オリジナルビールを酒販店に卸すには|自己商標酒類卸売業免許の要件と手続き
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オリジナルビールを酒販店に卸すには|自己商標酒類卸売業免許の要件と手続き

2026.09.07 11min read Written by TAP TO BREW 編集部

小売免許では卸せない

酒類の販売業免許は「誰に売るか」で小売と卸売に分かれていて、小売業免許には酒類の販売は小売に限る旨の条件が付いています。 酒販店やチェーンに売るには、卸売ができる免許を別に受けることになります。

小売と卸売は、売る相手で分かれている

国税庁の法令解釈通達(第9条関係)が、区分の意義をそのまま定義しています(国税庁 法令解釈通達 第9条)。

  • 酒類小売業免許 — 消費者、料飲店営業者又は菓子等製造業者に対して酒類を継続的に販売することが認められる免許
  • 酒類卸売業免許 — 酒類販売業者又は製造者に対し酒類を継続的に販売することが認められる免許

同じ通達の注記に、酒類小売業免許は「酒類の販売は小売に限る旨の条件を付されている販売業免許である」と書かれています。つまり、自社ECを通信販売酒類小売業免許で回していても、その免許のまま酒販店へ売ることはできません。 卸売先の酒販店は「消費者」でも「料飲店営業者」でもないからです。

免許は、売る主体に、販売場ごとにかかる

ここを取り違えると全部ずれます。国税庁のQ&Aの書き出しが原則そのものです。「酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります」(国税庁 お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q12)。

免許を受けるのは商品でも銘柄でもなく、その酒類を売る主体です。手引も、本店で免許を受けている場合でも支店で販売業を行うなら支店の所轄税務署長から新たに免許を受ける必要がある、と書いています(酒類卸売業免許申請の手引 5頁)。本社と倉庫が別の場所にあるなら、どちらを販売場にするかが先に決まっていないと申請できません。

免許を持たずに卸すと罰則がある

手引はこの点を明示しています。「免許を受けないで酒類の販売業を行った場合や酒類の小売しかできない免許で酒類の卸売をした場合には、酒税法上、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されることとなっています」(同 6頁)。

「小売免許はあるから大丈夫だろう」で卸売に踏み出すのが、いちばん起きやすい事故です。

自社ブランドだけなら自己商標酒類卸売業免許

自分たちで開発した商標・銘柄のビールだけを卸すなら、自己商標酒類卸売業免許です。 酒類卸売業免許の8区分のうちの1つで、「自らが開発した商標又は銘柄の酒類を卸売することができる酒類卸売業免許」と定義されています(国税庁 法令解釈通達 第9条)。

卸せるのは「自らが開発した商標又は銘柄」の酒類だけ

手引の記述は「この免許で卸売できる酒類は、自らが開発した商標又は銘柄の酒類に限ります」です(同 6頁)。扱える範囲が自社ブランドに限定される代わりに、次に挙げる枠と数量の制約から外れます。 OEMでオリジナルビールを作って卸したい、という形にはこの区分がそのまま当たります。

需給調整要件がかからない。販売数量の下限も無い

ここが、卸売業免許の中でこの区分が現実的な理由です。手引の要件のページに、2つの注記があります。

  • 「全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許以外の免許については、年平均販売見込数量に関する基準はありません」(同 14頁)
  • 「全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許以外の卸売業免許については、需給調整要件の適用はありません」(同 15頁)

手引の冒頭にも《参考》として「全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許以外の酒類卸売業免許については、原則として公開抽選は実施せず、申請等の順に審査を行います」とあります(同 3頁)。年1回の抽選を待つ必要がなく、申請した順に審査されるということです。

経歴の要件は3年。無くても門前払いにはならない

人的要件のうち経歴は、洋酒卸売業免許・店頭販売酒類卸売業免許・協同組合員間酒類卸売業免許と同じ扱いです。原則として要件を満たすものとして取り扱われるのは、酒類の製造業か販売業の業務に直接従事した期間が引き続き3年以上である者など(全酒類卸売業免許とビール卸売業免許では10年)。

ただし手引には続きがあります。「これらの従事経験や経営経験がない場合には、その他の業での経営経験に加え『酒類販売管理研修』の受講の有無等から(中略)酒類の卸売業を経営するに十分な知識及び能力が備わっているかどうかを実質的に審査することになります」(同 14頁)。酒類業の経歴が無い事業会社でも、そこで終わりにはなりません。

他社ブランドも扱うなら別の免許が要る

自己商標酒類卸売業免許で扱えるのは自社ブランドだけなので、他社のビールも一緒に卸すなら、その品目に応じた卸売業免許を別に受けることになります。 そしてビールには、件数の枠と抽選があります。

