買ってきた樽ビールを自分の瓶に詰めてラベルを貼るのは、「製造」に当たるのか
詰め替えるだけなら、酒税法は製造免許ではなく「届出」で扱っています。 ただしそれは酒類製造者か酒類販売業者が行う前提の制度で、免許を1つも持たない人が詰め替えて売れば無免許販売になります。そして中身に水や果汁を足した瞬間、話は製造免許の側へ移ります。
酒税法に「製造」の定義は無い
酒税法が定義しているのは酒類の方です。第2条第1項は酒類を「アルコール分一度以上の飲料」と定めます。「製造」が何を指すかを直接書いた条文はなく、代わりに第7条第1項が「酒類を製造しようとする者は、(中略)製造しようとする酒類の品目別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない」と義務だけを置いています(e-Gov 酒税法)。
免許を受けずに酒類を製造した場合の罰は重く、第54条第1項で10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。同条第4項では、原料・機械・器具・容器が「何人の所有であるかを問わず没収」されます。
詰替えは、第50条の2の「届出」に置かれている
酒税法は詰替えを製造免許の側ではなく、届出義務の条文に書いています。第50条の2第1項第1号——「酒類製造者又は酒類販売業者が、酒類の製造場又は保税地域以外の場所で酒類を詰め替える行為」。これをしようとする場合は所轄税務署長に届け出る、という建て付けです。
国税庁の法令解釈通達も同じ位置で扱っています。第50条の2第1項関係の1に「届出対象酒類は、酒類製造者又は酒類販売業者が酒類の製造場又は保税地域以外の場所で詰め替える全ての酒類となる」とあります(国税庁 法令解釈通達 第50条の2)。
つまり「詰め替えたから製造免許が要る」ではありません。 引っかかるのは主語の方です。この制度は酒類製造者か酒類販売業者が使うもので、免許を持たない人が詰め替えて売れば、それは第9条第1項の販売業免許を受けずに販売業をした行為として第56条第1項第1号(1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)に当たります。
「量り売り」と「詰め替え」は別の行為
国税庁のQ&Aが2つを分けて定義しています(国税庁 お酒に関するQ&A【詰め替え】)。
- 量り売り — 購入者があらかじめ用意した容器に、希望する酒類を希望する量だけ販売する行為。「販売する酒類の販売業免許を有していれば、手続き等は必要ありません」
- 詰め替え — 酒類販売業者等が仕入れた酒類をあらかじめ別の容器に小分け等して販売する行為。2日前までの届出が要る
容器を誰が用意したかで手続きが変わります。店がボトルを用意して詰めて棚に並べるなら、それは詰め替えです。
どこから先が「製造」になるのか
中身に水以外の物品を混ぜて、それが酒類のままなら、新たに酒類を製造したものとみなされます。 酒税法第43条(みなし製造)が定めています。
果汁やスパイスを足したら第43条第1項
条文はこうです。「酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす」。ただし書きの除外は清酒・焼酎・ウイスキー等に関するもので、ビールに果汁やスパイスを後から混ぜる行為を救う号はありません。副原料を入れたビールの品目についてはビールに入れられるもの一覧で別に扱っています。
加水しても製造になる
第43条第5項——「酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたとき(政令で定める場合を除く。)は、新たに酒類を製造したものとみなす」。この「政令で定める場合」は酒税法施行令第50条第7項で、蒸留酒類を20度以上(ウイスキー等は37度以上)に留める場合などに限られています(e-Gov 酒税法施行令)。ビールに効く除外はありません。 樽のビールを薄めて瓶に詰めれば、製造場の外である以上、製造とみなされます。
飲食店のカクテルが許される理由
第43条第10項が「消費の直前において酒類と他の物品との混和をする場合で政令で定めるとき」を適用除外にしています。施行令第50条第13項がその中身で、酒場・料理店等が営業場において消費者の求めに応じて混和するとき、または消費者が自分で消費するために混和するとき、と限定しています。
同じく第11項に、消費者が自ら消費するための混和(アルコール分20度以上の酒類に糖類・梅などを混和し、混和後に発酵がないもの。施行令第50条第14項)の除外がありますが、第12項は「前項の規定の適用を受けた酒類は、販売してはならない」と明記しています。自家用の除外は、売った瞬間に効かなくなります。
詰め替えて売るには、何を出すのか
届出が2本、その前提として販売業免許が1つです。
酒類の詰替え届出書 — 2日前まで
提出先は詰替えを行う場所の所在地を所轄する税務署、提出時期は詰替えをしようとする2日前まで、手数料は不要です。手続対象者は「酒類の製造場又は保税地域以外の場所で酒類を詰替えしようとする酒類製造者又は酒類販売業者」と明記されています(国税庁 E1-33 酒類を詰替えしようとする場合の届出手続き)。記載事項は施行令第56条の2で、届出者の住所・氏名(法人番号)、行為の日と場所、行為の内容などです。通達は事前の包括届出も認めています。
表示方法届出 — 詰め替える側も対象
もう1本が表示方法届出です。手続対象者に「酒類を詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者」が明記されています。提出時期は詰め替えて搬出する時まで、提出先は届出者の所在地を所轄する税務署(国税庁 E4-1 表示方法届出の手続)。
前提として、販売場ごとの販売業免許
