ビールに入れられるのは、条文が名指しした物品だけ
必須の原料は麦芽・ホップ・水の3つで、それ以外に加えてよいものは酒税法施行令第6条第1項が2つのグループに分けて列挙しています。一覧に名前が無いものを入れると、その時点でビールではなくなります。
酒税法第3条第12号ロは、ビールの原料を「麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品」と書いています。「その他の物品」ではありません。政令が挙げたものだけが候補で、判断の順番は「まず一覧にあるか、次に量が枠に収まるか」になります。
第1号 — 麦・米・とうもろこし・こうりゃん・ばれいしょ・でん粉・糖類
施行令第6条第1項第1号の原文は「麦、米、とうもろこし、こうりやん、ばれいしよ、でん粉、糖類又は財務省令で定める苦味料若しくは着色料」です(e-Gov 酒税法施行令、2026年9月5日確認)。
穀類とでん粉、糖類が入る、昔からの副原料のグループです。ここに果実やハーブは入っていません。
着色料はカラメルだけ。苦味料には定めが無い
第1号の「財務省令で定める」の中身は、酒税法施行規則第4条第1項が「令第六条第一項第一号に規定する財務省令で定める着色料は、カラメルとする」と書いています。着色料はカラメルの1つだけです。
一方、苦味料を定めた規定は施行規則に置かれていません(同日、e-Gov で全文を検索して確認)。苦味を足す物品を検討するなら、ホップの範囲か、後述する香味料の7区分のどちらかで考えることになります。ホップについては通達が「『ホップ』には、ルプリン、フムロン又はホップエキスを含む」としています(国税庁 法令解釈通達 第3条(ビールの定義)1)。
第2号 — 果実とコリアンダーその他の香味料
第2号は「果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む。)又はコリアンダーその他の財務省令で定める香味料」です。2018年4月に加わったグループで、特産品を入れる企画はほぼ全部ここに当たります。
重量の上限がかかるのは、この第2号だけです。 施行令第6条第2項が「法第三条第十二号ロに規定するビールの原料中政令で定める物品……は、前項第二号に掲げる物品とする」と書いていて、麦芽の100分の5という枠の対象を第2号に限定しています。米やとうもろこしは5%の枠ではなく、麦芽比率50%の側で効きます。
原料として数えない物品もある
酵素剤や酸類のように、入れても「酒類の原料」として扱わない物品が通達に列挙されています。ビールでは「ビール製造の際に麦芽と併用する必要最少量の酵素剤」が名指しされているほか、製造の健全を期する目的で必要最小限加える酸類・塩類・ビタミン類・発酵助成剤などが挙げられています(前掲通達 第3条(共通事項)7)。副原料の枠を消費しない代わりに、目的と量が条件になります。
香味料は7区分。ここに名前が無いものは香味料にならない
施行規則第4条第2項が香味料を7つの区分で列挙していて、そこに読み込めないものはビールの副原料になりません。
原文は「コリアンダー又はその種のほか、ビールに香り又は味を付けるため使用する次の各号に掲げる物品」と始まります(e-Gov 酒税法施行規則、2026年9月5日確認)。
- 一 こしよう、シナモン、クローブ、さんしようその他の香辛料又はその原料
- 二 カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ
- 三 かんしよ、かぼちやその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)
- 四 そば又はごま
- 五 蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
- 六 花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調製品
- 七 かき、こんぶ、わかめ又はかつお節
「その他の」が付いている区分だけ、名指し以外にも広がります。 第四号・第五号・第七号は名指しで閉じているので、そばとごま以外の雑穀や、かき・こんぶ・わかめ・かつお節以外の水産物は入りません。
広がる範囲は、社会通念と日本標準商品分類で見る
国税庁は「社会通念上当該物品として取り扱われているものであれば、その細別、名称、形状等の区分は問わない」とした上で、判断の物差しとして日本標準商品分類を挙げています(国税庁「ビールの定義の改正に関するQ&A」問1-3)。同Q&Aが示した対応は次のとおりです。
- 香辛料またはその原料 — 〔72-4:香辛料〕〔69-94:香辛料原料品〕
- 野菜 — 〔69-7:野菜〕
- そば・ごま — 〔69-34:そば〕〔03-22:ごま〕
- 食塩・みそ — 〔75-11:食塩〕〔75-12:みそ〕
- 茶、コーヒー、ココア、これらの調製品 — 〔69-93:未加工飲料作物〕〔72-3:茶、コーヒー、ココアの調製品〕
- かき、こんぶ、わかめ、かつお節 — 〔71-22:かき類〕〔71-51:こんぶ類〕〔71-52:わかめ類〕〔74-1922:かつお節〕〔74-1932:かつお削節〕
名指しで否定されているもの
同じQ&Aが、区分に入りそうで入らないものを個別に否定しています。企画で出やすいものが並んでいます。
- かつお節以外の節類・削節類(いわし節、まぐろ節など)は使えない。かつお削節までが範囲(問1-4)
- 天日干塩などの原塩は〔75-11:食塩〕に当たらないので使えない(問1-8)
- 麦茶・そば茶は「茶」ではない。 茶葉から得たものだけが茶で、麦茶やそば茶は麦・そばとして判断する(問1-3)
判断が割れるものは、Q&A自身が所轄税務署への個別照会を求めています(問1-7)。
「果実」に、くり・くるみ・アーモンドは入らない
通達が「果実」を日本標準商品分類で定義していて、そこから殻果類が明示的に除かれています。栗は使えません。
