缶に「350ml」と書いたら、中身はきっちり350mlでなければいけないのか
きっちりでなくて構いません。ただし、ずれてよい幅が決まっているのは「足りない側」だけで、350ml缶なら不足は7mlまでです。
根拠は計量法(平成4年法律第51号)第12条第1項です。特定商品の販売の事業を行う者は、その内容量を法定計量単位で示して販売するとき、政令で定める誤差(量目公差)を超えないように計量しなければならないと定めています。その量目公差を決めているのが「特定商品の販売に係る計量に関する政令」(平成5年政令第249号)第3条です。
公差が効くのは不足側だけ
政令第3条は、量目公差を定める場面を 「表示量が当該特定商品の真実の特定物象量を超える場合」 と限定しています。表示より中身が少ない側の話だけを書いている条文です。
では多い分は無制限かというと、そうではありません。 計量法第10条第1項が、法定計量単位で取引の計量をする者に正確な計量の努力義務を課しています。経済産業省の商品量目制度Q&A集は、過量に法定の公差は無いとしたうえで、著しい過量は第10条に基づく指導・勧告の対象となり得るとし、目安として表示量300ml超1,000ml以下で30ml、1,000ml超で3%を示しています(経済産業省 計量法における商品量目制度の概要/商品量目制度Q&A集 全般-9)。
350ml・500ml で、何mlまで
ビールに適用されるのは政令別表第二 表(三)です(理由は次の見出しで書きます)。表の区分をそのまま置きます。
| 表示量 | 量目公差(不足側) |
|---|---|
| 5ml以上 50ml以下 | 4% |
| 50ml超 100ml以下 | 2ml |
| 100ml超 500ml以下 | 2% |
| 500ml超 1L以下 | 10ml |
| 1L超 25L以下 | 1% |
表(三)自体は25リットルまで区分を持っていますが、ビールに公差が適用される上限は5リットルです(別表第一 第四欄)。5リットルを超える樽の扱いは後ろで別に書きます。
ビールで実際に使う容量に当てはめると、こうなります。
| 表示量 | 公差 | 下限(この量を下回ると違反) |
|---|---|---|
| 330ml | 6.6ml | 323.4ml |
| 350ml | 7ml | 343ml |
| 500ml | 10ml | 490ml |
| 633ml(大瓶) | 10ml | 623ml |
| 1L | 10ml | 990ml |
パーセントは表示量に対する百分率と別表第二の備考が定めています。実量ではなく、ラベルに書いた数字を基準に計算します。
瓶には別ルートがある — 特殊容器
政令第3条には長い括弧書きが入っていて、経済産業大臣が指定した製造者の作った型式の「特殊容器」に、規定の高さまで満たして体積を示して売る場合は、量目公差の対象から外れます。 酒類は計量法施行令(平成5年政令第329号)第8条第11号にはっきり挙がっており、この制度を使えます。
外れた代わりに何がかかるかというと、計量法第17条第2項です。指定の表示が付いた特殊容器に、定められた高さまで満たしていない商品は販売できません。 公差で管理するのではなく、瓶の形そのもので容量を保証する仕組みです。
ただし特殊容器は「透明又は半透明の容器」に限られます(第17条第1項)。缶は対象外です。缶で作るなら、前の表の公差で管理することになります。
なぜ内容量を書かなければいけないのか — 義務は3本ある
ビールの缶に内容量を書く義務は、計量法・酒類業組合法・食品表示法の3つから同時に来ています。1つを満たせば済む構造ではありません。
計量法 — 密封した特定商品だから
政令別表第一 第23号(二)が「飲料(医薬用のものを除く。)」のうちアルコールを含むものを特定商品として挙げています。この欄が同時に3つを決めています。
- 特定物象量は「体積」(アルコールを含まない飲料は「質量又は体積」だが、含むものは体積だけ)
- 適用する公差の表は表(三)
- 公差を適用する上限は5リットル
そして計量法第13条第1項が、政令で定める特定商品を密封して売る者に、量目公差を超えないよう計量したうえで容器に表記することを義務づけています。政令第5条第1号が対象を「別表第一…第22号から第28号まで」としており、第23号のビールはここに入ります。
「密封」は条文に定義があります。 容器・包装または封紙を破棄しなければ量を増減できない状態のことです(第13条第1項の括弧書き)。前掲Q&A集(全般-20)は缶詰を密封の例に挙げているので、缶ビールは確実にここに当たります。
酒類業組合法 — 移出するときの表示義務
