そもそもクール便が要るのか
要るかどうかは、温度の好みではなく、その商品に付いている保存方法の指定で決まります。 ろ過して酵母を落としたビールは冷暗所での常温保存ができ、酵母が残るものには要冷蔵の指定が付きます。
同じ醸造所の、同じ箱の中で分かれます。COEDO BREWERY の公式オンラインストアにある4種6本の飲み比べセットは、保存方法の欄が「直射日光を避け、冷暗所に保存してください」と「白・紅赤は要冷蔵品ですので、冷蔵保管してください」の2行に分かれています。同じページのFAQには「ろ過を行ったビールの詰め合わせのため、賞味期限が長く冷暗所での常温保存が可能です」とあり、常温側の賞味期限は製造から180日と書かれています(COEDO BREWERY 公式オンラインストア・2026年9月5日確認)。
つまり、送料はレシピを決めた時点でおおよそ決まっています。 後から配送だけ安くする方法はほとんどありません。
「生ビール」は要冷蔵という意味ではない
ビール酒造組合は、生ビールおよびドラフトビールを「熱による処理(パストリゼーション)をしていないビールです」と説明しています。ラガービールについては「熱による処理をする、しないに関係なく、貯蔵工程で熟成させたビールはラガービールです」としています(ビール酒造組合「ビールの表示」・2026年9月5日確認)。
非熱処理でも常温で流通しているものは珍しくありません。サッポロビールが保管上の注意として挙げているのは光・熱(高温)・振動の3つで、冷蔵を条件にはしていません(サッポロビール よくあるご質問・同日確認)。「生だから要冷蔵」と決め打ちすると、要らないクール料金を毎回払うことになります。
指定はラベルではなく仕様書で受け取る
酒類は食品表示基準第3条第3項で「保存の方法」と「消費期限又は賞味期限」を省略できる区分に挙がっています(e-Gov 食品表示基準・同日確認)。ラベルに書いていないことは、書く義務が無いだけで、指定が無いこととは違います。 委託先の醸造所には、保存方法と賞味期限を文書で出してもらいます。ここが空欄のまま販売ページを作ると、クール便にするかどうかを毎回現場が判断することになります。
常温で送るなら、1箱いくらか
関東発・100サイズで、宅急便は1,530〜1,650円、ゆうパック(東京発)は1,500〜1,620円です。 どちらも公開されている運賃で、2026年9月5日に確認した額です。
| サイズ | 宅急便 関東→関東 | 宅急便 関東→関西 | ゆうパック 東京→関東・東海ほか | ゆうパック 東京→近畿 |
|---|---|---|---|---|
| 60 | 940円 | 1,060円 | 880円 | 990円 |
| 80 | 1,230円 | 1,350円 | 1,200円 | 1,310円 |
| 100 | 1,530円 | 1,650円 | 1,500円 | 1,620円 |
| 120 | 2,040円 | 2,170円 | 1,830円 | 1,940円 |
宅急便はヤマト運輸「宅急便運賃一覧表:全国一覧(現金でのお支払い)」、ゆうパックは日本郵便「ゆうパック都道府県別基本運賃表(東京)」。いずれも税込・片道1個あたりです。
サイズは3辺の合計と重さの、大きいほうで決まる
ヤマト運輸の区分には重量の上限が付いています。60サイズは2kg迄、80サイズは5kg迄、100サイズは10kg迄、120サイズは15kg迄、140サイズは20kg迄、160サイズは25kg迄(前掲・宅急便運賃一覧表)。箱が小さくても、重ければ上の区分になります。 日本郵便のサイズ区分は3辺の合計だけで書かれていて、重量はチルドゆうパックの側に「25kg以下」とあります(後掲)。
持ち込むと引かれる
宅急便は営業所・取扱店・コンビニへの持ち込みで1個100円引き、クロネコメンバーズが営業所へ持ち込んでネコピット等で送り状を発行すると、さらに50円引きになります(前掲・宅急便運賃一覧表)。クール宅急便で持ち込めるのは営業所だけで、持込割100円引き・クロネコメンバーズの持込割150円引き(併用不可)です(ヤマト運輸「クール宅急便」・同日確認)。日本郵便は郵便局への持ち込みや同一あて先への複数差し出しで最大180円の割引があります(日本郵便「チルドゆうパック」・同日確認)。ただしヤマトのクロネコメンバー割は、クール料金には適用されません(前掲)。
クール便にすると、1箱いくら増えるのか
ヤマトは宅急便運賃に60サイズ+275円〜120サイズ+715円、日本郵便のチルドゆうパックは基本運賃に60サイズ+225円〜150サイズ+2,100円が乗ります。
| サイズ | クール宅急便の加算 | チルドゆうパックの加算 |
|---|---|---|
| 60 | +275円 | +225円 |
| 80 | +330円 | +360円 |
| 100 | +440円 | +675円 |
| 120 | +715円 | +675円 |
| 140 | 取扱いなし | +1,330円 |
| 150 | 取扱いなし | +2,100円 |
出典はヤマト運輸「クール宅急便」と日本郵便「チルドゆうパック」(ともに2026年9月5日確認)。上限が違います。 クール宅急便は「輸送上の品質劣化を防ぐため、120サイズ(大きさ120cmまたは重さ15kgまで)を超えるお荷物はお取り扱いしておりません」、チルドゆうパックは3辺の合計150cm以下・1辺100cm以下・25kg以下です。
予冷は送る側の仕事になる
クール宅急便は冷蔵タイプが0〜10℃、冷凍タイプが-15℃以下で、予冷時間の目安は冷蔵で「10℃以下で6時間以上」、冷凍で「-15℃以下で12時間以上」。ヤマト運輸は「保冷輸送(温度を保つ)サービスです。お荷物を冷やしたり凍らせたりする冷却機能はありません」と明記しています(前掲)。日本郵便も差し出しまでの予冷を求め、していない場合は引き受けられないことがあるとしています(前掲)。