第9条第1項は「酒類の販売業(中略)をしようとする者は、(中略)販売場ごとにその販売場の所在地(中略)の所轄税務署長の免許を受けなければならない」と定めています。免許の種類の選び方はオリジナルビールはどこで売れるのかで販路ごとに整理しています。
ラベルを貼り替えると、表示の責任は誰に移るのか
詰め替えた本人に移ります。 容器に自分の住所と名称を出す義務が乗ります。
書くのは、名前と場所と4項目
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令第8条の3第2項——「酒類を詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者は、(中略)容器の見やすい箇所に、(中略)その住所及び氏名又は名称、その(中略)詰替の場所の所在地並びに前項各号に掲げる事項を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない」(e-Gov 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令)。
第1項各号が指す事項は次の4つです。
- 内容量
- 当該酒類の品目
- 当該酒類のアルコール分
- 雑酒の税率適用区分、その他の発泡性酒類の発泡性を有する旨
義務の主体が「造った人」から「詰めた人」に置き換わる、という設計です。 詰め替えた側が自分の名前と場所を出す以上、表示の責任も自分に来ます。品目やアルコール分の表示義務まで含めて引き受けることになるので、ラベル1枚を貼る作業とは別の話です。表示事項そのものはオリジナルビールのラベル表示義務でも扱っています。
20歳未満の表示も、販売場から搬出する容器に適用される
「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」(平成元年11月22日国税庁告示第9号)は、告示の柱書で適用対象を「酒類の製造場から移出する酒類、保税地域から引き取る酒類若しくは酒類の販売場から搬出する酒類の容器若しくは包装又は酒類の販売場」としています。容器等には「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨を、6ポイントの活字以上(容量360ml以下の容器は5.5ポイント以上)の統一のとれた日本文字で表示する、と定めています(国税庁 告示全文)。
食品表示側は別の窓口になる
国税庁のQ&Aは「詰め替えを行った者が、食品衛生法上からも、製造場所(詰め替え場所)、製造者(詰め替えた酒類販売業者等の氏名又は名称)等の表示義務が必要となります」と書いています。ただしこの記述の根拠法令は現在の食品表示法へ移っており、細目までを酒税の窓口で判断することはできません。 表示の具体項目は酒類の表示方法チェックシートを見たうえで、保健所側にも当ててください。
飲食店の店内提供・テイクアウト・グラウラーは、どこで線が変わるのか
注いでその場で飲んでもらう間は免許が要らず、持ち帰り用に売った瞬間に要ります。
店内提供は第9条第1項ただし書
第9条第1項のただし書が「酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業」を免許の対象から外しています。国税庁のQ&Aも同じ線で答えています。「酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場で飲用に供する業を行う場合には、販売業免許は必要ありませんが、例えばテイクアウト用など、その営業場以外の場所で飲用に供されるための酒類を販売する場合には、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります」(国税庁 お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q3)。
同じ回答は、免許を受けたあと販売場ごとに酒類販売管理者を選任する必要があること、登録免許税がかかること(申請手数料は不要)にも触れています。
グラウラーは、容器を誰が用意したかで分かれる
- 客が持参したボトルに注いで渡す → 量り売り。販売業免許があれば追加の手続きは不要
- 店が用意したボトルに詰めて渡す → 詰め替え。2日前までの届出と、表示方法届出、容器の表示が乗る
いずれの場合も、店内で飲んでもらうのではなく持ち帰らせる以上、販売業免許は要ります。飲食店が自店ブランドのビールを持つ設計は道の駅でオリジナルビールを売るのに要る免許でも同じ切り分けをしています。
では、合法にオリジナルビールを持つにはどうするのか
委託製造(OEM)です。造るのは製造免許を持つ醸造所なので、依頼する側に製造免許は要りません。
免許が要るのは「売る側」
自分で醸造所を持つ場合、ビールの製造免許には年60キロリットルという最低製造数量基準がかかります(第7条第2項第6号。詳しくはビール60kL・発泡酒6kLの壁)。委託すればこの壁は関係ありません。残るのは販売の側です。
国税庁のQ&Aも、酒類製造者にプライベートブランドを造ってもらったケースについて、必要な手続きとして販売業免許だけを挙げています(【販売業免許関係】Q12)。酒販店へ卸すなら自己商標酒類卸売業免許で、要件はオリジナルビールを酒販店に卸すにはにまとめています。
売主を誰にするかで、要るものが決まる
- 自社で売る → 自社が販売場ごとに免許を取る。ECなら通信販売酒類小売業免許(3,000kLの条件)
- 販売元を委ねる → 連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります。 この形をとる場合、依頼側は免許を取らずにEC販売まで進められます(/pages/tap-to-brew)
- 卸す → 自己商標酒類卸売業免許を自社で取る
所轄税務署に確認する項目
条文と国税庁の公開資料だけでは決まらない点があります。この記事では埋めずに残します。
