缶か瓶かは、味の好みではなく「どう届けるか」で決まる
中身の規格は容器では変わりません。変わるのは、①光を通すか ②送料の区分 ③ラベルの義務表示を置ける面 ④識別マークの表示義務、この4つだけです。
だから「かっこいいのはどちらか」から入ると決まりません。どこで売り、どうやって手元まで運ぶのかを先に決めると、4つのうち3つが自動的に片付きます。
先に答えを出しておく3つの問い
- 常温の棚に置くのか、冷蔵で運ぶのか — 冷蔵で送るなら、後述のとおり運送側に重さの天井があります
- 蛍光灯や日光の当たる場所に置かれるのか — ここが遮光の話に直結します
- 1箱に何本詰めるのか — 送料は本数ではなく箱のサイズと重さで決まります
品目もアルコール分も、容器では変わらない
「缶にすると発泡酒になる」といったことはありません。品目を分けるのは原料と麦芽比率であって、容器ではありません。税額も容器では動きません(2026年10月の酒税改正で動くのは税率のほうです)。
容器の選択は、中身の設計とは独立に決められます。 逆に言えば、レシピが固まる前でも容器の議論は進められます。
光を通すかどうかが、あとから直せない唯一の差
缶は光を通しません。瓶は通します。しかも瓶は色によって透過度が違うので、瓶を選んだ時点で「色」が仕様項目になります。
独立行政法人 酒類総合研究所の情報誌「お酒のはなし」ビール号が、この点をはっきり書いています。「ビールは光にとても弱く、日光にさらされると日光臭という動物の体臭を連想させる不快なにおいが発生します」「缶ビールは容器が光を通さないためこの影響はありませんが、瓶ビールは光があたらないよう十分注意する必要があります」(酒類総合研究所 情報誌「お酒のはなし」ビール/2026年9月5日取得)。
瓶なら、色は好みではなく仕様
同じ資料が色の差にも触れています。「ビール瓶の色といえば茶色が多く見られますが、緑色や無色の瓶もあります。瓶の色によって光の透過度が異なり、茶色に比べて緑色や無色の瓶は光をよく通すため、十分に注意が必要です」(前掲)。
透明瓶や緑瓶を選ぶなら、外箱・個装・売り場の照明のどれかで光を止める設計が要ります。 中身が見えるデザインは、その分だけ売り方の制約を買っています。ここを「デザインの好み」の欄で決めてしまうと、あとから箱を追加することになります。
光以外の劣化条件は、缶でも同じ
缶を選んでも免除されないものがあります。前掲資料は温度についても「極端に温度が上がらない場所での保管をお勧めします」とし、凍結については「凍ってしまうと、ビールは濁り、香味も劣化します。さらに、凍結によって容積が膨張し、容器が破損することもあります」と書いています。
缶が有利なのは光の一点だけ、と理解しておくと保管条件の詰めを飛ばさずに済みます。
送料は「三辺合計」と「重さ」の大きい方で決まる
箱を小さくしても、重ければ上のサイズ区分に落ちます。ヤマト運輸は「縦・横・高さの3辺計の大きさと実重量を比較し、大きい方のサイズの扱いになります」と明記しています。
公開されているサイズ表は次のとおりです(ヤマト運輸 宅急便のサイズについて/2026年9月5日取得)。
| サイズ | 荷物の大きさ | 重さ |
|---|---|---|
| 60サイズ | 60cm以内 | 2kgまで |
| 80サイズ | 80cm以内 | 5kgまで |
| 100サイズ | 100cm以内 | 10kgまで |
| 120サイズ | 120cm以内 | 15kgまで |
| 140サイズ | 140cm以内 | 20kgまで |
| 160サイズ | 160cm以内 | 25kgまで |
| 180サイズ | 180cm以内 | 30kgまで |
| 200サイズ | 200cm以内 | 30kgまで |
同社は宅急便全体の上限を「縦・横・高さの合計が200cm以内、かつ重さが30kgまで」としています(ヤマト運輸 宅急便/2026年9月5日取得。同ページに2025年10月1日の運賃改定の告知あり)。
冷蔵で送るなら、120サイズ・15kgが天井