他社ブランドのビールを卸すなら、枠と年1回のスケジュールが乗る

ビール卸売業免許は、卸売販売地域(都道府県が1単位)ごとの免許可能件数の範囲内でしか付与されません。手引に書かれている運用はこうです(同 3頁・14頁・15頁)。

  • 各卸売販売地域の免許可能件数は、毎年9月1日(土日の場合は翌月曜日)に国税庁ホームページへ掲載される
  • 9月1日から9月30日までの申請が公開抽選の対象。7月1日から8月31日までに受理した申請書等は、同年9月1日に受理したものとして取り扱う
  • 公開抽選を10月中に実施し、審査順位を決定する
  • 年平均販売見込数量(卸売基準数量)が50kL以上であること(全酒類卸売業免許は100kL以上)

自社ブランド1本に絞るかどうかが、免許の取りやすさをそのまま左右します。

品目が「発泡酒」なら、洋酒卸売業免許の範囲に入る

見落とされやすい点です。洋酒卸売業免許の定義には、果実酒・甘味果実酒・ウイスキー・ブランデーと並んで発泡酒が入っています(国税庁 法令解釈通達 第9条)。洋酒卸売業免許は需給調整要件も年平均販売見込数量の基準もかかりません。

同じ「クラフトビール」でも、酒税法上の品目がビールか発泡酒かで、他社ブランドを扱うときの免許区分が変わります。 品目は副原料と麦芽比率で決まるので、レシピの段階の話です。品目の分かれ方は2026年10月の酒税改正で整理しています。

委託製造なら、そのブランドが自分のものだと示す資料が要る

国税庁のQ&Aは、委託製造でプライベートブランドを作って地元の酒販店へ売る、という状況を名指しで扱っています。 自己商標酒類卸売業免許の想定そのものです。

Q&Aの設問が、委託製造の話になっている

設問は「自己が生産した果実を地元の酒類製造者に提供しプライベートブランドの酒類を製造してもらいました。この酒類を地元の酒販店に販売したいと考えていますが、この場合はどのような手続が必要ですか」(国税庁 Q&A【販売業免許関係】Q12)。

回答は、販売場ごとに販売業免許が要ること、そのうち自己商標酒類卸売業免許が該当することを示したうえで、確認資料についてこう書いています。「税務署では、この『自らが開発した商標又は銘柄』の確認に当たり、その商標又は銘柄(ラベル)の写しのほか、自己の(共同開発の)商標(銘柄)として登録済みである場合にはその登録済証の写しなどの提出をお願いすることとなります」。

醸造所を持たずに自社ブランドを立てる形そのものは、酒税法の側で否定されていません。 その作り方はファントムブリュワリーとは何かに置いています。

「独占販売権」という言葉は、Q&Aにも手引にも出てこない

確認しました。国税庁のQ12にも、酒類卸売業免許申請の手引にも、独占販売権を証明する書類という項目はありません。税務署が確認するのは、その商標・銘柄を自らが開発したという事実で、示す材料として挙がっているのはラベルの写しと商標登録済証の写しです。

委託製造契約書は、開発の経緯を説明する材料の1つにはなりますが、様式の決まった提出物として一覧に載っているわけではありません。 他社の解説記事で「独占販売権の証明が必要」と書かれているのを見たら、原文に当たってください。

仕入先は醸造所になる。申請書に書く欄がある

卸売業免許の申請書には、次葉4「収支の見込み(兼事業の概要付表)」があり、その1番目と2番目が酒類の予定仕入先と酒類の予定販売先です。記載例では、予定仕入先の欄に「取引を予定している酒類卸売業者又は酒類製造者を記載してください」と注記されています(同 34頁)。委託製造なら、ここに書くのは醸造所です。

手引が載せている全酒類・ビール卸売業免許用のチェック表には、注記として「予定仕入先及び予定販売先の取引承諾書等を添付してください」とあります(同 47頁)。この注記が付いているのは全酒類・ビール卸売業免許の様式なので、自己商標で同じ添付を求められるかは所轄に確認する項目です。 いずれにせよ、仕入先と販売先が空欄のままでは収支の見込みが書けません。免許を取ってから営業先を探す順番にはなりにくい、ということです。

商標登録は必須ではない。未登録なら個別に確認される

商標登録済証は「登録済みである場合には」提出を求められる資料で、登録そのものが免許の要件になっているわけではありません。 ただし未登録なら、別の形で確認されます。

登録していない場合の扱い

前掲のQ12の続きです。「商標(銘柄)として登録していない場合には自らが開発したものかどうか個別・具体的に事実関係を確認した上で判断することとなりますので、申請に当たり必要な書類については税務署にご相談ください」(国税庁 Q&A Q12)。