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の5と、同法施行令第8条の3第1項が、酒類製造業者に対し、製造場から移出する酒類の容器の見やすい箇所への表示を義務づけています。第1項が挙げる5項目のうち、第1号が「内容量」です。残りは品目・アルコール分・雑酒の税率区分・その他の発泡性酒類である旨で、氏名または名称と製造場の所在地が柱書に書かれています。
内容量は、品目やアルコール分と同じ枠の中にあります。 ラベルのどこに何を置くかを考えるとき、この5項目は一体で動くと考えてください。
食品表示基準 — 省略できる項目に入っていない
食品表示基準の義務表示事項のうち、酒類が省略できるのは保存の方法・消費期限または賞味期限・栄養成分の量および熱量の3つで、内容量は省略できる側に入っていません(国税庁 酒類の表示に関する説明事項(各品目共通))。同じ資料が、義務表示事項の文字は8ポイント以上(表示可能面積がおおむね150平方センチメートル以下なら5.5ポイント以上)と示しています。
ラベルに載る項目全体の並べ方はオリジナルビールのラベル表示義務にまとめています。
「ml」と「L」、どちらで書くのか
どちらでも構いません。ただし使える表記は列挙されていて、書き方にも決まりがあります。
使える単位表記は7通り
国税庁の前掲資料は、内容量の単位について 「L」「ml」「mL」「ℓ」「mℓ」「リットル」「ミリリットル」 のいずれかで表示しなければならない、としています(法令解釈通達86の5 1(5))。計量法側の記号の正は計量単位規則で、体積のリットルの記号は「l」または「L」です(別表第2)。
計量法側にはもう1つ制約があります。「特定商品の販売に係る計量に関する省令」(平成5年通商産業省令第37号)第1条第1項第3号が、特定物象量を表す数値が1万以上にならない法定計量単位を使うことと定めています。350ml缶は「350ml」でも「0.35L」でも通りますが、19L樽を「19000ml」と書くことはできません。
「約350ml」「標準350ml」は書けない
前掲Q&A集(全般-30)が明確に否定しています。特定商品の特定物象量には量目公差の遵守義務がかかるので、「約○」「標準○」のような曖昧な表示はできません。 括弧の内か外か、総量か1個あたりかも問いません。さらに、容器や包装への表記に限らず、立て札・下げ札・カタログへの表示も同じ扱いです。ECの商品ページで容量を書くときも同じ線が引かれます。
「○ml以上」「○ml〜○ml」のような幅の表示も、公差の基準となる表示量が特定できないため、取引に使わないよう求められています。
「内容量」の文字とセットで、アラビア数字で
国税庁の前掲資料は、内容量の表示は容器に充填した容量を「内容量」の文字の後に続けて表示すること、書体は原則として楷書体またはゴシック体、数字は原則としてアラビア数字で表示することを示しています。
なお、主たる商標を表示する側に品目と併せて内容量を置く場合は、裏面の一括表示欄での重複表示を省略できます(食品表示基準 別記様式一 備考8)。表面のデザインを詰める前に、内容量を表に出すか裏に回すかを決めておくと、版下の作り直しが1回減ります。 デザインの進め方はビールラベルのデザイン作成ガイドにあります。
誰が量目の責任を負うのか — OEMで主語を取り違えない
計量法の義務は「販売の事業を行う者」にかかります。詰めたのが委託先の醸造所でも、売る側が外れる構造にはなっていません。
「販売の事業を行う者」は最終小売業者に限らない
計量法第12条・第13条の主語は、条文上「特定商品の販売の事業を行う者」です。前掲Q&A集(全般-29)は、これを最終消費者に売る者に限定せず、製造事業者(詰込者)および卸売事業者を含め、商品の販売を行うすべての者が対象となり得ると説明しています。
TAP TO BREW の場合、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります(TSURATSURA サービス)。つまり量目については、詰めた醸造所と、売主である TSURATSURA の双方が計量法の名宛人です。依頼する側が販売主体にならない設計だから、量目の責任も依頼側には移らない — この対応関係を崩さずに読んでください。
缶に「製造者」として出る名前は醸造所のもの
一方、酒類業組合法側の主語は違います。施行令第8条の3第1項の義務者は酒類製造業者で、表示するのは自分の氏名または名称と製造場の所在地です。第2項は、詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者に同じ内容を課しています。
同じ缶の上に、根拠法の違う「名前」が並びます。 委託製造でラベルに誰の名前がどう載るかはファントムブリュワリーとは何かで分解しています。
計量法にも「表記する者」の氏名と住所を書く義務がある
見落とされやすいのが計量法第13条第3項です。内容量の表記には、表記する者の氏名または名称および住所を付記しなければなりません。
