クラフトビールの市場規模は公的統計でどこまで分かるか|数えられるのは免許場数と数量まで
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クラフトビールの市場規模は公的統計でどこまで分かるか|数えられるのは免許場数と数量まで

2026.09.08 8min read Written by TAP TO BREW 編集部

「クラフトビール」という区分は、公的統計に存在しない

酒税法にも、国税庁の統計にも、「クラフトビール」という区分はありません。 語そのものが法令に一度も出てきません。

酒税法は酒類を4種類に分け(発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類)、その下に17の品目を置いています(酒税法第2条第2項・第3条第7号〜第23号、2026年9月5日にe-Govの原文で確認)。17品目は清酒・合成清酒・連続式蒸留焼酎・単式蒸留焼酎・みりん・ビール・果実酒・甘味果実酒・ウイスキー・ブランデー・原料用アルコール・発泡酒・その他の醸造酒・スピリッツ・リキュール・粉末酒・雑酒です。

この17個の中に「クラフトビール」はありません。「地ビール」もありません。 国税庁の統計はこの品目を単位に集計されているので、統計の側にも入りようがない、という順序です。

統計に一度だけ「地ビール」が出てくる

例外が1つあります。国税庁「酒のしおり(令和8年7月)」の付表1「地ビール製造免許場(者)数の推移」です。

ただしこの表の「地ビール」は、味でも規模でも独立性でもありません。表の注にこう書かれています。「平成6年4月1日以降ビールの製造免許を取得した製造場(者)で、大手ビールメーカー(5社)及び試験製造免許に係る製造場(者)を除いたもの」。 免許をいつ取ったかという行政上の線です。

民間には定義がある。ただし行政の線ではない

全国地ビール醸造者協議会(JBA)は2018年5月に3つの条件で定義を置いています。①1994年4月の酒税法改正以前から造られている大資本の大量生産のビールから独立していること、②1回の仕込単位(麦汁の製造量)が20キロリットル以下であること、③伝統的な製法か地域の特産品を原料とし、地域に根付いていること(全国地ビール醸造者協議会)。

業界団体の定義であって、免許にも統計にも接続していません。 これを満たすかどうかを国税庁が数えている表は存在しません。

公的統計で分かるのは3つ。免許場数・数量・売上金額

分かるのは「醸造所がいくつあるか」「何キロリットル出たか」「企業規模別にいくら売れたか」の3つで、いずれも「クラフト」を切り出したものではありません。

醸造所の数 — 430場・394者(令和6年度末)

前掲の付表1より、地ビール製造免許場数は430場、製造者数は394者です。各年度末(3月31日)現在の数字なので、令和6年度末=2025年3月31日時点になります。

過去との比較には注意が要ります。平成29年度184場から平成30年度395場へ倍以上に跳ねていますが、これは開業ラッシュではありません。 同じ表の注に「平成29年度税制改正によりビールの定義が拡大され、平成30年3月31日現在で発泡酒の製造免許を有していた者に対し、ビールの製造免許が付与された」とあります。定義が変わって、それまで発泡酒側にいた醸造所が数え直されただけです。

数量 — 令和6年度のビール課税数量は2,422千kL

国税庁「酒のしおり(令和8年7月)」の酒類課税数量の推移(国税局分)より、令和6年度はビール2,422千kL、発泡酒1,887千kL、酒類全体で7,697千kLです。国税局分なので国内製造分にあたります。

この2つの列に、大手も小規模醸造所も一緒に入っています。 分けた表はありません。

売上金額 — 中小企業者と個人事業者の合計は約1,623億円

金額に最も近い公的な数字は、国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和7年アンケート)」の表57「企業区分別の国内売上数量及び売上金額」です。ビールと発泡酒について、こうなっています。

  • 大企業 14者 — 3,691,965kL/1兆4,481億円
  • 中小企業者 518者 — 161,313kL/1,592億円
  • 個人事業者 90者 — 1,959kL/31億円
  • 合計 622者 — 3,855,238kL/1兆6,104億円

中小企業者と個人事業者を足すと163,272kL/約1,623億円。数量では全体の4.2%、金額では10.1%です(原表の百万円単位を億円に丸めたうえで編集部で加算)。同じ調査の用語定義で、大企業とは「資本金3億円超かつ年平均従業員数が300人超の法人」、中小企業はそれ以外の法人、個人事業者は個人で事業を行う者を指します。

この約1,623億円を「クラフトビール市場」と呼べない4つの理由

企業の規模で切った線であって、ビールの作り方で切った線ではないからです。

  1. 任意回答のアンケートです。 全対象者8,455者のうち回答は5,034者(回答率59.5%)。酒類製造者等に限れば3,362者中2,835者(84.3%)です。同じ資料が「対象者の任意回答を集計したものであり、他の統計調査の結果とは必ずしも一致しない」と明記しています
  2. 資本金と従業員数で分けています。 大手の子会社が中小企業側に入ることも、独立系が大企業側に入ることもあり得ます
  3. ビールと発泡酒だけです。 果汁を多く使ってリキュールや雑酒になった商品は、この表に入りません
  4. 出荷側の売上高です。 小売価格ベースの「市場規模」とは水準が違います

