一本化でビール系の数量構成はどう動くか|過去2回の改正で実際に起きたこと
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一本化でビール系の数量構成はどう動くか|過去2回の改正で実際に起きたこと

2026.09.08 9min read Written by TAP TO BREW 編集部

一本化で、ビール系の数量構成はどう動くか

過去2回の改正では、税率が動いた向きと課税数量が動いた向きが一致していません。 大きく動いたのは売れ方ではなく、統計上の品目の付け替えでした。

以下、2026年9月30日までに確定している数字は事実として、2026年10月以降の動きは「こう動くと見ている」と明示して書き分けます。市場規模を金額で示した公的統計が存在しないことはクラフトビールの市場規模は公的統計でどこまで分かるかで扱っているので、この記事では数量だけを見ます。

「一本化」は、新しい税率が入ることではない

経過措置が終わって、酒税法の本則に戻ることです。

酒税法第23条第1項第1号は、発泡性酒類の税率を1kLあたり15万5,000円と定めています。これが本則です。いま適用されている18万1,000円や13万4,250円は、所得税法等の一部を改正する等の法律(平成29年法律第4号)の附則第36条第4項・第5項が「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間に酒類の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる」ものに限って置いている特例です(e-Gov 酒税法、2026年9月5日に原文で確認)。

つまり2026年10月1日に起きるのは、期限の到来による特例の失効です。税率そのものの水準と、350ml換算での増減額は2026年10月の酒税改正で分解しています。

350ml換算で、税率はどう動いてきたか

財務省「酒税に関する資料」のビール系飲料の図が、3段階をそのまま並べています(財務省、PDF、2026年9月5日確認)。

  • ビール — 77円 →(2020年10月)70円 →(2023年10月)63.35円 →(2026年10月)54.25円
  • 発泡酒(麦芽比率25%未満) — 46.99円のまま3期間据え置き →(2026年10月)54.25円
  • いわゆる新ジャンル — 28円 →(2020年10月)37.8円 →(2023年10月)46.99円 →(2026年10月)54.25円

減税されたのはビールだけで、他の2つは据え置きか増税です。 同じ資料が改正の趣旨を「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め」と書いています。税率差が数量を動かしている、という前提が置かれているわけです。その前提が過去2回で裏付けられたのかを、次に数量で見ます。

2020年10月の第1段で、数量はどう動いたか

減税されたビールが2割以上減り、増税された新ジャンルを含む品目が増えました。 ただしこの年度の動きを減税の効果として読むことはできません。

国税庁「酒のしおり(令和8年7月)」の酒類課税数量の推移(国税局分)より、単位は千kL。年度は4月から翌年3月です。

令和元年度から令和2年度で起きたこと

  • ビール — 2,315 → 1,793(▲22.5%)
  • 発泡酒 — 592 → 601
  • リキュール — 2,417 → 2,550(+5.5%)
  • その他の醸造酒等 — 383 → 342
  • 酒類全体 — 8,153 → 7,703(▲5.5%)

新ジャンルは2023年9月まで、品目としてはリキュールまたはその他の醸造酒に分類されていました。この2品目を足すと2,800 → 2,892で、増税された側が増えています。 一方、減税されたビールは2割以上減りました。

この年度の動きを、減税の効果として読めない理由

税率以外の要因が同じ時期に重なっているのに、課税数量の表がその内訳を持っていないからです。

令和2年度は新型コロナウイルス感染症への対応が重なった年度で、酒類全体の課税数量も▲5.5%落ちています。ビールの▲22.5%はその4倍の落ち込みですが、品目別課税数量の表には業務用と家庭用の別も、樽と缶の別もありません。どの要因がどれだけ効いたのかを、この統計から分けることはできません。

令和3年度以降のビールは1,897 → 2,165 → 2,304 → 2,422と回復に向かいますが、減税から6年経った令和6年度でも平成26年度の90.3%までしか戻っていません(2,681 → 2,422)。

2023年10月の第2段で、統計は1か月で書き換わった

2023年10月の1か月で、発泡酒は1.63倍になり、その他の醸造酒は97.4%が消えました。 売れ方が変わったのではなく、新ジャンルの品目が発泡酒へ移った結果です。

国税庁「酒税課税状況表(速報)」の単月の課税数量より、令和5年度・国税局及び税関の合計、単位はkL。

2023年9月と10月を並べる

  • 発泡酒 — 65,870 → 107,578(1.63倍)
  • その他の醸造酒 — 21,292 → 552(▲97.4%)
  • リキュール — 192,251 → 75,877(▲60.5%)
  • ビール — 190,007 → 191,174(ほぼ変わらず)

法令の側に理由が書いてあります。前掲の平成29年法律第4号附則第35条第3項が、旧酒税法でその他の醸造酒・スピリッツ・リキュール・雑酒とされていたもののうち新酒税法で発泡酒に分類されるものについて、令和5年10月1日に発泡酒の製造免許を受けたものとみなすと定めています。1か月で消費者の選択が6割動いたのではなく、同じ商品の集計先が変わったということです。

年度で見ると、ビールは4年連続で増えている

同じ動きが年度の表にも出ます(千kL、国税局分、令和4年度→令和6年度)。

  • 発泡酒 — 584 → 1,210 → 1,887(3.23倍)
  • リキュール — 2,249 → 1,542 → 854(▲62%)
  • その他の醸造酒等 — 252 → 135 → 3
  • ビール — 2,165 → 2,304 → 2,422(+11.9%)