要冷蔵の商品を扱うと決めた時点で、冷やしておく場所が要ります。 醸造所から直送するのか、自社の倉庫を通すのかで、必要な設備が変わります。納期の組み方はビールOEMの納期側の話とつながります。
差し出せる場所が減る
クール宅急便はコンビニ・宅配ロッカー・取扱店からは発送できません。チルドゆうパックは取扱いのある郵便局の窓口に限られます(ともに前掲)。加えてヤマト運輸は、法人向けのクール宅急便の利用には法人(掛売り)契約が必要だとしています。個人向けの運賃表をそのまま原価に入れる前に、契約の形を先に決めます。
1箱に何本入るかは、寸法ではなく重さで決まる
350ml缶は中身だけで1本0.35kg。24本で8.4kg、48本で16.8kgになるので、箱の大きさより先に重量の上限に当たります。 缶と段ボールの重さはこれに足されます。
- 24本(8.4kg+容器) — ヤマトの100サイズは10kg迄なので、上限に近いところに乗ります。実測して超えるなら120サイズです
- 48本(16.8kg+容器) — クール宅急便の上限(120サイズ・15kg迄)を超えるため、1箱では送れません。 2箱に割ります
- チルドゆうパックは25kg以下なので、48本が1箱に収まる余地はあります。3辺の合計150cm以下に入るかは、実際の箱で測って確かめます
クール便にするかどうかは、箱割りとロットの割り付けまで決めます。 最低ロット48本で作って冷蔵で送るなら、出荷は最初から2箱前提で見積もることになります。
1本あたりに直すと、いくらになるか
24本入り1箱を関東から関西へ送ると、常温1,650円・クール2,090円。1本あたり69円と87円です。 差は18円です。
| 送り方 | 1箱(100サイズ・関東→関西) | 350ml缶1本あたり |
|---|---|---|
| 宅急便・常温 | 1,650円 | 約69円 |
| クール宅急便 | 1,650円+440円=2,090円 | 約87円 |
| ゆうパック・常温 | 1,620円 | 約68円 |
| チルドゆうパック | 1,620円+675円=2,295円 | 約96円 |
運賃は前掲の各社の公開運賃(2026年9月5日確認)。箱を100サイズと置いた計算例です。 実際の箱で3辺と重さを測ると区分が変わることがあります。
比較の目安として、2026年10月の酒税改正でビールの税額が動く幅は350ml缶1本あたり9.10円です(2026年10月の酒税改正)。クール便にするかどうかは、その2倍から3倍の重さで原価に効きます。
送料を価格に入れるか、外に出すか
同じ100サイズでも、関東発なら関東宛1,530円に対して沖縄宛は2,710円です(前掲・宅急便運賃一覧表)。全国一律の「送料込み価格」にすると、遠方の注文ほど利益が減ります。 地域別に出す、一定金額以上で無料にする、実費で請求する。どれを選ぶかは、値付けを固める前に決めておきます。
卸すなら、運賃の負担を書面に入れる
小売店やチェーンへ卸す場合、元払いか着払いか、何ケースからまとめて出すかで、1本あたりの運賃が変わります。ケース単位の運賃を決めてから卸値を出す順番にします。 費用の全体像はクラフトビールOEMの始め方と合わせて見てください。
費用の目安・期間・最低ロット
判断に要る3つを置きます。送料はここに含みません。 上の運賃表から、送り先と箱数で計算してください。
- 最低ロット — 350ml缶で48本から(TAP TO BREW)
- 初期制作費 — 50〜70万円。うちOEM醸造費が20〜25万円(同)
- 期間 — 初回相談からリリースまで、概ね2〜3ヶ月(TSURATSURA サービス)
販売の免許については、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となります。 そのため、できあがったビールを 花園クラフトが売主として売るところまでは、依頼する側が免許を取らずに進められます(同)。自社のECや店頭で、自分たちが販売者として売る場合は、その主体が販売場ごとに酒類小売業免許を受ける必要があります(酒税法第9条第1項)。
保存方法が要冷蔵になるか常温になるかは、レシピと処理の仕方が決まった時点で判定できます。逆に言えば、そこを決める打ち合わせと同じ場で、送料の前提まで片が付きます。
作りたいビールの構想と、送り先のだいたいの内訳(自社EC中心か、卸中心か)だけ決まっていれば、初回で概算できます。
出典
- ヤマト運輸「宅急便運賃一覧表:全国一覧(現金でのお支払い)」(2026年9月5日確認。サイズ区分ごとの重量上限、持込割引もこのページ)
- ヤマト運輸「クール宅急便」(同。加算料金・温度帯・予冷時間・120サイズ15kgの上限・法人契約の注記)
- 日本郵便「ゆうパック都道府県別基本運賃表(東京)」(同)
- 日本郵便「チルドゆうパック」(同。加算額・150cm/25kgの上限・予冷・割引)
- ビール酒造組合「ビールの豆知識|ビールの表示」(同)
- サッポロビール「ビール類の保管上の注意はありますか?」(同)
- COEDO BREWERY 公式オンラインストア「クラフトビール 飲み比べセット 4種6本」(同。保存方法と賞味期限の記載)
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第3条第3項(e-Gov 法令検索・同)
- 酒税法(昭和28年法律第6号)第9条第1項(e-Gov 法令検索・同)
この記事に載せたのは、各社が公開している運賃です。法人契約の運賃、路線便やパレット単位の運賃は公開されていないため、載せていません。 その規模で送るなら、相見積もりで取るところから始めます。