醸造所の数が資料によって割れるのは、数える線が4本あるから

「約400」も「600超」も、どの線で数えたかが違うだけで、どちらも公的資料から出せます。

数え方 数字 出典と時点
地ビール製造免許場数 430場(394者) 酒のしおり 付表1/令和6年度末
ビール製造免許場数(全体) 550場 酒のしおり 14/令和6年度末。主たる酒類405+外書き145
酒類業実態調査の有効回答者数 622者 概況 表55/令和7年1月1日現在
発泡酒製造免許場数 2,585場 酒のしおり 14/令和6年度末。主たる酒類558+外書き2,027

酒類等製造免許場数の推移の注5に「一の製造場で複数の酒類の製造免許を有しているものについて、主たる酒類を本書きとし、その他は外書きとして掲げた」とあるので、免許場数を見るときは本書きと外書きを足す必要があります。発泡酒の2,585場にはビール以外の発泡性酒類を造る製造場も入るため、この数字をブルワリー数として読むことはできません。

統計上、あなたのビールは「発泡酒」の列に入るかもしれない

小さく始める醸造所は、ビールではなく発泡酒の免許で始めることが多いためです。

前掲の概況 表55(令和7年1月1日現在の有効回答分)では、製造者622者の内訳がビールのみ48者、発泡酒のみ324者、ビールと発泡酒の両方250者でした。発泡酒だけの者が過半を占めます。

理由は最低製造数量基準です。酒税法第7条第2項は、ビールに年60kL、発泡酒に年6kLを課しています(前掲のe-Gov原文で確認)。10倍の差があるので、発泡酒の免許から入る選択に合理性があります。

つまり、課税数量の「ビール」の列だけを見て小規模醸造の動向を語ることはできません。 副原料と麦芽比率で品目そのものが動く点は、2026年10月の酒税改正の記事で扱っています。

時系列が2020年で一度切れている

国税庁はかつて「地ビール等製造業の概況」を出していましたが、掲載は平成30年度調査分で止まっています。令和2年度調査分以降は「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」に引き継がれ、集計の単位が「地ビール」から「ビール及び発泡酒製造業」へ変わりました。

「地ビール」を単位にした連続した時系列は、公的統計としては途切れています。 長期のグラフを見かけたら、どこで系列を接いだのかを確認してください。

企画書に数字を載せるときにやること

出典・時点・数え方の3つを同じ行に書けば、その数字は使えます。書けないなら落とします。

自治体やスポーツクラブに出す企画書で「市場は伸びている」と書くとき、根拠が民間調査であること自体は問題ありません。問題は、定義の違う数字を並べて比較してしまうことです。

  • 金額を出すなら、出典の定義を確認する。 出荷ベースか小売ベースか、対象品目に発泡酒やリキュールを含むか
  • 醸造所数を出すなら、数え方を書く。 免許場か事業者か、ビールのみか発泡酒を含むか、いつ時点か
  • 年度をまたぐ比較は、制度改正を挟んでいないか見る。 平成29年度の定義拡大と令和5年10月の新ジャンル統合は、どちらもグラフの形を変えています

判断材料として実務で使えるのは、むしろ数量より構造の側です。免許の壁が60kLと6kLで10倍違うこと、統計上は発泡酒の列に入る商品が多いこと。この2つが分かっていれば、企画の初期に品目を選び違えずに済みます。

費用の目安・期間・最低ロット

TAP TO BREW の場合、最低ロットは350ml缶48本、初期制作費は50〜70万円(うちOEM醸造費20〜25万円)、初回相談からリリースまでは概ね2〜3ヶ月です(TAP TO BREW・サービス、2026年9月5日時点)。費用は初期制作費と継続支援費の2層に分かれます。

48本は、上で見た年60kLとは桁が3つ違います。 自前の醸造所を持つ場合の最低製造数量基準は、委託製造にはかかりません。作る主体が醸造所側だからです。醸造所を持たずにブランドだけを持つ形についてはファントムブリュワリーとは何かで説明しています。

販売については、連携先の醸造所・花園クラフト(大阪府東大阪市)が製造し、販売元となるため、依頼する側が免許を取らずにEC販売まで進められます。 自社が販売者として売る場合は、その主体で酒類販売業免許が必要です(酒税法第9条第1項。免許は売る主体に、販売場ごとにかかります)。

TAP TO BREW に無料で相談する

品目をビールにするか発泡酒にするかは、レシピと副原料が決まれば初回の打ち合わせで判定できます。

出典

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TAP TO BREW Editorial
クラフトビールの最新トレンド、ブランド戦略、醸造の裏側をお届けするTAP TO BREWの編集チーム。株式会社TSURATSURA運営。

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