ビールの列だけは付け替えの影響を受けていません。 ビールの課税数量は令和2年度を底に4年連続で増え、令和6年度は2,421,732kL、酒類全体7,696,520kLの31.5%です(酒のしおり 付表1)。構成比は令和2年度の23.3%が底でした。

なお令和7年度の速報値では、ビール2,315,129kL(前年度比▲6.1%)、発泡酒1,662,413kL(同▲13.7%)と、どちらも減っています(前掲の速報、国税局及び税関の合計)。国税庁自身が「各計数は速報値であり、今後若干の異動を生ずることがあります」と注記しており、確定値ではありません。

「発泡酒が伸びている」というグラフは読めない

令和5年10月をまたぐ発泡酒の時系列は、同じものを数え続けていないからです。

3.23倍という数字を成長として企画書に書くと、根拠を問われた時点で崩れます。逆にリキュールの▲62%も縮小ではありません。ビール系という束を、課税数量の品目から復元することはできません。 品目をまたいで足し直そうとしても、リキュールにはチューハイなどが同居しており、切り分ける列がありません。

醸造所数の数え方が資料によって割れるのも同じ構造で、そちらはクラフトビールの市場規模は公的統計でどこまで分かるかにまとめてあります。

一本化のあと、こう動くと見ている

ここから先は予測です。 税率で品目を選ぶ理由が消えるので、麦芽比率を下げて税を軽くする設計が成立しなくなると見ています。

発泡酒に落としても、税は1円も下がらない

2026年10月1日以降、ビールも発泡酒も新ジャンルも1kLあたり15万5,000円です。麦芽比率25%未満まで落としたときの差は、350ml換算で7.26円の減から0円になります。

小ロットのOEMでは、もともとこの差より資材費とロットの方が大きく効きます。一本化後は、品目の選択は税ではなくレシピと表示の問題だけになると見ています。副原料と麦芽比率で品目がどちらへ倒れるかは2026年10月の酒税改正で分解しました。

統計の品目の線は、税率が同じになっても残る

一本化が動かすのは税率(酒税法第23条)で、品目の定義(同法第3条)ではありません。

酒税法第3条第12号のビールの定義(麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の100分の50以上、かつ政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の100分の5を超えない)も、第18号の発泡酒の定義も、前掲のe-Gov原文でそのまま残っています。税率が同じでも、ラベルの品目表示と統計の列は分かれ続けます。

同じ附則には、税率以外の期限も入っています。附則第34条が「令和2年10月1日から令和8年9月30日までの間」に限ってその他の発泡性酒類のアルコール分の線を「十一度」から「十度」へ読み替えており、2026年10月1日にこの読み替えも終わります。 ビールと並べてチューハイなどを検討している場合は、こちらも同時に動きます。

数字で確かめられるのはいつか

月次の速報なら2026年12月ごろ、年度の確定値なら2028年7月ごろ、と見ています。

  • 月次の速報 — 前掲の「酒税課税状況表(速報・毎月更新)」は、2026年9月5日時点で令和8年度5月分まで出ています。おおむね3か月遅れなので、2026年10月分は2026年12月から2027年1月ごろ
  • 年度の確定値 — 「酒のしおり(令和8年7月)」に載っているのは令和6年度分です。同じ間隔なら、2026年10月を含む令和8年度は2028年7月ごろの版

2020年10月の第1段と同じ落とし穴があります。 令和8年度は改正前の6か月と改正後の6か月が混ざった年度になるので、年度単位の1本目の数字は前後の要因を分けられません。企画の判断を、この1本目に預けないことです。

企画側で先に決まってしまうこと

税率差が消えても、品目は仕込みの時点で決まります。 麦芽比率50%と25%のどちら側にレシピがあるかは、副原料を何グラム入れるかで決まる話で、税率表を見て後から選べるものではありません。自分の醸造所を持つ場合の免許の線についてはビール60kL・発泡酒6kLの壁を参照してください。

費用の目安・期間・最低ロット

TAP TO BREW の場合、最低ロットは350ml缶48本、初期制作費は50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)、初回相談からリリースまでは概ね2〜3ヶ月です(TAP TO BREW・サービス、2026年9月5日時点)。費用は初期制作費と継続支援費の2層に分かれます。

酒税は醸造費の中に入るため、見積の項目としては現れません。48本の規模では、一本化による税率の変動額は資材費やラベルの版数に比べて小さく、着手時期を決める材料にはなりません。

販売については、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となるため、依頼する側が免許を取らずにEC販売まで進められます。 自社が販売者として売る場合は、その主体で酒類販売業免許が必要です(酒税法第9条第1項。免許は売る主体に、販売場ごとにかかります)。

TAP TO BREW に無料で相談する

レシピの構想と本数の見当がついていれば、品目がビールと発泡酒のどちらになるかは初回の打ち合わせで判定できます。

出典

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TAP TO BREW Editorial
クラフトビールの最新トレンド、ブランド戦略、醸造の裏側をお届けするTAP TO BREWの編集チーム。株式会社TSURATSURA運営。

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