前掲Q&A集(全般-32)は、これを製造工場のものにするか本社のものにするかについて、表記する内容量表示に責任を持つ者であればどちらでも差し支えないとしています。ただし本社の所在地を書く場合は、製造を行った工場・事業所の表示を食品表示基準等に基づいて別に付記するよう求めています。
守られなかったときに何が起きるか
いきなり罰金ではありません。計量法第15条が勧告 → 従わなければ公表 → 正当な理由なく措置をとらなければ命令という順序を定めています。この措置命令に違反したときに、第173条第2号で50万円以下の罰金です。
段階があるからといって軽い話ではありません。都道府県知事または特定市町村の長による立入検査の対象で、公表の段階で商品名が外に出ます。
樽・量り売り・グラウラーはどうなるのか
樽は密封に当たり表記義務がかかりますが、5リットルを超えると量目公差の数字が消えます。店頭でグラウラーに詰める行為は、そもそも密封ではありません。
樽 — 表記義務は残り、公差の定めだけが無くなる
前掲Q&A集(全般-20)は、密封の例に樽詰め(釘付け、のり付け、打ち込み、ねじ込み蓋式のもの等)を挙げています。表記義務の側の政令第5条第1号は号を指定しているだけで、容量の上限を置いていません。
一方、公差の側の政令第3条第1号は、適用範囲を「表示量が5ml以上で、別表第一第四欄の量以下である場合」と限っています。ビールの上限は5リットルなので、19L樽や10L樽には法定の量目公差がありません。
数字が消えるだけで、義務が消えるわけではありません。前掲Q&A集(全般-9)は、上限を超えた特定商品について計量法第10条の正確計量が求められるとし、不足側は表示量の1%を目安としています。19L樽なら190mlです。過量側の目安は3%(570ml)。
グラウラー・量り売り — 密封ではないが、第12条は残る
店頭で客の容器に注ぐ行為は、封紙を破らなければ量を変えられない状態を作りません。密封に当たらないので、第13条第1項の表記義務の外側です。
ただし第12条第1項は残ります。「1L 1,200円」のように体積を法定計量単位で示して売るなら、ビールは特定商品なので量目公差がかかります。1Lなら10ml、500mlなら10mlです。
そして計量法とは別に、酒税法第50条の2第1項第1号の届出があります。 酒類製造者または酒類販売業者が、酒類の製造場や保税地域以外の場所で酒類を詰め替えるときは、その場所の所轄税務署長への届出が必要です。量目の話と免許・届出の話は別系統なので、片方だけ整えても足りません。
守るべき時点は「製造時」ではなく「販売するとき」まで
前掲Q&A集(全般-27)は、特定商品について密封・非密封によらず、商品を「販売するとき」までの間、量目が公差内に維持されている必要があるとしています。
充填直後に343mlあったから終わり、ではありません。 同Q&Aは、賞味期限までの量目維持のために多めに詰める「入れ目」について、自然減量を見越した必要最小限であれば過量の目安より優先して差し支えないとしています。缶ビールで自然減量が問題になる場面は多くありませんが、充填の狙い値を表示量ちょうどに置くのではなく、少し上に置くのが実務上の作法である理由がここにあります。
発注側が確認するのは5つ|費用・期間・最低ロット
発注時に確認するのは、表示量・充填の狙い値・単位表記・表記者の氏名住所・EC表記の5つです。
発注前に醸造所へ確認する5つ
- 表示量をいくつにするか。 350ml か 330ml か。缶の規格と同時に決まる
- 充填の狙い値と、実際のばらつき幅。 350mlなら下限343mlを下回らない運用になっているか
- 缶に印字する単位表記。 「350ml」か「350mL」か。国税庁が認める7通りのどれを使うか
- 計量法第13条第3項の氏名・住所を誰の名前で入れるか。 醸造所か、販売元か
- ECの商品ページやカタログの容量表記。 「約350ml」を使っていないか
1と3と5は発注側が決められます。2と4は醸造所と販売元の運用なので、見積の前に聞いておくと版下の手戻りが減ります。
費用 — 内容量表示そのものには追加費用がかからない
TAP TO BREW の場合、最低ロットは350ml缶で48本、初期制作費は50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)です(TAP TO BREW)。
内容量の表示は、品目・アルコール分と同じ一括表示欄に収まる項目です。栄養成分表示のように外部の分析を要する項目とは違い、表示すること自体に別費用は乗りません。 費用が動くのは、表示量を変えて缶の規格が変わる場合です。
期間 — 表示量は最初の打ち合わせで決まる
初回相談からリリースまでは概ね2〜3ヶ月です(TSURATSURA サービス)。