クール宅急便には別の制限がかかります。「輸送上の品質劣化を防ぐため、120サイズ(大きさ120cmまたは重さ15kgまで)を超えるお荷物はお取り扱いしておりません」(ヤマト運輸 クール宅急便/2026年9月5日取得)。
同ページによれば、冷蔵タイプの設定温度は0〜10℃、冷凍タイプは-15℃で、宅急便運賃に加えてオプション料金が60サイズ275円・80サイズ330円・100サイズ440円・120サイズ715円(いずれも税込)かかります。予冷も条件です——「予冷をしていない場合、保冷温度が上昇し、他のお客さまのお荷物に影響を与えるおそれがあるため、お荷物をお受けできません」と書かれています。
15kgという天井は、瓶の企画で先に当たります。 中身だけを比重1として概算しても、350ml×24本で約8.4kg、330ml×24本で約7.9kg。ここに容器・緩衝材・外箱が乗ります。缶より重い容器を選ぶと、同じ本数でも1区分上に落ちるか、天井に届きます。
空容器1本の質量は、発注前に必ずもらう
容器そのものの重さは、缶メーカー・製壜メーカーの仕様で決まります。 同じ350mlでも肉厚も形状も違うので、「缶は◯g、瓶は◯g」という一般値を持ってきても計算に使えません。
だから見積の前に、醸造所か容器の供給元から空容器1本の質量と外箱に詰めたときの総重量を数字でもらいます。この2つが手元にあれば、上の表を突き合わせるだけで送料の区分が確定します。先に容器を決めてから送料を計算すると、順番が逆になります。
義務表示を置ける面は、瓶が3か所、缶が2か所
酒類の品目を表示する場所は法令解釈で決まっていて、瓶詰品は「胴部、肩部又は口頭部」、缶詰品は「胴部又は頭部」、樽詰品は「胴部又は鏡部」です。缶には肩がないぶん、逃がせる面が1つ少なくなります。
出典は国税庁の酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)(2026年9月5日取得)です。同資料は「主たる商標を表示する側の下記の場所に表示しなければなりません」とし、陳列時にも「その酒類の品目が消費者に容易に認識できる場所に表示しなければならない」と付け加えています。ラベル全体の義務項目はオリジナルビールのラベル表示義務にまとめてあります。
一括表示にすれば、正面から逃がせる(底は不可)
同じ資料に逃げ道も書かれています。「ただし、他の表示義務事項等と一括して表示する場合には、主たる商標を表示する側以外の場所(底部を除く。)に表示しても差し支えありません」。
缶で正面のデザインを大きく使いたいなら、この一括表示の選択がほぼ前提になります。 ただし底面は使えないので、缶では実質的に胴の裏側へ回すことになります。
文字の大きさを決めるのは、容器の種類ではなく内容量と面積
ここは缶と瓶で分かれません。同資料によれば、食品表示基準の義務表示事項は原則としてJIS Z8305(1962)の8ポイント以上、「表示可能面積がおおむね150平方センチメートル以下のもの」などは5.5ポイント以上に落とせます。20歳未満の飲酒防止に関する表示は6ポイント以上、「内容量が360mL以下の容器にあっては5.5ポイント」以上とされています。
つまり350ml缶と330ml瓶は同じ扱いで、500ml缶や大瓶になると1段階上がります。 容量を変えると文字が大きくなり、レイアウトが動きます。デザインの実務はビールラベルのデザイン作成ガイドを併せて見てください。
缶には識別マークの表示義務がある。ガラスびんには無い
酒類を充填した缶は資源有効利用促進法の指定表示製品で、材質の識別マークを付ける義務があります。ガラスびんは同法の義務対象ではなく、業界団体の自主表示です。
根拠は資源の有効な利用の促進に関する法律施行令の別表第五(2026年9月5日にe-Govの旧APIで原文確認)。二の項が「鋼製又はアルミニウム製の缶(内容積が七リットル未満のものに限る。)であって、飲料(酒類を除く。)が充塡されたもの」、三の項が「缶であって、酒類が充塡されたもの」を挙げ、缶に酒類を充填する事業者を義務の対象にしています。ガラスびんはこの表に出てきません。