原文はこうです。「法、令及び規則に規定する『果実』とは、日本標準商品分類の分類番号69−8に属する果実(分類番号69−7412のうめ、同69−7413のゆず類及び同69−78の果実的野菜を含み、同69−85の殻果類を除く。)をいう」。注書きが「『殻果類』とは、例えば、くり、くるみ、アーモンドのように子房壁が硬化して堅い殻を作り、種子を食用とするものをいう」と続きます(前掲通達 第3条(共通事項)3)。
くりは果実から外れ、香味料の7区分のどこにも名前がありません。産地の栗を入れる企画は、品目がビールではなくなる前提で組むことになります。
逆に、果実に含まれるもの
同じ定義から、うめ・ゆず類・果実的野菜(いちご、メロン、すいかなど)は果実に入ります。 加工の形も広く認められています。
- 果皮・種 — 果実全体を指すので、オレンジピールやレモンピールなど果皮だけを使うこともできる(前掲Q&A 問1-6)
- 搾った果汁・搾りかす・凍結した果実・粉砕した果実 — 本質的な変化を来していないので果実のまま扱う(問1-5)
- 砂糖などをまぶした果皮のように菓子類に当たるものは、果実に該当しない(問1-6の注)
野菜と果実は、入口が違うだけで両方使える
かんしょ・かぼちゃなどの野菜は香味料の第三号から、いちごやメロンは果実から入ります。どちらの入口でも、上限は同じ枠を分け合います。
重量は、発酵させる時点で数える
副原料の重量は、投入前の状態ではなく、原料として発酵させる時点の重量で計算します。この1点で数字が変わります。
通達は「原料中政令で定める物品の重量の合計の計算に当たっては、当該物品を原料として発酵させる時点における重量により計算を行う」とし、注で「例えば、濃縮果汁を加水により希釈した後に原料として発酵させる場合には、希釈後の濃縮果汁の重量により計算を行う」と書いています(前掲通達 第3条(ビールの定義)4)。濃縮のまま1kgでも、薄めて入れれば薄めた後の重量で数えます。
副原料が複数あれば合算する
上限は品目ごとではなく合計にかかります。Q&Aは、濃縮果汁・別の物品・出汁の3つを投入した例で、合計600gを副原料の重量として麦芽の100分の5に収まるかを見ると示しています(問1-10)。1種類ずつ枠を持てるわけではありません。
出汁は水ではなく、その物品として数える
かつお節や干ししいたけのように、水で戻して成分を浸出させることが本来の用途と考えられるものは、浸出した水を「水」ではなくその物品として扱います(問1-7)。このとき副原料の重量は浸出した水の重量です。こんぶを取り除かずに入れた場合は、こんぶ50gと出汁100gを足して150gと数えます(問1-10の注)。
麦芽エキスを使うと、麦芽側の数字も動く
麦芽を原料の一部として作られた物品を使う場合、麦芽の重量と麦芽比率は「その物品の原料とした麦芽の重量を含めて計算する」とされています(前掲通達 第3条(ビールの定義)3)。分母だけでなく、枠の基準になる麦芽の重量も変わります。 税額が麦芽比率で動く点は2026年10月の酒税改正で分解しています。
発酵が終わった後に入れる場合は、条件が1つ増える
できあがったビールにホップや果実を加えて更に発酵させたものも、ビール(ハ号ビール)になります。ただし国税庁は、投入から発酵終了までの間に有意にアルコール分が上昇している必要があり、測定誤差の範囲内の上昇では発酵があったと認められないとしています(問1-11)。副原料の一覧と5%の枠は、この場合も同じようにかかります。
候補が出たら、この順で確かめる
確認は4段です。名前・定義・重量・照会の順に見れば、企画の途中で品目がひっくり返る事故は防げます。
- 施行令第6条第1項と施行規則第4条第2項に、その名前があるか。 「その他の」が付いていない区分は名指しで閉じている
- 果実なら、通達第3条3の定義に当たるか。 殻果類(くり・くるみ・アーモンド)は外れる
- 発酵させる時点の重量を全部足して、麦芽の重量の100分の5に収まるか。 濃縮果汁は希釈後、出汁は浸出した水の重量で数える
- 迷うものは所轄税務署へ照会する。 Q&Aが照会を前提にしている論点が複数ある(問1-3、問1-7)
醸造所に投げる前に1と2を済ませておくと、レシピの試作が1周で済みます。先に決めるのは分量ではなく、名前が一覧にあるかどうかです。
ラベルに何と書くかは、レシピが決まった後の話
副原料の選び方で品目が動き、品目はラベルの義務表示になります。表示側の要件はオリジナルビールのラベル表示義務にまとめてあります。ラベルの文言を先に固めると、レシピ側から裏切られます。
費用の目安・期間・最低ロット
TAP TO BREW の場合、初期制作費は50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)、最低ロットは350ml缶48本、初回相談からリリースまで概ね2〜3ヶ月です(TSURATSURA サービス)。副原料の可否判定はレシピを固める段階の作業なので、この期間の中に入ります。OEM全体の進み方はクラフトビールOEMの始め方にあります。
できあがったビールを 花園クラフトが売主として販売する場合は、醸造所の花園クラフトが販売元になるため、依頼する側は免許を取らずに進められます。自社が販売者として売るなら、その主体で酒類小売業免許が必要です。
使いたい素材の名前と、だいたいの本数だけ決まっていれば、一覧に当たるかどうかの判定まで初回で片が付きます。
出典
- e-Gov 酒税法/酒税法施行令/酒税法施行規則(いずれも2026年9月5日に条文を取得して確認)
- 国税庁「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第3条」(同)
- 国税庁「平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A」PDF(平成30年3月・令和元年9月改訂/同日確認)