表示量は缶の調達と充填ラインに直結するので、レシピより先に決まります。 逆に言えば、後から「350mlを330mlに変えたい」と言うと、缶の手配とラベル版下の両方が動きます。OEM全体の流れはクラフトビールOEMの始め方完全ガイドにあります。
最低ロット — 量目の管理では動かない
最低ロットは仕込みと充填の単位で決まるもので、内容量表示の判断では変わりません。 48本でも48,000本でも、1本あたりに求められる公差は同じ7mlです。
小ロットだから緩い、という扱いは条文のどこにもありません。 逆に言えば、48本の1本目から同じ基準で作られているということでもあります。
作りたいビールの方向と、だいたいの本数が決まっていれば、初回の打ち合わせで表示まわりの見通しまで立ちます。
出典
- 計量法(平成4年法律第51号) — 第10条第1項、第11条、第12条、第13条、第15条、第17条、第173条第2号(e-Gov 法令検索。2026年9月7日確認)
- 特定商品の販売に係る計量に関する政令(平成5年政令第249号) — 第1条、第3条、第5条、別表第一 第23号(二)、別表第二 表(三)(同日確認)
- 特定商品の販売に係る計量に関する省令(平成5年通商産業省令第37号) — 第1条第1項第3号(同日確認)
- 計量単位規則(平成4年通商産業省令第80号) — 別表第2(体積・リットルの記号)(同日確認)
- 計量法施行令(平成5年政令第329号) — 第8条第11号(特殊容器の使用に係る商品に酒類が含まれる)(同日確認)
- 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号) — 第86条の5(同日確認)
- 同法施行令(昭和28年政令第28号) — 第8条の3第1項第1号・第2項(同日確認)
- 酒税法(昭和28年法律第6号) — 第50条の2第1項第1号(詰替えの届出)(同日確認)
- 経済産業省計量法における商品量目制度の概要(2026年7月22日更新。同日確認)
- 経済産業省商品量目制度Q&A集(令和元年5月30日改正) — 全般-9、全般-20、全般-21、全般-27、全般-29、全般-30、全般-32、全般-33(同日確認)
- 国税庁酒類の表示に関する説明事項(各品目共通) — 内容量・文字ポイント・表示の方式(同日確認)
- TAP TO BREW/TSURATSURA サービス(同日確認)
よくある質問
缶に350mlと書いたら、中身はきっちり350mlでなければいけませんか
きっちりでなくて構いません。計量法12条1項と特定商品の販売に係る計量に関する政令3条が量目公差を定めており、350mlの缶では表示量の2パーセント、つまり7mlまでの不足が認められます。実量が343mlを下回ると量目公差を超えます。ただし公差が定められているのは不足側だけで、多い側には法定の公差がありません。
ビールの内容量は質量ではなく体積で書くのですか
体積です。特定商品の販売に係る計量に関する政令の別表第一第23号(二)が、飲料のうちアルコールを含むものの特定物象量を体積と定めています。アルコールを含まない飲料は質量または体積のどちらでもよいのに対し、酒類は体積だけです。適用される量目公差の表は別表第二の表(三)、公差を適用する上限は5リットルです。
ラベルに約350mlと書いてもよいですか
書けません。経済産業省の商品量目制度Q&A集は、特定商品の特定物象量には量目公差の遵守義務がかかるため、約○や標準○のような曖昧な表示はできないとしています。括弧の内か外かも問いません。容器や包装への表記だけでなく、立て札や下げ札、カタログへの表示も同じ扱いです。
OEMで委託製造したビールの内容量は、誰が責任を負いますか
計量法12条・13条の義務は特定商品の販売の事業を行う者にかかります。経済産業省のQ&A集は、これを最終消費者に売る者に限定せず、製造事業者すなわち詰込者や卸売事業者を含め、商品の販売を行うすべての者が対象となり得るとしています。一方、缶に製造者として名称と製造場所在地が載るのは、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律86条の5と同法施行令8条の3第1項が酒類製造業者に表示義務を課しているためです。
19リットルの樽にも量目公差はかかりますか
法定の量目公差はかかりません。政令3条1号が公差の適用範囲を別表第一第四欄の量以下に限っており、酒類の上限が5リットルだからです。ただし内容量の表記義務は残り、計量法10条1項の正確計量の努力義務もかかります。経済産業省のQ&A集は、上限を超えた特定商品について不足側は表示量の1パーセント、過量側は3パーセントを目安としています。19リットルなら不足側190ml、過量側570mlです。