- 既存の販売業免許に付されている条件で、詰替えが制限されていないか
- 業務用の樽から小売用容器へ詰め替える場合の、酒税の税率適用区分と記帳の扱い
- 容器を変えずにラベルだけを貼り替える場合に、どの表示義務が誰に残るか
- 食品表示法側で必要になる表示(保健所・消費者庁側の窓口)
相談先は販売場の所在地を管轄する税務署です(国税庁 酒税やお酒の免許についての相談)。
費用の目安・期間・最低ロット
TAP TO BREW の場合、/pages/tap-to-brew に公開している条件です。
- 最低ロット — 350ml缶で48本から
- 初期制作費 — 50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)。以降は継続支援費との2層構造
- 期間 — 初回相談からリリースまで概ね2〜3か月
詰替えの届出と表示を自前で回すより、最初から自社ラベルで醸造してもらった方が、手続きの本数も表示の責任の所在も減ります。
作りたい本数と、誰に売るつもりかの2つが決まっていれば、売主の設計と必要な免許の当たりまで初回でお出しします。
出典
- e-Gov 酒税法(昭和28年法律第6号)第2条・第7条・第9条・第43条・第50条の2・第54条・第56条(2026年9月6日確認)
- e-Gov 酒税法施行令(昭和37年政令第97号)第50条・第56条の2(同)
- e-Gov 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 第86条の5・第86条の6(同)
- e-Gov 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令 第8条の3・第8条の4(同)
- 国税庁法令解釈通達 第50条の2 届出義務(同)
- 国税庁お酒に関するQ&A【詰め替え】(同)
- 国税庁お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q3・Q12(同)
- 国税庁お酒に関するQ&A【酒類製造免許関係】Q1(同)
- 国税庁E1-33 酒類を詰替えしようとする場合の届出手続き(同)
- 国税庁E4-1 表示方法届出の手続(同)
- 国税庁二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準を定める件(平成元年11月22日国税庁告示第9号)(同)
よくある質問
買ってきた樽ビールを自分の瓶に詰めてオリジナルラベルを貼るのは、酒類の製造に当たりますか?
詰め替えるだけであれば、酒税法は製造免許ではなく届出で扱っています。第50条の2第1項第1号が「酒類製造者又は酒類販売業者が、酒類の製造場又は保税地域以外の場所で酒類を詰め替える行為」を届出の対象としているためです。ただしこれは酒類製造者か酒類販売業者が行う前提の制度で、免許を持たない者が詰め替えて売れば、第9条第1項の販売業免許を受けずに販売業をした行為として第56条第1項第1号に当たります。
詰め替えるときに水や果汁を足したらどうなりますか?
新たに酒類を製造したものとみなされます。酒税法第43条第1項は、酒類に水以外の物品を混和して混和後のものが酒類であるときは新たに酒類を製造したものとみなすと定めています。加水についても同条第5項が、酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたときは新たに酒類を製造したものとみなすと定めており、酒税法施行令第50条第7項の除外は蒸留酒類等に限られるためビールには適用されません。免許を受けない製造は第54条第1項で10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
量り売りと詰め替えは何が違いますか?
国税庁のQ&Aによると、量り売りは購入者があらかじめ用意した容器に希望する酒類を希望する量だけ販売する行為で、販売する酒類の販売業免許があれば手続きは必要ありません。詰め替えは酒類販売業者等が仕入れた酒類をあらかじめ別の容器に小分け等して販売する行為で、詰め替えを行う場所の所轄税務署長へ2日前までに酒類の詰替え届出書を提出する必要があります。
詰め替えた容器のラベルには誰の名前を書きますか?
詰め替えた酒類販売業者自身の住所と氏名または名称、そして詰替の場所の所在地です。酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令第8条の3第2項が、酒類を詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者に対し、これらに加えて内容量・品目・アルコール分などの表示を義務づけています。表示の責任は造った側ではなく詰めた側に移ります。
飲食店で自店のビールを持ち帰り用に売るには免許が要りますか?
必要です。酒税法第9条第1項ただし書により、酒場・料理店その他酒類をもっぱら自己の営業場において飲用に供する業には販売業免許が要りませんが、国税庁のQ&Aは、テイクアウト用などその営業場以外の場所で飲用に供されるための酒類を販売する場合には、販売場ごとに所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があると回答しています。あわせて販売場ごとに酒類販売管理者の選任が必要です。
免許を取らずにオリジナルビールを持つ方法はありますか?
委託製造(OEM)であれば、造るのは製造免許を持つ醸造所なので依頼側に製造免許は要りません。ただし売る主体には酒税法第9条第1項により販売場ごとの酒類販売業免許が必要です。TAP TO BREW の場合は連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となるため、依頼側が免許を取らずにEC販売まで進められます。