登録済なら登録済証の写しで足り、未登録なら事実関係の個別確認になる。どちらでも申請はできますが、求められる書類が事前に読めるかどうかが変わります。

名前を決める段階で、商標は一度調べておく

免許の話とは別に、他社の登録商標と衝突していれば、缶のラベルを作り直すことになります。ネーミングと商標の確認は、免許の申請より前の工程です。 調べ方はビールのネーミングのコツに、ラベルに必ず入れる表示事項はオリジナルビールのラベル表示義務にまとめています。

必要書類は一覧では終わらない。事前相談してから組む

手引の申請書類一覧表には「本表に掲げる書類のほか、税務署長が審査段階で必要と認めた書類については、別途提出を求める場合があります」と明記されています。 だから、書類を全部揃えてから相談するのではなく、相談してから揃えます。

一覧に載っている分だけでは終わらない

一覧に並ぶのは、免許申請書と次葉1〜5、免許要件誓約書、履歴書、定款の写し、契約書等の写し、地方税の納税証明書、最終事業年度以前3事業年度の財務諸表、土地及び建物の登記事項証明書、チェック表。上の一文はその表の注記の最後です(同 26頁)。

自己商標に固有の「商標又は銘柄(ラベル)の写し」は、この一覧ではなくQ&Aの側に書かれています。固有の書類ほど一覧に載っていないので、所轄税務署を担当する酒類指導官への事前相談を前提に組みます。手引も、個別・具体的な相談は酒類指導官へ、と案内しています(同 4頁)。

すでに小売免許がある販売場なら、条件緩和という経路がある

新規の免許申請ではなく、既に受けている免許の条件を緩和(解除)する申出という手続きもあります。手引が挙げている例は「『通信販売を除く小売に限る』旨の免許条件が付された酒類販売場を有する酒類小売業者の方が、その販売場において全酒類(又はビール)の卸売も行いたい場合」です(同 16頁)。自分のケースが新規申請と条件緩和のどちらになるかは、販売場と既存免許の条件次第です。事前相談で確認する項目に入れてください。

費用の目安・期間・最低ロット

免許まわりの3点は、国税庁の資料から確定できます。醸造側の金額とロットは案件ごとに違うので、ここでは何がそれを決めるかだけを書きます。

  • 費用の目安 — 登録免許税が免許1件につき9万円(酒類小売業免許を条件緩和・解除する場合は6万円)。免許が付与される際に納付します(同 19頁)。これとは別に、醸造費・ラベル・資材・保管配送の費用がかかります
  • 期間 — 標準処理期間は原則として、申請書等の提出のあった日の翌日から2か月以内。ただし「添付が漏れている書類や審査を行う上で必要となる参考書類の追加提出又は申請書等の補正が必要となる場合には、その連絡をした日から、その書類の提出等があるまでの間の日数は、標準処理期間から除外されます」(同 18頁)。書類が揃っていない期間は2か月に入りません
  • 最低ロット — 自己商標酒類卸売業免許には年平均販売見込数量の基準がないため、免許の側からロットの下限はかかりません。実際の下限を決めるのは醸造所の一度の仕込み単位です

誰が売主になるかで、要る免許が変わる

卸売と小売で免許が別なので、最初に決めるのは「その酒類を誰の名前で売るか」です。 ここが決まれば、必要な免許と申請の順番は自動的に決まります。

TAP TO BREW は、株式会社TSURATSURA が運営するクラフトビールのOEM・ブランド構築サービスです。TAP TO BREW では製造・販売を醸造所の花園クラフトが担い、花園クラフトが売主として販売するため、その形をとる限り、依頼する側は自分で免許を取らずに進められます(TSURATSURA サービス)。自社名義のECで自分たちが売主になるなら、その販売場について自分たちで酒類小売業免許を受けることになります。

一方、酒販店やチェーンへ卸す部分は、この形ではカバーされません。 卸売は、自分たちで自己商標酒類卸売業免許を受けるか、卸売業免許を持つ事業者に販売そのものを委ねるかのどちらかです。

順番としては、まず売主を決め、卸先の話が具体化してから免許を取りに行く形が組みやすくなります。申請書に予定仕入先と予定販売先を書く以上、相手が決まっていない段階では準備が進まないからです。

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売り先が酒販店なのか、自社ECなのか、両方なのか。そこだけ決まっていれば、要る免許と順番は初回で整理できます。

出典

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TAP TO BREW Editorial
クラフトビールの最新トレンド、ブランド戦略、醸造の裏側をお届けするTAP TO BREWの編集チーム。株式会社TSURATSURA運営。

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