日本容器包装リサイクル協会も「飲料用のスチール缶やアルミ缶と食料品・清涼飲料・酒類のPETボトル、プラスチック製容器包装、紙製容器包装には、識別マークをつける義務があります」「小規模事業者も、識別マーク表示の義務を負います」と整理しています(容リ法と識別表示の関係/2026年9月5日取得)。ガラスびんのリサイクル推進シンボルマークは「資源有効利用促進法において、識別表示が義務化されず、事業者団体において自主的に表示を行っているもの」です(環境省 環境ラベル等データベース/2026年9月5日取得)。
マークの寸法まで決まっている。無地の缶でも逃げられない
食品容器環境美化協会のガイドラインによれば、2020年4月1日から缶胴の外径による区分がなくなり、最小サイズはアルミが一辺6mm以上、スチールが外径6mm以上、文字は4ポイント以上で一律です。「紙マークやプラマークとは表示方法が異なり、業務用容器や無地の容器であっても表示の義務があります」とも明記されています(識別表示マーク(アルミ・スチール)使用ガイドライン/2026年9月5日取得)。
缶のデザインには、6mm角の要素が1つ必ず入るということです。ミニマルな面構成を狙うほど、この置き場所が最後まで残ります。瓶にはこの制約がありません。
罰則の段まである
義務を負う指定表示事業者が表示をしない場合、「資源有効利用促進法の規定に基づき、国による『勧告』、『公表』、『命令』を経て『罰則』が適用されます」(前掲 日本容器包装リサイクル協会)。ラベル入稿の直前に気づく類の項目ではありません。
回収率の数字は、定義が違うので並べて比べない
参考として公表値を挙げておきます。飲料用アルミ缶の2025年度リサイクル率は94.7%、CAN to CAN率は73.3%(アルミ缶リサイクル協会 リサイクル率/2026年9月5日取得)。ガラスびんの2025年のリサイクル率は78.3%、びんtoびん率は79.1%(ガラスびん3R促進協議会 びんtoびん率・リサイクル率の推移/2026年9月5日取得。同資料は暫定データと注記)。
この2つを引き算してはいけません。 アルミ側は「国内で消費されたアルミ缶のうち、国内で再生利用されたUBCと輸出されたUBCを含めたものの割合」、ガラス側は「再商品化量総計÷国内びん出荷量」と、分母も分子も違う定義です(各出典の注記による)。環境訴求に使うなら、数字ではなく定義ごと引用するのが安全です。
決める順番と、判断に必要な3つ
容器から決めず、売り場・配送・デザイン制約の順に潰すと、缶か瓶かは最後に1つ残ります。
- 売り場を決める — EC中心か、店頭か、イベントか
- 配送温度を決める — 冷蔵で送るなら120サイズ・15kgの天井から逆算する
- 1箱の構成を決める — 本数と外箱の三辺合計・総重量を出す
- 光の条件を確認する — 透明瓶・緑瓶を選ぶなら、光を止める手当てを同時に設計する
- ラベル面を割り付ける — 義務表示の一括表示位置と、缶なら6mm角の識別マークの置き場所
- 見積を取り直す — 容器が変われば送料区分も箱代も変わる
費用の目安・期間・最低ロット
TAP TO BREW の場合の数字です(/pages/tap-to-brew に公開しているもの)。
| 最低ロット | 48本(350ml) |
|---|---|
| 初期制作費 | 50〜70万円(うち OEM醸造費 20〜25万円) |
| 期間 | 初回相談からリリースまで概ね2〜3ヶ月 |
容器の選択はこの期間の前半で固めます。 ラベルの版下は容器が決まらないと起こせないので、ここが遅れると全体が後ろへずれます。工程の組み方はビールOEMの納期はどれくらい?を参照してください。
なお、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります。 依頼側が免許を取らずにEC販売まで進められるのはこのためです。
容器は、売り方が決まっていれば1回の打ち合わせで決まります。逆に、売り方が決まっていないと何度やっても決まりません。 販路と配送の条件を持ってきてもらえれば、容器・箱・送料区分まで一度に詰められます。 → 無料相談はこちら