイルの色をSRMとEBCで併記しており、印刷されている数字はSRMのレンジをちょうど2倍したものになっています。

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TAP TO BREW Editorial
クラフトビールの最新トレンド、ブランド戦略、醸造の裏側をお届けするTAP TO BREWの編集チーム。株式会社TSURATSURA運営。

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